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   ■特許関連情報INDEX
【1】制度・手続等の内容
【2】審査・審理基準
【3】法令改正
【4】判例情報



   【1】制度・手続等の内容
(1)制度関係
特許と実用新案について  
ノーベル賞と特許について
プロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈について
インクカートリッジの「リサイクル」と特許権制度
先使用権制度の意義と活用について
平成18年意匠法・商標法等の改正について
意匠権の存続期間の延長と小売業等の商標のサービスマークとしての保護について
平成17年実用新案制度の改正について
特許製品の並行輸入について
意匠について
画像を含む意匠の登録事例集が掲載されています
外国への特許出願について〜中国〜
特許異議申立制度の復活について〜新制度の運用と実務対応の注意点〜
知的財産の価値評価について〜日本弁理士会知財価値評価センターのご紹介〜 *NEW*
自社実施の技術に対する特許侵害の積極的防衛策について *NEW*

(2)調査出願関係
特許調査について  
発明のポイントと特許出願について
ビジネス方法特許について
外国特許出願について
米国特許商標庁との間で優先権書類データが交換されます
平成16年4月施行の特許関係料金の改定について
出願審査請求期間の改正について
「コンピュータ・ソフトウェア関連発明」の審査基準の改訂について
特許出願における早期審査・早期審理の運用見直しについて
技術調査について

(3)審判・訴訟
職務発明規定
特許出願後の手続と異議・審判
   (但し、平成15年法改正により異議と審判は、統合された新しい制度になりました)
特許権侵害訴訟における機能的クレームの解釈について
特許の成立や効力を争う手段
特許権侵害訴訟における権利濫用の抗弁について
特許の異議申立制度と無効審判制度の統合について
実用新案技術評価書と過失について
特許を受ける権利の帰属確認訴訟において、被告から同権利の持分譲渡を受けた者の被告側への共同訴訟参加ができるとした上で、譲渡証書成立の真正を認めなかった事例
プラバスタチンナトリウムの特許発明の技術的範囲がクレーム記載の製法に限定されるかが争われた事例
抗がん剤の特許権存続期間延長登録出願の拒絶査定不服審判を請求不成立とした審決が取り消された事例
引用発明の認定において、引例に「記載されているに等しい」と認められるための要件が示された事例
無効審判の確定審決の一事不再理効について判断された事例 *NEW*

(4)職務発明・実施契約
特許権の実施契約について
職務発明規定の見直しについて(平成16年 特許法等の一部改正)
職務発明を巡る最近の動き


   【2】審査・審理基準
特許出願における早期審査・早期審理の運用見直しについて(平成12年7月5日)  

コンピュータ・ソフトウェア関連発明の審査基準の改定について(平成13年1月)

早期審査・審理ガイドライン改定(平成16年7月1日)

・新日本意匠分類及び意匠ファセットターム運用開始
平成17年1月1日より、従来とは分類の構造と表記方法が変更されます。
 *「新日本意匠分類」及び「意匠ファセットターム(Dターム)」の運用が開始されます。
 よって同日以降の意匠出願には、改正された意匠分類が付与されます。

・実用新案に関連する審査基準が改定されました  
改正実用新案法により、「実用新案登録に基づく特許出願」が認められたため、新たにその審査基準が作成され、 請求の範囲を減縮する訂正が認められることになったこと等から、実用新案に関連する審査基準の該当箇所が修 正されました。今後、特許への出願変更、訂正の許否、評価書の作成及び基礎的要件の審査などに適用されます。

・模倣品対策のための意匠出願の早期審査制度が運用開始  
平成17年4月1日より、出願中の意匠の模倣品が発生したときには、直ちに意匠審査に着手し、申請から1ヶ月以内に一次審査結果を通知する早期審査制度の新たな運用が開始されました。

・「産業上利用することができる発明」「医薬発明」の審査基準改訂  
「産業上利用することができる発明」「医薬発明」の審査基準について、「医療機器の作動方法」は、医療機器自体に備わる機能を方法として表現したものであって、特許の対象であることが明示されました。但し、「医療機器の作動方法」には、医師の行為や機器による人体に対する作用を含む方法は含まれません。また、複数の医薬の組合わせや投与間隔・投与量等の治療の態様で特定する医薬発明も「物の発明」で、「産業上利用することができる発明」として扱うことが明示されました。平成17年4月15日以降に審査される出願について適用されています。
 
・改正日本意匠分類表 物品の用途の概念を主とし、必要に応じて機能、形態等の概念を用いて構成された日本独自の分類である「日本意匠分類」が改正され、平成17年1月1日以降の出願に対して付与が開始されています。
 
・国際特許分類(IPC)第8版の発効  
現在のIPC第7版は2005年12月まで有効で、2006年1月からはIPC第8版が発効されます。 第8版からは、IPCを約7万項目からなるアドバンストレベルと、その約30%に絞り込んだ大まかなコアレベルの二つのレベルに分化されました。従来のIPCが5年に一度の改定だったのに対して、アドバンストレベルは適宜改定できることとし、技術の進展に追随できるように改められました。
 
・早期審理の運用の明確化について  
在外者による審判請求事件に対する拒絶理由通知や審尋等に際し、応答期間の延長を請求した場合は、 早期審理の趣旨を踏まえ、当該審理案件については、原則、早期審理の対象として取り扱われなくなり ます。
 
・前置報告を利用した審尋について  
在外者による審判請求事件に対する拒絶理由通知や審尋等に際し、応答期間の延長を請求した場合は、 早期審理の趣旨を踏まえ、当該審理案件については、原則、早期審理の対象として取り扱われなくなり ます。
 
・意匠分類 ロカルノ分類−改正日本分類の対応表がpdf形式で開示されています。  
 
・先行技術文献情報開示要件の「当面の運用」の終了について  
平成14年9月1日以降の出願に適用される先行技術文献情報開示要件の浸透を図るために行われ ていた「当面の運用」が、平成18年4月30日をもって終了し、平成18年5月1日以降に審査される 案件から、本運用が開始され、明細書中に文献名等の先行技術文献情報の開示がない場合には、 審査官から通知(第48条の7の通知)を行って開示を促し、それでもなお開示がされない場合 には拒絶理由になることになります。  
 
・新規性喪失の例外規定適用の手続きについて  
新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続きを説明した「発明の新規性喪失の例外規定 の適用を受けるための出願人の手引き」が公表されました。  
 
・特許出願における拒絶理由通知の応答期間の延長に関する運用の変更について  
平成19年4月1日以降に拒絶理由通知に対する応答期間の期間延長請求書を差し出すものから、 拒絶理由通知に関する応答期間の延長に関する運用が変更になります。  
 
・「分割・補正等」の審査基準改訂  
 「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」「第50条の2の通知」についての審査基準改訂は、平成19年4月1日以降に出願されるものについて、適用されています。 また、「発明の単一性の要件」「出願の分割」「外国語書面出願」「審査の進め方」についての審査基準の改訂は平成19年4月1日以降の審査について適用されています。  
 
・米国特許商標庁との優先権書類データの電子的交換に基づく優先権書類提出の免除について
 平成19年7月から、日本国特許庁と米国特許商標庁との間で、パリ条約に基づく優先権主張を伴う特許・実用新案出願について、 その優先権書類データを電子的に交換することが合意されており、この合意に基づき、優先権書類を提出する手続が条件付きで免除 されることとなりました。  

・スーパー早期審査制度について
 現行の早期審査よりも更に早期に審査を行うスーパー早期審査制度(申請から一次審査までの期間が1ヶ月以内、出願人・代理人の 応答期間が1ヶ月(在外者の場合は2ヶ月)以内、応答から二次審査までの期間が1ヶ月以内)が創設され、実施関連出願であり、かつ 外国関連出願を対象として10月1日から試行が開始されました。  

・平成20年特許法改正に伴う審査基準の訂正について
 平成20年4月18日に公布された「平成20年改正法」のうち、拒絶査定不服審判請求期間の拡大について平成21年4月1日に施行されとこと に伴って審査基準が以下のように訂正されました。 拒絶をすべき旨の査定の謄本の送達が平成21年4月1日以降である特許出願に関連する記載 
1.拒絶査定不服審判請求の期間 拒絶査定不服審判請求の期間が、拒絶をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から「三十日以内」から、「三月以内」となります (在外者は4月以内)。 
2.審判請求時の補正 審判請求時に補正できる期間が、第121条第1項の審判の「請求の日から三十日以内」から、「審判の請求と同時」となります。 
3.分割可能期間 (1)分割できる期間が、拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から「三十日以内」から、「三月以内」となります。 (2)分割できる期間が、第121条第1項の「審判の請求の日から三十日以内」から、「審判の請求と同時」となります。  

・日本意匠分類が更新されています

・意匠審査基準が掲載されています
 
・意匠審査便覧が更新されています

「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)の審査基準の改訂について

「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」の審査基準の改訂について
 平成20年5月30日に言い渡された平成18年(行ケ)第10563号事件の知的財産高等裁判所特別部判決において、補正が許される範囲について一般的な定義が示され、その後の判決でも一貫してその定義が引用され判示がなされていることから、「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」の審査基準において、『「当初明細書等に記載した事項」とは、当業者によって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項である。したがって、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「当初明細書等に記載した事項」の範囲内においてするものということができる。』という一般的定義が設けられ、平成22年6月1日以降の審査に適用されています。

特許権の存続期間の延長登録出願に関する審査基準及び審査の取扱いについて
 平成23年4月28日に、特許権の存続期間の延長登録出願に関する最高裁判決(平成21年(行ヒ)第324〜326号)が言い渡され、特許庁の上告が棄却されたことに伴い、延長登録出願に関する審査基準及び審査の取扱いの改訂が検討されることになりました。  改訂審査基準は本年秋頃を目途に公表される予定です。また、延長登録出願の審査の着手は、原則として、改訂審査基準の公表まで止まることになりました。

発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続きについて
 平成23年の特許法改正によって発明の新規性喪失の例外規定が改正されたことに伴い、新たに「平成23年改正法対応・発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための出願人の手引き」、及び「平成23年改正法対応・発明の新規性喪失の例外規定についてのQ&A集」が作成・公表されました。


期間徒過後の手続に関する救済規定について
 平成23年特許法等の一部改正により、本来の手続期間を徒過した場合における救済手続が整備され、外国語書面出願及び外国語特許出願(PCT)の翻訳文の提出等、新たに救済規定の対象となる手続が追加される一方で、特許料等の追納期間等を徒過した場合における救済規定については、特許法条約に整合した制度とするため、救済を認める要件についての「その責めに帰することができない理由」が緩和され「正当な理由」となりました。 また、所定の期間内に手続をすることができなかったことについて「正当な理由」があるときは、その理由がなくなった日から2月以内で期間の経過後1年以内(商標に関しては6月。)であれば所定の期間徒過後の手続が許容されるように、時期的要件についても緩和されました。

面接ガイドラインの改訂及び国際出願に係る手数料について


   【3】法令改正
H10年改正
特許法等改正  

H11年改正
特許法等の一部改正法律案について  
出願審査請求期間の改正に付いて  

H14年改正
特許法特許法等の一部を改正する法律案について

H15年改正
特許異議申立申立制度と無効審判制度の統合について  
平成16年4月施行の特許料金の改定について  

H16年改正
・平成16年2月10日に閣議決定された「特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律案」は平成16年5月28日に国会で成立し、6月4日に法律第79号として公布されました。  この法律のうち、「予納制度を利用した特許料等の返還」が平成16年6月4日から施行されます。

・H16年改正特許法  
特許審査の迅速化等のため、@指定調査機関精度等の見直し、A特定登録調査機関制度の導入、B予納制度を利用した特許料の返還、 Cインターネットを利用した公報の発行、D実用新案制度の見直し、E独立行政法人工業所有権総合情報館の業務拡大、F職務発明制度 の見直し、について改正されました。Bの改正は、平成16年6月4日から、@およびEの改正は、平成16年10月1日から、A,C, DおよびFは平成17年4月1日から施行されます。
      
H17年改正
・インターネットバンキング等を利用した電子納付について  
平成17年10月3日より、特許料等の各種料金の納付方法は、従来の特許印紙による納付及び現金納付に加えて、 インターネットバンキング等を利用した電子納付が可能になります。
   
・インターネット電子出願に関する省令改正  
工業所有権に関する諸手続について、インターネットを使用して行えるよう、工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行 規則が改正され、平成17年10月3日から施行されます。なお、電子証明書の届出に係る規定等については、これに先立って、 平成17年8月1日から施行されます。
   
・特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整 備等に関する省令が施行されました  
平成16年5月28日に成立した特許審査の迅速化等のための特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備等を行うため、特許法施行規則、実用新案法施行規則、実用新案登録令施行規則などが改定され、平成17年4月1日から施行されました。    

H18年改正
・特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則等の一部改正について  
 平成18年4月1日より、国際出願において日本を指定しないためのチェック欄が追加されましたので、 国際出願後に日本国指定を取り下げる必要がなくなりました。
      
・特許法施行令及び特許法等関係手数料令が一部改正されました。  
 平成18年8月9日から平成19年8月8日までの1年間に出願を取り下げ又は放棄した場合に限り、納付した審査請求手数料 の全額が返還されることとなります。また、「資力に乏しい中小企業を対象とした審査請求手数料の軽減及び特許料(第1年〜第 3年分)の納付を3年間猶予する制度」について、制度が適用される要件の一つである「設立の日から10年を経過していないこ と」が撤廃されました。
      
・意匠法4条(新規性喪失の例外適用に係る証明書の提出期限を30日以内に延長)及び商標法7条(団体商標の登録 主体を社団に拡張)の改正規定が平成18年9月1日より施行されることとなりました。  

・工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令について  
特許協力条約に基づく国際出願についてインターネット回線を利用した電子手続を可能とするた め、工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則の一部改正が行われました。  
    
H19年改正
・平成18年法律改正(平成18年法律第55号)解説書 が特許庁HPに掲載されています。  
    
・意匠法等の一部を改正する法律の施行期日と経過措置が特許庁HPに掲載されています  
 意匠法は、a画面デザインの保護の拡充、b部分意匠制度の見直し、c新規性喪失の例外適用手続の見直し、d関連意匠 制度の見直し、e秘密意匠の請求時期の追加、f意匠権の存続期間の延長、g意匠の類似の範囲の明確化、についての改正 が行われましたが、このうちのa、d、e、については、平成19年4月1日から施行されています。  
 
・第16年から第20年までの登録料のお知らせ  
 意匠法等の一部を改正する法律(平成18年6月7日法律第55号)の施行により、平成19年4月1日「以降」の意匠 登録「出願」から意匠権の存続期間が従来の15年から20年になりました。これにより、第16年から第20年までの登 録料については、第11年から第15年の登録料と同額を納付することになりました。  
 
・意匠登録制度の概要が紹介されています  
    
H20年改正
・先行技術文献調査結果を用いた出願人への要請の運用の変更について  
平成20年1月4日から、審査段階において、審査対象となる発明と同じ発明又はきわめて類似する発明の記載された先行技術文献であって同じ出願人又は発明者によるものが発見された場合には、当該文献が明細書中に先行技術文献として開示されている場合であっても、出願人にこの事実をフィードバックするよう、運用が変更されます。  

・特許の出願段階におけるライセンス制度の創設や特許・商標関係料金の値下げなどを規定した「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。

・証人尋問にかかる措置等について特許法施行規則の改正  
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律の施行(平成20年4月1日)に伴い、 特許法施行規則について、所要の改正が行われました。  審判における証人尋問の際、審判長は、証人が尋問を受ける場合に著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認める場合等には、 以下の措置を取ることができるようになります。
@証人に対する付添いを認めること。
A当事者若しくは法定代理人又は参加人と証人との間に、遮へいの措置をとること。
B映像等の送受信による通話の方法(ビデオリンク方式)によって尋問を行うこと。   

・平成20年改正特許法が成立・公布  
知的財産権の戦略的な活用の促進と、迅速かつ適正な権利保護の観点から、特許の出願段階におけるライセンス制度の創設、 拒絶査定不服審判の請求期間の拡大、特許・商標関係料金の値下げなどを規定した「特許法等の一部を改正する法律案」が 平成20年4月11日に可決・成立し、4月18日に公布されました。 6月1日から、商標出願の設定登録料、更新登録料は平均43%の、主に10年目以降を対象とするの特許料は平均12%の、 大幅な引き下げが実施されます。
・意匠登録出願等の手続のガイドラインの関連意匠に関する補正の部分が更新されました。

・意匠の日本分類表が更新されました。
  
・特許法等関係手数料令の一部を改正する政令  
平成20年6月1日から実施される特許関係料金の値下げに関して、特許法等関係手数料令が定める部分を改正するものです。   

・特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則の一部を改正する省令  
PCT関連手数料が平成20年7月1日から引き下げられることに伴い、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則 について所要の改正を行うものです。

・平成20年特許法等改正に伴う特許料・商標登録料等の料金改定について

・特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令が改正されました
  平成21年1月より実施される特許料等手数料の口座振替による納付、特許料及び登録料の自動納付等に関し、関係規則、 省令について所要の改正を行うものです。


H21年改正
・特許法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令  
平成21年4月1日より、特許法等の一部を改正する法律(平成20年4月18日法律第16号)における、通常実施権等の登録制度の見直し、拒絶査定不服審判請求期間の拡大、優先権書類の電子的交換の対象国の拡大に係る改正項目が施行されています。

・特許法施行規則及び特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則の一部を改正する省令
 特許協力条約に基づく規則及び特許協力条約に基づく実施細則が改正され、1)出願人の抗弁期間の延長、2)請求の範囲の補正方法 の変更、3)配列表を含む国際出願を電子情報処理組織を使用して行った場合(オンライン出願)の国際出願手数料の計算方法の変更、 及び4)電子情報処理組織を使用して行った国際出願に係る配列表の補正方法の変更があったことに伴って、関連する法律施行規則の 改正がありました。


H22年改正
・特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則の一部を改正する省令
 特許協力条約に基づく実施細則に規定する国際出願の願書の様式及び国際予備審査請求書の様式が改正されたことに伴い、 特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則に規定する国際出願の願書の様式及び国際予備審査請求書の様式に ついて、所要の改正を行うものです。

・工業所有権に関する手続等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令について
 現在、電子情報処理組織を使用して特定手続等を行う場合の方法として、インターネット又はインターネット以外(ISDN回線)を利用する場合の二系統の方法を認めているところ、インターネット利用者が増加したこと等を踏まえ、平成22年4月1日以降、ISDN回線を利用する方法を廃止し、インターネットを利用する方法に一本化するため、特例法施行規則について、ISDN回線を利用して特定手続等を行う場合の方法を定めた規定の削除等、所要の改正を行うものです。

特許法施行規則等の一部を改正する省令・特許登録令施行規則の一部を改正する省令
 特許法等の一部を改正する法律(平成20年法律第16号)の成立により、証明等の制限、優先権書類の電子的交換の対象国の拡大及び仮通常実施権等の登録に関する規定の整備等を行う必要があるため、特許法施行規則(昭和35年通商産業省令第10号)、特許登録令施行規則(昭和35年通商産業省令第33号)及び関係省令について、所要の改正を行うものです。

特許登録令施行規則等の一部を改正する省令
 特許登録原簿等に記録された登録の前後は、申請書の受付の年月日によること等を明確にするため、特許登録令施行規則(昭和35年通商産業省令第33号)等について、所要の改正を行うものです。

特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則の一部を改正する省令
 特許協力条約に基づく実施細則に定める国際予備審査請求書の様式が改正されたことに伴い、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則(昭和53年通商産業省令第34号)に規定する国際予備審査請求書(様式第21、第21の2)の様式について、これに適合するように所要の改正を行うものです。

H23年改正
・特許法等の一部を改正する法律案
 平成23年3月11日に閣議決定された「特許法等の一部を改正する法律案」が平成23年5月31日に可決・成立し、6月8日に公布されました(法律第63号)

・平成23年の特許法改正による発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について

〜改正法について〜

※なお、近年の法改正について、詳しくお知りになりたい方は、 特許庁のHP をご覧下さい。  


   【4】判例情報
H24.11.13 知財高裁 平成24(行ケ)10189号 審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「遮煙エレベータ装置」とする特許出願について、進歩性欠如を理由とする拒絶査定を受けたので、不服審判の請求をすると共に特許請求の範囲について補正をしたところ、補正を却下するとともに、不成立審決を受けたことから、その取消しを求めた事案である。
 知財高裁は、@本願補正発明の容易想到性については、本願補正発明と引例1に記載の引用発明は、火災発生の際、エレベータ近辺の煙がエレベータ付近に設けられた排煙口を通じ、減圧された空間に流れる点で一致し、本願補正発明では、排煙口の形態がスリットで、煙が吹抜け内に流れるのに対し、引用発明では、これらの形態が明らかでない点で相違すると認められるが、引例2には煙が吹抜け内に流れる構成が開示され、引例3には排煙口の形態がスリットであることが開示されているので、本願補正発明は、引用発明に引例2及び3に記載された技術的事項を適用することで容易に想到できたといえると、A本願発明の容易想到性については、本願発明と引用発明は、火災発生の際、エレベータ近辺の煙を流動除去することによりエレベータ内に煙が入らないようにした点で一致し、本願発明では、流動除去の対象となるのがエレベータ扉前の空気であるのに対し、引用発明では、エレベータ装置の扉の前の空気を流動除去の対象としているか明らかでない点で相違するものと認められるが、エレベータ装置において、火災発生の際、他階への漏煙を防ぐために煙がエレベータシャフトヘ流入しないようにすることは、引例1の出願当時から存在した課題であり、エレベータ近辺の空気を除去する際に、エレベータ扉前の空気も流動除去の対象とすることは引用発明から容易に想到することができたといえるので、本願発明は引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであると判示し、原告の請求を棄却した。
H24.10.29 知財高裁 平成24(行ケ)10076号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「ヒンダードフェノール性酸化防止剤組成物」とする特許出願について拒絶査定を受けたので、不服審判の請求をすると共に補正をしたところ、特許法36条6項1号該当性(サポート要件)を満たさないとして、請求不成立の審決を受けたことから、その取消しを求めた事案である。
 知財高裁は、「被告は、従来のヒンダードフェノール系酸化防止剤に不純物として含まれる単環化合物はごく少量であり、もともとごく少量しか含まれていない単環化合物の量をさらに低減したからといって、従来のものと比較して向上した溶解性及び低い揮発性について有意な差異をもたらし得る程の効果を奏するとまでは認識できず、本願発明の組成物は潤滑剤等の組成物に添加されてその機能を発揮するものなので、組成物に添加され希釈された状態では単環化合物の含有量の減少による影響もさらに薄まると解される等と主張するが、発明の詳細な説明の記載からすると、従来のヒンダードフェノール系酸化防止剤はTTBPを不純物として含有するDTBP及びOTBPをその製造原料として使用するものなので、その調製物には一定量以上の未反応のDTBP及びOTBPや不純物のTTBPを含んでいると認められ、従来のヒンダードフェノール系酸化防止剤が不純物として含む単環化合物がごく少量であるとまでは言えないというべきで、被告の主張は採用できない。また、被告は、発明の詳細な説明には生物蓄積性についての課題が解決できることを示す記載はないと主張するが、発明の詳細な説明の記載から、本願発明についての複数の課題を把握することができる場合、当該発明におけるその課題の重要性を問わず、発明の詳細な説明の記載から把握できる複数の課題の全てが解決されると認識できなければサポート要件を満たさないとするのは相当でない等と判示し、原告の請求を認容し、審決を取り消した。
H24.9.26 知財高裁 平成23(行ケ)10044号 審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「改良型冷却/加温パッドおよびシステム」とする国際特許出願について、特許庁に翻訳文を提出したが、進歩性欠如の拒絶査定を受けたので、不服審判の請求をすると共に補正をしたところ、不成立審決を受けたことから、その取消しを求めた事案である。
 知財高裁は、「冷却又は加熱のために物質が循環しない装置に関する引用例2に開示された技術的事項を、それらの物質が循環する装置である引用発明と組み合わせることにつては阻害要因がある」との原告の主張に対しては、冷却又は加熱のための物質を循環させるという技術的事項は、患部との熱の伝達によって低温物質が暖かく、あるいは高温物質が冷たくなるという欠点を解消するためのものであるのに対し、装置に貼着面を設け、粘着性表面とし、患者と密着させるという技術的事項は、患部と装置との接触状態の向上や相対的位置関係の保持に関するものであって、互いに技術的な関連性はなく、次元を異にする事項であるから、冷却又は加熱のための物質が循環しない点は、引用例2に開示された技術的事項と引用発明との組合せを阻害する要因であるとはいえないとした。
 また、審決が、貼着面を粘着性表面とすることが常套手段であるとする判断につき証拠を提示していないとの原告の主張に対しては、治療装置に患者の皮膚に貼着させるための貼着層を設ける場合に、その貼着面を粘着性表面とすることは一般的にみられる手段であるから、審決が証拠を提示していないことそれ自体が違法であるとはいえないとした。
 また、引用発明について、継ぎ目を設けることで患者の身体の輪郭に「限られた箇所」で適合する構成となっているとの原告の主張に対しては、継ぎ目は患者の身体の輪郭との「適合を容易にするため」に設けられるのであり、適合する部分を限定するためのものではなく、原告の主張は引用例1の記載を正解しないものであるなど、原告の主張を全て却下し、原告の請求を棄却した。
H24.8.27 知財高裁 平成23(行ケ)10346号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「電線接続構造」とする特許出願について、進歩性欠如を理由とする拒絶査定に対し不服審判を請求をすると共に補正をしたところ、補正を却下した上で不成立審決を受けたことから、その取消しを求めた事案である。
 知財高裁は、引用例の明細書及び図面の記載を総合してみると、引用例には審決が引用発明として認定したとおりの発明が記載されているので、審決の引用発明の認定に誤りはないとした。また、補正明細書の記載によれば、補正発明の電線接続構造であっても、第1〜3かしめ片以外の第4かしめ片を備えることを除外するものでないことは明らかで、また、引用例及び周知例の記載によれば、かしめ部を3つ設け、その1つのかしめ部で接触子をかしめつけることは、引用発明の出願時以前から周知であり、引用発明はそのような周知の技術を前提とした考案であり、基本的な機能から見ると、接触子用素材を圧着保持するかしめ片があれば足り、抜け止めの機能を有するかしめ片は必須のものではなく付加的なものと解することができ、一般的に、基本的な機能を有する装置や器具に、付加的な機能を有する要素を加えたものにおいて、コスト削減や小型軽量化を目的として、付加的な要素を省いて基本的な機能を有するだけの装置や器具とすることは単なる設計事項にすぎないので、引用例において「かしめ片4b」が備わっていることは補正発明との相違点となるものではなく、これが相違点であるとする相違点看過及びその判断遺脱の原告主張は理由がないとした。そして、「相違点の判断の遺脱」については、審決における補正発明と引用発明との対比に審決の結論に影響を及ぼすような誤りはなく、また原告が言及されていないとする相違点があるとは認められないから、原告の主張は理由がないとした上で、「審決における相違点の判断の誤り」については、補正明細書や請求項1には、補正発明の接続圧着端子の材料として用いられるリン青銅について、求められる特性の限定はないなどと、全ての審決の判断に原告主張の誤りはないとして、原告の請求を棄却した。
H24.7.18 知財高裁 平成23(行ケ)10380号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「スクリーンを基礎とするホストと種々の分散し且つ自由に様式化された情報を含む項目との間の会話のためのマルチメディア方法及び装置、及びそのような装置による使用のための情報を含む項目」とする発明について、進歩性欠如を理由とする拒絶査定を受けたので、不服審判の請求をしたところ、不成立審決を受けたことから、その取消しを求めた事案である。
 知財高裁は、「審決における相違点1」の判断について、原告は、ワイヤレス接続ではロボット主要部に電源を供給することができないから、引用発明においてワイヤレス接続を採用することは不可能であり、阻害事由がある旨主張するが、ゲーム機本体からロボット主要部に電源を供給することは、引用発明が達成しようとした目的と直接の関係はなく、玩具体への電源供給を電池などにより行うことは周知技術にすぎないものであり、電源供給をゲーム機から行わなくとも玩具体を動作可能とすることは当業者が適宜なし得ることにすぎないので、引用発明においてワイヤレス接続を適用することへの阻害事由があるとの原告の主張は採用できず、審決の相違点1の判断に誤りはないとした。また、「審決における相違点2」の判断については、本願発明における「近接条件」と、引用発明において、モータ装置と玩具体とを「近くに置いて」ゲームを操作することとは、実質的な距離範囲として異なるものではないと解せられ、ワイヤレス接続による通信において通信可能な範囲を超えると通信ができなくなることは技術的に自明であるところ、引用発明においてゲーム機本体と玩具体との「接続」に周知技術である「ワイヤレス接続」を採用した場合に、「ワイヤレス接続により通信可能な範囲」をモニター装置と玩具体とを「近くに置いて」ゲームを操作する範囲とすることは、当業者にとって自明のことである結果、引用発明においては、プレーヤがモニター装置と玩具体とを「近くに置いて」ゲームを操作する範囲にある場合にのみ、「勝者となった玩具体の不揮発性メモリにはその対戦データが記録され」ることになるところ、これは本願発明の「近接条件を分散アイテムが満たす限り、情報アイテムが、前記ホストシステムが生成した結果に追随させることを許容する」ことに対応するものであることから、引用発明において、「近接条件を分散アイテムが満たす限り」において、情報アイテムが、前記ホストシステムが生成した結果に追随させることを許容する構成を採用することは当業者にとって容易想到であるべきであり、審決の相違点2に関する判断に誤りはないとして、原告の請求を棄却した。
H24.6.28 知財高裁 平成23(行ケ)10283号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「直列・並列混合式二動力駆動系統」とする発明についての拒絶査定不服審判の不成立審決の取消しを求めた事案である。
 争点は、引用例の認定の誤り、本願発明と引用発明との一致点・相違点の認定の誤り、容易想到性に係る認定、判断の誤りについてである。
 「本願発明は、充放電装置の電気エネルギーと第一電気ユニットの発電エネルギーとを併せて第二電気ユニットを駆動する態様と、エンジンを一定速度の稼動条件に調節制御する態様とが相互に密接な関係を有し、両態様を同時に制御するものであるのに対し、引用発明は定常高負荷走行時において、バッテリの電力とジェネレータ・モータの発電電力とを併せて、走行モータを駆動するものではないとして、審決の引用発明の認定、本願発明と引用発明との一致点、相違点の認定、及び本願発明の容易想到性判断には誤りがある」との原告の主張に対し、知財高裁は、他の引用例や公知例によれば、エンジンを一定速度の稼動条件に調節制御することにより、エンジンの低いパワーと低速稼動における効率低下と高い汚染課題を改善することは、駆動源としてエンジンと電気モータを併用するいわゆるハイブリッド電気自動車の分野において、周知の技術事項といえるとしたうえで、ハイブリッド電気自動車である引用発明においても、効率の向上や排気ガス中の有害成分の低減といった課題は当然内在し、これを解決しようと試みることに各段困難はないから、引用発明に上記周知技術を適用し、エンジンの低いパワーと低速稼動における効率低下と高い汚染課題を改善するとの構成に至ることは容易であると認められるので、原告主張の引用発明の認定の誤り、本願発明と引用発明との一致点、相違点の認定の誤りが審決にあったとしても、本願発明は引用発明に周知技術を適用することにより容易に発明ができたといえるから、審決にはこれを取り消すべき違法はない等として、原告の請求を棄却した。
H24.5.31 知財高裁 平成23(行ケ)10318号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「プレス加工方法における薄板断面成型法」とする発明についての拒絶査定不服審判において、審判官が指示した補正案のとおりに手続補正書を提出したものの受けた不成立審決の取消を求めた事案である。
 争点は、@拒絶査定時の引用刊行物とは異なる引用刊行物に差し替えて判断した誤り、A審尋に対する原告の回答書の内容を考慮しなかった誤り、B審判官が原告代理人に対し、復代理人を定めるよう指示する越権行為をした不公正、C審判官が指示した補正案のとおりに手続補正書を提出したにもかかわらず、審判請求を不成立と判断した不公正についてである。
 知財高裁は、@については、本件の審判手続において、審判合議体は査定の理由で引用した刊行物と異なる刊行物を引用刊行物とする拒絶の理由を発見し、原告に対しその旨の拒絶理由を通知し、その後、原告が提出した意見書及び手続補正書を踏まえて審決したものと認められ、原告の主張する誤りはないとした。また、Aについては、審尋において、前置報告書に示された見解について「意見があれば回答して下さい。」と記載されていたこと、原告はこれを受けて「回答書」を提出し、前置報告書に対する意見を述べたこと、審判合議体は前置報告書に示された審査官の見解とは異なる拒絶理由を発見し、原告に対し拒絶理由を通知した事実によれば、原告が回答した意見を踏まえて審理が行われたものといえるから、審決の結論が「回答書」に示された意見と異なっていたとしても、審判手続に違法、不当があるとはいえないとした。また、Bについては、原告代理人に宛てて送付したと推認される書面の記載によれば、審判官が審判請求人代理人に対し、復代理人を選任するよう指示したものと解することはできず、原告主張に係る越権行為があると評価できないと、Cについては、原告が提出した手続補正書の内容が、審判官が作成した補正案に全面的に依拠したものであったとしても、原告が自らの判断でこれを採用し、補正書を作成して提出したと解されるから、審判官に原告の主張に係る「教示義務違反」等の違法があるとはいえないなどとして、原告の請求を棄却した。
H24.4.11 知財高裁 平成23(行ケ)10181号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「貯湯式給湯装置」とする発明についての進歩性欠如を理由とする拒絶査定不服審判の不成立審決の取消しを求めた事案である。
 争点は、進歩性に係る判断の誤り(引用発明1の認定の誤り、一致点及び相違点の認定の誤り、相違点に係る判断の誤り)についてである。
 知財高裁は、「引用発明1の認定の誤り」については、原告らは蓄熱運転時において、全部沸き上げ方式を採用することが技術常識であることを前提に、引用例1に記載した発明も同方式を採用するものであるから、本件審決の引用例1に記載された発明の認定は誤りであると主張するが、引用例1には、放熱器よりも上方に存在する湯をどのように加熱するかについての具体的な記載は存在しないが、本願発明と同様に、貯湯タンクの上方に貯湯される高温の湯と貯湯タンクの下方に存在する湯との間に温度差が生じていることは明らかであり、部分沸き上げ方式は、本件出願前に既に技術常識であったものと解されるので、原告らの主張はその前提となる技術常識に係る主張自体、誤りであると言うほかは無いとした。また、「一致点及び相違点の認定の誤り」については、原告らは本件審決の引用例1の認定が誤りであることを前提に本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定もまた誤りであると主張しているが、本件審決の引用発明1の認定に誤りはないことから、原告らの主張は採用できないとした。また、「相違点に係る判断の誤り」については、引用例2に記載された発明は、深夜に所要の総熱量のうち翌日太陽熱から得られるであろう熱量を引いた残りの熱量を電気ヒータで加熱しておき、翌日太陽熱で所定の温度まで上げて、必要量の湯を供給するものであり、引用例2には部分沸き上げ方式に関する記載は存在せず、電気ヒータで加熱した際、タンク内の湯の全量が均一の温度に沸き上げられるのか、或いは一部のみが高温に沸き上げられるものであるかについては不明であるが、本件審決も引用例2に記載された発明について、部分沸き上げ方式を採用するものとして認定しているわけではないので、本件審決の引用例2に記載された発明の認定に誤りがあるとまでいうことはできないと、また、相違点2の構成は、引用発明1に引用発明2を組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得るものであることについて、原告らは、本願発明は、ヒートポンプのエネルギー発生の観点では効率が悪いとされる部分沸き上げ方式をあえて採用したものであり、全部沸き上げ方式を採用する引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に想到し得るものではなく、仮に深夜時間帯に部分沸き上げ方式を採用することが公知であるとしても、部分沸き上げ方式が構造的に不可能な引用発明2に、全部沸き上げ方式を採用している引用発明1を組み合わせる動機付けを認めることはできないなどと主張するが、部分沸き上げ方式が本件出願前の技術常識であり、仮に引用発明1が同方式とは異なる沸き上げ方式を採用するものであったとしても、当該技術常識を採用すること自体は設計的事項に過ぎないので原告らの主張は採用できないとして、原告らの請求を棄却した。
H24.3.12 知財高裁 平成23(行ケ)10220号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「位置決めシステムによって支援されたセルラー無線電話機をハンドオフ及びドロップオフする通信システム及び通信方法」とする発明について、進歩性欠如を理由とする拒絶査定不服審判の不成立審決の取消しを求めた事案である。  知財高裁は、本件発明は、従来の欠点を克服し、セルラー無線電話の位置の正確な情報を獲得することによりハンドオフをスムーズに実行することを第1の目的とし、ドロップオフやハンドオフ操作を速やかに実行するために、速やかに位置情報を獲得することを第2の目的として、請求項記載の構成を採用したものである一方、引用発明は、電波の不感地帯においても携帯電話機が最適な受信を行えるという利点や、他の基地局とのハンドオフを基地局で制御できるという利点があり、携帯電話機の受信性能を向上させるという作用効果を奏するものであること、また、甲6公報より、移動体通信の技術分野において、「移動局の位置検出を行って、移動局の位置が基地局のセルの距離限界より内側のセルの境界付近でハンドオフを行うこと」、甲8公報より、移動体通信の技術分野において、「移動局から境界線までの距離を計算して、基地局間のハンドオフの要否を決定すること」は周知技術であると認められるので、衛星からの電波に基づいて推測される携帯電話機の位置情報を基地局が取得することにより、基地局で他の基地局とのハンドオフを制御できるというものである引用発明と上記周知技術は、何れも移動体通信におけるハンドオフという限られた技術分野に関するものであるから、当業者が引用発明に上記各周知技術を適用して、携帯電話機からセル境界線までの距離を計算し、計算した距離に基づきハンドオフの要否を決定するようにすることは、容易になし得るものといえる等として、原告の請求を棄却した。
H24.2.29 知財高裁 平成23(行ケ)10212号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「可搬式水中電動ポンプ用DCブラシレスモータ」とする発明についての進歩性欠如を理由とする拒絶査定不服審判の不成立審決の取消しを求めた事案である。
 本願発明が「可搬式」であるのに対し、引用発明はそのような特定をしていない点(相違点1)、本願発明がモータ軸を「アルミニウム合金製」と特定しているのに対して引用発明ではそのような特定をしていない点(相違点2)、本願発明がロータを「小型軽量」に構成させて水中電動ポンプを「可搬とさせ」ているのに対し、引用発明では単にモータ自体を軽量化するものである点(相違点5)に関する審決の判断に対して、単にモータ軸をアルミ合金製にしただけでは可搬化を実現できず、従前通りの出力を維持しながら可搬化できるほどに水中電動ポンプの軽量化を実現するのは困難で、本願発明に特有の構成を採用することによって可搬できるほどに軽量化したものであるなどとの原告の主張に対し、知財高裁は、引用刊行物1の水中電動ポンプには取っ手が設けられており、十分小型化、軽量化して可搬式とすることが考慮されているなどとして、審決がした相違点1,2,5に係る容易想到性判断に誤りは無いとした。
 また、本願発明が「磁性筒」であるのに対し、引用発明では磁性であるが「筒」状であるとは特定されていない点(相違点3)、本願発明が「その円周方向に沿って、複数の磁石板を定間隔に並列させた態様で定着する」態様であるのに対し、引用発明は単に「接着固定」させるものである点(相違点4)に関する審決の判断に対して、引用刊行物3のロータコアの形状は「筒」と呼べるものではなく、本願発明にいう「磁性筒」自体が記載されていないとの原告の主張に対し、知財高裁は、本願発明では「磁性筒」の直径や重量等について特定されておらず、発明の詳細な説明中にもかかる直径等についての記載も示唆もないから、本願発明の「磁性筒」と引用刊行物3のロータコアとを対比できないから、上記ロータコアの形状が「筒」でないということはできないと、また、単純に上記ロータコアのような積層鉄心の構成が本願発明において排除されるのは適切でない等として、相違点3,4の容易想到性を肯定した審決の判断に誤りは無いとし、原告の請求を棄却した。
H24.1.31 知財高裁 平成23(行ケ)10142号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「電子レンジのマイクロ波を利用し、陶磁器に熱交換の機能性を持たせ、調理、加熱、解凍を行う技術」とする発明についての拒絶査定不服審判の不成立審決の取消しを求めた事案である。
 争点は、本件発明の顕著な作用効果を看過した誤りがあるか否か、本願発明の相違点A,Bに係る容易想到性判断に誤りがあるか否かである。
 知財高裁は、素材を内外から加熱することに発明の特徴がある引用発明と、マイクロ波の素材への直接照射を遮断することに発明の特徴がある引用刊行物2記載の技術は、解決課題及び解決手段において、大きく異なる。引用発明においては、外部加熱のみによって加熱を行わなければならない必然性も動機付けもないから、引用発明を出発点として、引用刊行物2記載の技術事項を適用することによって、本願発明に至ることが容易であるとする理由は存在しない。従って、引用刊行物2記載の示唆に基づき、引用発明の内部加熱のための被調理物加熱層を透過するマイクロ波の一部が透過しないように被調理物加熱層のセラミック材をなくし、フェライト粉によってマイクロ波を遮蔽するようなすことは当業者が格別の困難性を要することなくなし得たことを前提に、本願発明の相違点Aに係る構成に至ることが容易であるとした審決の判断は、前提を欠くもので、誤りというべきであって、その余の争点について判断するまでもなく審決は取り消すべきものであるとして、審決を取り消した。
H23.12.26 知財高裁 平成23(行ケ)10012号 実用新案審決取消請求事件  
  本件は、原出願から分割出願をしたテレホンカードの考案について、審判請求時の補正を却下して設定登録された後、訂正審判の請求をしたが不成立の審決を受けたので、その取消しを求めた事案である。  争点は、(1)本件考案の認定に誤りがあるか否かと、(2)本件訂正が実用新案登録請求の範囲の拡張又は変更に当たるか否かである。  知財高裁は、(1)については、本件訂正前の明細書の記載及び図1によれば、本件考案における「押形部」とは、カード本体の一部に設けられ、電話機に差し込む方向を指示するためにカード本体に形成されたくぼみからなる差込方向の指示部であると理解でき、押すことによって形成された部分を意味するものと理解することができる。また、本件考案は、原出願が補正され、出願公告された後に分割出願されたものであるから、原出願に係る明細書と公告明細書の双方に記載された考案であると理解するのが自然であり、公告明細書には「前記カード本体の外周縁から前記カード本体の内方向にくぼんでいる」との構成について、側面から見て、上下面から厚み中心部方向にくぼんだ形状のみが示されていたことに照らすならば、本件考案は、テレホンカードを平面的にみて、カードの中心方向にくぼんだ形状を含まないと理解するのが合理的である。そうだとすると、「押形部」を「へこみ部」とすることは、押すことによって形成された部分でない「へこみ部」を広く含むことになるから、本件訂正は実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、変更するものに当たり、本件審決の本件考案の認定に誤りはない。また、(2)についても、本件訂正前の実用新案登録請求の範囲の「押形部」を「へこみ部」とすることは、押すことによって形成された部分でない「へこみ部」を広く含むことになるから、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものに当たる、等として、原告の請求を棄却した。
H23.11.15 知財高裁 平成23(行ケ)10097号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「歯科治療においてあらゆる下顎位の再現を迅速にかつ正確に、上下顎模型を咬合器にマウントし、その時の下顎顆頭にあたるコンダイルの位置を記録する事によって、歯科治療に役立つ事の出来る咬合器とフェイス・ボウ」とする発明について、明確性要件と補正要件の違反を理由とする拒絶査定の不服審判の不成立審決の取消しを求めた事案である。  知財高裁は、請求項1は、「歯科治療を行う時の上下顎の石膏模型や義歯等を咬合器にマウントしなければいけませんが、其のとき上下、左右、前後の位置、又咬合平面の角度を手早く調整すること。」というものであるが、「歯科治療を行う時の上下顎の石膏模型や義歯等を咬合器にマウントしなければいけませんが、」の部分は、「手早く調整すること」がいかなる場面で行われるかという前提事項を説明したものと解され、また、「其のとき上下、左右、前後の位置、又咬合平面の角度を手早く調整すること。」の部分も本願明細書に記載された発明の効果に対応する記載であると解されるので、請求項1には前提事項と発明の効果に対応する記載がされているのみで、課題を解決する手段が一切記載されていないことになるから、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。また、請求項1の「手早く調整すること。」という記載からは発明が方法の発明であるのかものの発明であるのかも明らかでない等として、本件審決を取り消した。
H23.10.31 知財高裁 平成23(行ケ)10100号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法」とする発明について、進歩性について判断をせずに拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消しを求めた事案である。
 争点は、1)引例発明の認定の誤り、2)相違点の看過等、3)本願発明の相違点3に係る構成についての容易想到性の判断の誤り、4)手続違背があるか否かである。
 知財高裁は、1)の引例発明の認定の誤りについて、「合金においては、それぞれの合金ごとにその組成成分の一つでも含有量が異なれば、全体の特性が異なることが通常であって、所定の含有量を有する合金元素の組合せの全体が一体のものとして技術的に評価されると解すべきである。」「引用例の説明は、各元素ごとに5つの独立した任意の鋼の中から含有量の最大値と最小値の範囲の含有量により組成される、あたかも1種の鋼において特定の性質を有することを開示したことを意味するものでもなく、具体的な鋼の組成及び性質を特定したものと理解することもできない。」として、審決の引用発明の認定は誤りであるとした。また、2)の相違点の看過等については、本願発明と引用発明はいずれも鋼板等を組成する成分の組合せ、含有量が一体として重要な技術的意義を有する発明であるといえ、本願発明と引用発明とは組成成分の含有量の組合せが鋼の特性に影響を与える重要な構成であることに鑑みると、組成成分の含有量に異なる部分があることを考慮することなく、一部が重複していることのみを理由として相違点の認定から除外することは許されないと言うべきで、引用発明における含有量の数値範囲の一部が本願発明における含有量の数値範囲と重複しないにもかかわらず、鋼板のC,Si及びMnの含有量、並びに合金化溶融亜鉛めっき層のFe及びAlの含有量についての相違点として認定しなかった審決は相違点を看過し、それらの相違点に係る本願発明の構成について容易想到性の判断を示さなかった誤りがあり、これらの誤りは結論に影響を及ぼすから、その余の争点について判断するまでもないとして、本件審決を取り消した。
H23.9.29 知財高裁 平成23(行ケ)10072号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「ゴルフ用クラブの展示用支持装置」とする特許について、補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされていないとして特許を無効とした審決の取消しを求めた事案である。
 知財高裁は、当初明細書等の全ての記載を総合的に判断すると、当初明細書等には、そこに記載の発明の形状に関する説明に当たり、本件補正中の@「当てがう」こと、A「挿入」すること、B「吊り持ちさせる」こと、C「展示させる」ことの4つの動作の同時並行関係又は時間的な順序関係については、これを同時動作を意味すると解する特段の記載がない一方で、これらの動作の間に同時並行関係又は時間的な順序関係があることを否定しているものでもないから、本件補正事項の「ながら」の文言が、動作の同時並行関係を合意しない「…のままで。」との同時状態の意味のほかに、「同時にあれとこれとをする意。」との動作の同時並行関係、すなわち同時動作の意味を有するからといって、当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいい難いとして、本件審決を取り消した。
H23.8.25 知財高裁 平成22(行ケ)10349号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「シート材料を引き裂くためのカッター刃」とする発明について新規性を欠くとして拒絶査定を受けたので、その取消しを求めた事案である。
 知財高裁は、本願発明は、ブレードの歯に関する「約0.005インチ以下の歯の半径」「約0.050インチ以下の歯のピッチ」及び「0.006インチ以下の歯の厚さ」という3つのパラメータのうち、1つのパラメータにだけ該当するブレードを含むものであると認めるのが相当であるから、本願発明は上記パラメータの全てを満たすことを内容としたものであるとの原告の主張は採用できず、また、引用発明1に鋸刃の歯山先端の半径として明示されているのは0.04mmと0.06mmであるが、引用例の記載においては0.04mmと0.06mmの中間値が殊更排除されているとはうかがわれないから、引用例には歯山先端の半径を0.04mmから0.06mmとする鋸刃についても記載されていると認定され、歯山のピッチが1.08mm、歯山の厚さが0.25から0.15mm、歯山先端の半径が0.04mmから0.06mmの引用発明1と、本願発明とは相違しないとした。また、本願発明と引用発明2も相違しないとして、原告の請求を棄却した。
H23.7.27 知財高裁 平成23(行ケ)10057号 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「溝穴付き蓋」とする発明について、出願後の手続補正が当初の明細書等に記載した事項の範囲内ではないとして、拒絶査定を受けたので、その取消しを求めた事案である。
 知財高裁は、当初の明細書等には、所定の幅と深さの溝穴を直線状に設ける実施例が記載されるほか、幅が異なる二つの溝穴を十字状に交差させる実施例が図示されているが、同図面からは、直線状の溝穴の底部にさらに幅の狭い溝穴を設け、段差状の溝穴とする技術は、開示又は示唆されておらず、また、明細書等には「上面に設ける溝穴の幅や深さはもとより、さらに異なる幅のものを2本以上設けても構わない。」と記載されているものの、同記載からも、上記段差状の溝穴を設ける技術は、開示又は示唆されていないので、本件補正は、当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない等として、原告の請求を棄却した。
H23.6.23 知財高裁 平成22年(ネ)第10089号 特許権侵害差止等請求控訴事件  
  本件は、被控訴人が、被告装置を製造、販売及び販売の申出をした行為について、控訴人が、控訴人の有する特許第4210779号(発明の名称「食品の包み込み成形方法及びその装置」)についての請求項1に係る本件特許権1を侵害するものとみなされ(特許法101条4号)、請求項2に係る本件特許権2を侵害すると主張して(被告装置2については、いずれも均等論による侵害を主張して)、@本件特許権に基づき、被告装置の製造、販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、A不法行為に基づく損害賠償として、3600万円及びこれに対する訴え変更の申立書送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。原判決は、被告装置を用いた食品の包み込み成形方法(被告方法)及び被告装置における「ノズル部材」が、いずれも本件発明の「押し込み部材」に当たらないから、構成要件を充足せず、被告装置2については均等侵害も成立しない旨を判示して、控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は、これを不服として控訴し、当審において、予備的主張として、「押し込み部材」の点について均等論による侵害の主張を追加した。控訴人は、「押し込み部材とともに押え部材を下降させて押え部材を外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持し」との構成要件について、「押し込み部材とともに押え部材を下降させて」について、押し込み部材と押え部材が同時に下降する場合のみならず、押え部材の下降が完了する前から押し込み部材の下降が開始される場合を含むと主張し、被控訴人は、押え部材のみが下降する場合は含まないと主張したが、知財高裁は、「…ともに…」の通常の用語の解釈によれば、押し込み部材と押え部材とが、ともに、すなわち一緒に下降することと解釈するのが自然ではあるが、構成要件には、押え部材を下降させ、これを外皮材の縁部に押し付けて外皮材を受け部材上に保持することが記載され、押え部材の役割を中心に記載されていること、続く構成要件において、押し込み部材が更に下降することが記載されており、本件明細書には、押し込み部材と押え部材とが一緒に下降することの技術的意義は何ら記載がないことに照らすと、「押し込み部材とともに押え部材を下降させて」とは、押し込み部材と押え部材とがいずれも下降することを表しているものであって、両者が同時に下降する場合のみならず、押え部材の下降が完了する前から押し込み部材の下降が開始される場合を含むと解するのが相当であるとし、また、本件発明1は、押し込み部材を通して、外皮材に形成された椀状の部分の中に内材を配置するものであり、被告方法1も、ノズル部材を通して、生地の窪みに内材を供給し、生地に内材を配置するものである点においてかわりはないから、被告方法1の「ノズル部材」が本件発明1の「押し込み部材」に該当するとし、被告装置1ないし3の製造、販売及び販売の申出をする行為は本件特許権を侵害するとみなされるなどとして、原判決を変更し、特許法100条1項に基づき、被告装置1ないし3の製造、販売、販売の申出及び輸出の差止め、同条2項に基づき、同装置の廃棄、民法709条に基づき、1766万9218円及び遅延損害金の損害賠償を求める限度で控訴を認容した。
H23.6.7 知財高裁 平成22(行ケ)10323号 審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「パウチ用舟形溶着部材」とする発明について国際特許出願をし、補正をしたが、拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判の請求をしたところ、特許庁が請求不成立の審決をしたので、その取消しを求めた事案である。  争点は、補正について独立特許要件(容易推考性)の存否である。  知財高裁は、中央部の充填用開口部の径の大きさに関する(前者)ものと、充填用開口部と注入口及び排出口との径の大小関係に関する(後者)相違点2と、延出部の側縁形状及び充填用開口部との接し方に関する相違点3を一体で判断しなかったことの当否について、前者の構成は補正発明の課題を解決するための構成であるといえるが、後者の構成は前者の構成と同時に使用することはないからこれらの径の大小関係に技術的関連性はなく、特段の技術的意義は認められず、また、相違点3の構成については、相違点2の構成との間に技術的関連性がないことは明らかであるから、審決が相違点2,3を個別に判断したことに誤りはない等として、原告の請求を棄却した。
H23.5.30 知財高裁 平成22(行ケ)10204号 審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「水ポンプと共に用いるための軸受け組立体」とする発明について特許出願をしたが、拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判の請求をしたが、特許庁が請求不成立の審決をしたので、その取消しを求めた事案である。  争点は、本願発明は甲1記載の発明に周知技術を適用することにより容易に発明をすることができたものであるか否かである。  知財高裁は、本願発明は、自動車の水ポンプと共に用いるための軸受組立体について、従来の軸受組立体よりも長い動作寿命を得るために、シャフト又はスピンドルを保持する第1,2回転軸受のうちの第1回転軸受として総玉軸受を採用した構成であり、原告は、総玉軸受はボールが保持器で離されている軸受と比較して動作寿命等の点で不利であると一般的に認識されていたから、高荷重を要求される自動車の水ポンプと共に用いるための軸受について総玉軸受を採用することに想到するのは困難であったと主張するが、乙1〜3には、過給機、ジェットエンジン、ガスタービン等において、高荷重を要求される部分に総玉軸受を使用する例が示されているので、本願の軸受組立体に総玉軸受を用いることに阻害事由はない等として、原告の請求を棄却した。
H23.4.26 知財高裁 平成22(行ケ)10210号 審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「パイプライン・アーキテクチャ準拠マイクロコントローラのための機密保護対策方法」とする発明について国際特許出願をし、翻訳文を提出したが、拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判の請求をし、さらにた手続補正をしたものの、特許庁が請求不成立の審決をしたので、その取消しを求めた事案である。  争点は、改正前の36条4項の要件を満たすか否かである。  知財高裁は、本願発明が前提とするパイプライン方式では、各電子モジュールは、ステージの流れを特定の命令におけるものとして把握することができないことは自明であることに鑑みると、請求項1の「命令を解読するための電子モジュール」は、前段階のフェッチステージを処理すべき電子モジュールにその命令が流れてくることを事前に把握していないことになり、そのような解読ステージを処理すべき電子モジュールがフェッチステージの前と特定してそのステージに待ち時間を挿入するとの作用はそのままでは実施不能となり、このような技術的手段については本願発明が構成するところではないし、どのように実現するかについての記載も明細書にはないので、本願発明について実施可能要件を充足しないとした審決の判断に誤りはないとして、原告の請求を棄却した。
H23.4.8 東京地裁 平成19年(ワ)第32793号 報酬金請求事件  
  本件は、被告の元従業員である原告が、カナ漢字変換装置に関する2件の特許権に係る発明は、原告が単独で発明した職務発明であり、その特許を受ける権利を被告に承継させたと主張し、改正前特許法35条3項及び4項の規定に基づき、被告に対し、特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の一部請求として3億2676万5500円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。本件各発明が原告の単独発明か、原告ら4名の共同発明か(争点1)、本件各発明により被告が受けるべき利益の額(争点2)、本件各発明がされるについて被告が貢献した程度(争点3)、本件各発明の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の額(争点4)、本件発明2の一部に係る相当対価請求権の消滅時効の成否(争点5)が争点となった。本判決は、争点1につき、特許発明の「発明者」といえるためには、特許請求の範囲の記載によって具体化された当該特許発明の技術的思想(技術的課題及びその解決手段)を着想し、又は、その着想を具体化することに創作的に関与したことを必要とし、発明について、一般的な指導又は助言を与えたにすぎない者、発明者の指示に従って補助又は協力をしたにすぎない者などは、創作行為に現実に加担したものということはできないので、発明者に当たらないとした上で、本件発明1は、原告、B1及びC1の3名による共同発明であり、本件発明2は、原告の単独発明であると認定した。また、争点2につき、特許法旧35条4項の「発明により使用者等が受けるべき利益」とは、法定通常実施権を行使し得ることにより受けられる利益は含まず、使用者等が従業者等から特許を受ける権利を承継し、当該発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得することによって受けることが客観的に見込まれる利益、すなわち「独占の利益」をいうものと解され、特許を受ける権利の承継後の事情についても、その承継の時点において客観的に見込まれる利益の額を認定する資料とすることができ、@使用者等が職務発明についての特許を受ける権利の承継後に第三者との間のライセンス契約に基づいて当該発明の実施を許諾している場合には、その実施料収入、また、第三者との間で包括クロスライセンス契約を締結している場合には、相手方が当該発明を実施することにより、本来相手方から支払を受けるべきであった実施料相当の利益及び現実に支払われた実施料収入の合計額、A使用者等が当該発明を自己実施(自社実施)している場合には、特許権に基づく第三者に対する禁止権の効果として、使用者等の自己実施による売上高のうち、当該特許権を使用者等に承継させずに、自ら特許を受けた従業者等が第三者に当該発明を実施許諾していたと想定した場合に予想される使用者等の売上高を超える分(超過売上高)について得ることができたものと見込まれる利益(超過利益)などに基づいて、上記「独占の利益」を認定することができるものというべきであるとし、@については原告の一定の寄与を認め、Aについては、本件発明2は、そもそも被告による自社実施の事実が認められず、また、本件発明1については、被告による自社実施の事実は認められるものの、それによって被告が法定通常実施権の行使により自己実施することができた分の利益を上回る利益(超過利益)を得ていたものとは認められず、被告が本件各発明を自社実施したことによる独占の利益の存在認められないとした。そして、被告の貢献度、相当対価額及び一部時効が成立していること等を認定した上で、原告の請求を一部認容した。
H23.3.23 知財高裁 平成22(行ケ)10243号 審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「屏風式製品」とする発明について特許出願をしたが、拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判の請求をした後手続補正をしたが、特許庁が請求不成立の審決をしたので、その取消しを求めた事案である。  争点は、容易想到性の有無である。  知財高裁は、本願発明の相違点1に係る構成(「屏風に用いられる紙蝶番と同一の構成」であり、「隣り合うパネル間で一方のパネルを360度回転できるように一対のみぞ形部材を連結している」)は、刊行物2記載の発明に開示され、かつ、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用することに何ら阻害要因はない。また、本願発明の相違点2に係る構成(「みぞ形部材とパネルの幅方向の端部の連結が、本願発明では、着脱自在であり、ウェブに設けられたフックが、パネルの幅方向の端部に設けられたフック受けに引っ掛かることで着脱自在とされている」)は、みぞ形部材をパネルに連結する際に、ウェブに設けたフックをパネル体のフック受けに着脱自在に連結することは周知技術であり、同技術を刊行物1記載の発明に適用することにも阻害要因はない。従って、審決の容易想到性の判断に誤りはないとして、原告の請求を棄却した。
H23.3.15 知財高裁 平成20年(ネ)第10064号 著作権確認等請求控訴事件  
  本件は、「船舶情報管理システム」(本件システム)を開発作成し、その著作権を有すると主張する控訴人(原告)が、元の勤務先である被控訴人(被告)が同システムを使用しているとして、被控訴人に対し、@本件システムについて、控訴人が著作権を有することの確認を求めるとともに、A控訴人による開発寄与分の確認を求めた事案である。原判決は、本件システムはプログラムの著作物であるが、仮に同システムが控訴人の著作に係るものと認めるとしても、著作権法15条2項の職務著作に該当するとして、その著作権を有することの確認請求を棄却するとともに、本件システムについての開発寄与分がどれほどの割合かの確認を求める請求については、訴えの利益がないとして却下したため、控訴人が控訴したものである。なお、控訴審では、@の請求については、控訴人が単独で著作権を有することの確認を主位的請求とし、予備的に、被控訴人又は信友株式会社(信友)及び中国塗料技研株式会社(中国塗料技研)(いずれも控訴人の出向先であり被控訴人の完全子会社である)と共同で著作権を有することの確認を求めた。控訴人は、被控訴人が控訴人に対して、本件システムについて何らの開発指示・命令を行うことなく、同システムは、控訴人が一人で考えてアイデアを具現化して作られたものであるから、「法人等の発意」はなかった旨主張したが、本判決は、本件システムの開発が、控訴人が在籍中の出向元である被控訴人の指示により開始され、信友及び中国塗料技研がその意向を受けて法人として本件システムの開発を発意しているのであるから、両社において当該開発業務に従事する控訴人が、その職務上作成した本件システムのプログラムの著作者は、その作成時における契約や勤務規則等の別段の定めがない限り、法人である信友又は中国塗料技研となるものと認められ(著作権法15条2項)、上記別段の定めについての主張立証はないから、本件システムのプログラムの著作者は、信友又は中国塗料技研、あるいはその双方であると認め、また、被控訴人において使用されていたNECシステムが本件システムと著作物として同一又は実質的に同一であるともいえないとし、さらに、Aの開発寄与分がどれほどの割合かの確認を求める訴えについては、この割合自体が現在の権利又は法律関係となるものではなく、単なる事実関係の範疇に属するものであり、その事実関係から直截に現在の権利又は法律関係が導かれ、紛争を抜本的に解決するような事実関係ということもできないので、確認の利益を欠くとしてこれを却下した原判決は相当であるとし、控訴人の請求を全て棄却した。
H23.2.24 知財高裁 平成22(行ケ)10251号 審決取消請求事件  
  本件は、出願当初の名称を「睡眠治療装置と、その脳波誘導方法を用いた脳波賦活方式、及び、サブリミナル学習システム」とする発明についての拒絶査定不服審判の請求について、特許庁が補正却下した上、特許請求の範囲の補正が新規事項を追加するものであるから、本件出願を拒絶すべき旨の査定は相当であって、同請求は成り立たないとした審決の取消しを求めた事案である。  争点は、審決に手続違反があるか否か、補正に係る判断に誤りがあるか否かである。  知財高裁は、審決の手続違反については、本件補正発明においては、脳波誘導の休止周期は、呼吸周期以下を含むものであり、それは、「ノンレム睡眠―δ波誘導時において使用者のレム睡眠誘発を促す」ためのタイムラグとされているものである。また、同発明は、脳波誘導の周波数の推移終点に対して、「レム睡眠―α・β波誘導の呼吸周期の推移始点は、近似して成された反復手段」を有するものと解されるが、本件明細書中には、上記補正事項に関する記載はなく、また、これを示唆する記載もないから、本件補正は、当初明細書に記載した範囲内においてしたものではないといわざるを得ないとして、本件審決の判断に誤りはないとした。また、補正に係る判断の誤りについては、原告は、「ノンレム睡眠」「レム睡眠」は当業者にとって周知事項(甲2)であるし、当業者がレム睡眠、ノンレム睡眠とα波、β波、δ波とを関連付けて本件補正事項について理解することは自明であると主張するが、同文献をもってしても、本件補正事項が当初明細書に接した当業者にとって自明な事項であるということはできない等とし、補正に係る判断の誤りについても理由がないとして、原告の請求を棄却した。
H23.2.8 知財高裁 平成22年(ネ)第10064号 特許権侵害差止請求控訴事件  
  本件は、インクジェットプリンタに使用されるインクタンクなどの液体収納容器及び該容器を備える液体供給システムに関する発明の特許権者である被控訴人が、控訴人らによる原判決別紙物件目録記載の各インクタンク(被告製品1及び2)の輸入、販売及び販売のための展示行為によって本件特許権が侵害されたか、上記輸入行為等は特許法101条2号により侵害されるものとみなされる旨等主張して、上記輸入、販売行為等の差止請求をした事案である。原審は、被告製品2は本件発明1(本件訂正発明1)の技術的範囲に属し、その販売行為等は本件特許権を侵害する、被告製品2の販売行為等は特許法101条2号により本件特許権2(本件訂正発明2に係る特許権)を侵害するものとみなされる、控訴人らが主張する無効理由は理由がないか、あるいは本件特許権は訂正によってその無効理由が解消されるもので、特許無効審判により無効とされるべきものには当たらない、被控訴人の被告製品2の販売等の差止請求は権利濫用には当たらないなどとして、控訴人らに対する被告製品2の販売及び販売のための展示の行為の差止請求を認容したが、被告製品2の輸入行為の差止請求については、控訴人らが被告製品を輸入した事実もそのおそれも認められないとして棄却し、また、原審で控訴人が取り下げに同意しなかった被告製品1に係る差止請求についても棄却した。(なお、被控訴人は、平成21年8月3日、本件特許権につき訂正請求をし(本件訂正)、特許庁は、本件訂正を認めたが、本件訂正発明1、2等についての特許を無効とするとの審決をしたため、被控訴人からその取消しを求める訴えが提起され(当庁平成22年(行ケ)第10056号)、本判決と同日にその審決を取り消す旨の判決が言い渡された。)本判決は、控訴人らが当審で改めて援用したWO02/40275号国際公開公報におけるプリンタの識別装置は、電気配線を通じてインクカートリッジからインク色等に係る情報(信号)を取得するだけで、本件訂正発明のような、光を利用してインクタンクの識別を行う構成は開示も示唆もされておらず、同キャリッジのLEDも本件訂正発明1の発光部とは、当該部材を設ける目的も、これが果たす機能の点でも大きく異なるから、これを本件訂正発明1のような機能に変更することは、当業者にとって容易でない、また、控訴人らが周知技術の認定資料として挙げる米国特許第6151041号公報も、本件訂正発明のような、光を利用してインクタンクの識別を行う構成を開示ないし示唆するものではないなどとして、本件訂正発明の進歩性を肯定し、控訴を棄却した。
H23.1.20 東京地裁 平成20年(ワ)第36814号 特許権侵害差止等請求事件  
  本件は、液中の粒子を撮像し、その粒子像を記憶、表示するとともに、粒子像を画像解析することによって、粒子の大きさや形状に関する情報を求める粒子画像分析装置についての特許権を有する原告が、被告による被告製品の製造、販売等の行為は上記特許権を侵害するものであると主張して、被告に対し、特許法100条1項に基づく被告製品の製造、販売等の差止め、同条2項に基づく被告製品の廃棄を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として、1億4752万7616円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。構成要件充足性、進歩性の有無等が争点となり、本判決は、構成要件充足性を認めたうえで、粒子懸濁液の収容手段が、本件発明では、「粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲んだ流れに変換するシースフローセル」であるのに対既し既知発明では、「粒子懸濁液のセル」である点、また、本件発明は、「変換された懸濁液流に対して光を照射する光照射手段」を有し、これに伴い、撮像手段により撮像されるのが「照射された粒子」であるのに対し、既知発明は、撮像の際に粒子が照射されるか否かが明確でない点(相違点@)、本件発明は「表示手段」を有するとともに、本件発明の「画像解析手段」は、「粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段」を有するのに対し、既知発明は、これらの手段を有するか明確でない点(相違点A)、本件発明は、「撮像された各粒子像を格納する記憶手段」及び「記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段」を有しているのに対し、既知発明は、これらの手段を有するか明確でない点(相違点B)につき、相違点@については容易想到であるとしたが、相違点A及びBの構成を併せ備えることの意義を認識していない当業者において、上記相違点A及びBの構成を併せ持つ構成に想到することが容易であったとは認められないとして進歩性を肯定し、損害額については、「侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額」(特許法102条1項)とは、仮に、特許権者において侵害品の販売数量に対応する数量の権利者製品を追加的に製造販売したとすれば、当該追加的製造販売により得られたであろう売上額から、追加的に製造販売するために要したであろう追加的費用(費用の増加分)を控除した額を、追加的製造販売量で除した額(限界利益)であるとして、同条項により推定される原告の損害を、1億3379万3389円、さらに弁護士費用及び弁理士費用相当額を1300万円と認め、合計額である1億4679万3389円及び遅延損害金の支払請求、特許法100条1項に基づく被告製品の製造、使用、販売、輸出及び販売の申し出の差止め並びに同条2項に基づく被告製品の廃棄請求を認容した。
H23.1.13 知財高裁 平成22(行ケ)10091号 審決取消請求事件  
  本件は、名称を「高流量でのガス送出」とする発明についての国際特許出願が拒絶査定され、これに対して不服の審判を請求したが、特許庁が請求不成立の審決をしたので、その取消しを求めた事案である。  争点は、容易推考性の存否である。  知財高裁は、取消事由1については、原告は、引用発明のシリンダー過熱センサーは本願発明の温度測定手段に相当せず、加熱手段の出力を調整するために使用されるものでもないと主張するが、本願発明の請求項1では「加熱手段の出力の調整により、液体の沸騰を自由対流及び核沸騰型に制限して貯蔵容器壁から液体への熱伝達を最適にする」ことに関する特定はないし、明細書には、赤外表面温度センサーで測定した貯蔵容器の壁温度が設定した温度に達した時には圧力制御プロセスを無視し、ヒーターヘの動力を停止する旨の記載、すなわちリミッターに関する記載もあるから、明細書の記載を参酌しても本願発明の「調整」が原告の主張するような構成で限定されたものと読み取ることはできないので、原告の主張は採用できない等として取消理由1は理由がないとした。また、取消理由2については、原告は、取消理由1においてした主張を前提として、これらの点を考慮すると、相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易とはいえない旨主張するが、原告が前提とする上記主張は何れも採用することができないので、取消理由2についても理由がないとして、原告の請求を棄却した。
H22.12.28 知財高裁 平成22(行ケ)10229 審決取消請求事件  
  本件は、名称を「プラスチック成形品の成形方法及び成形品」とする発明についての特許出願が拒絶査定され、これに対して不服の審判を請求したが、特許庁が請求不成立の審決をしたので、その取消しを求めた事案である。  争点は、理由不備、手続違反、相違点の看過、容易想到性判断の誤りである。  知財高裁は、理由不備について、審決は、刊行物1を主引用例として刊行物1記載の発明を認定し、本願発明と当該刊行物1記載の発明とを対比して両者の一致点並びに相違点を認定しているのであるから、刊行物1記載の発明に周知技術を適用して本願発明の相違点に係る構成に相当することが容易であったか否かを検討することによって、結論を導く必要があるが、審決は、相違点の検討において、逆に刊行物1記載の発明を、周知技術に適用し、本願発明の相違点に係る構成に想到することが容易であるとの論理づけをしている。そうすると、審決は、刊行物1記載の発明の内容を確定し、本願発明と刊行物1記載の発明の相違点を認定したところまでは説明しているものの、同相違点に係る本願発明の構成が、当業者において容易に想到し得るか否かについては、何らの説明もしていないことになり、審決書において理由を記載すべきことを定めた特許法157条2項4号に反することになって理由不備の違法があり、その余の取消事由について判断するまでもないとして、審決を取り消した。
H22.12.24 東京地裁 平成21年(ワ)第8813号 損害賠償請求事件  
  本件は、原告が完成させた発明について被告が自己を権利者として実用新案登録の出願をしてその登録を受けた後その実用新案権を一方的に放棄したことにより、上記発明についての原告の特許を受ける権利が侵害されたとして、原告が、被告に対し、主位的に、@不法行為に基づく損害金(逸失利益)1128万円及び遅延損害金の支払を求め、予備的に、A被告による新商品(毒餌誘引用ボックス)の開発、販売は、商人である原告が被告のためにした協力、貢献によるものであったとして、商法512条の報酬請求権に基づき、上記@と同額の報酬金及びその遅延損害金の支払を求めた事案である。本判決は、主位的請求について、原告は、被告に対し、原告発明の構成要件を全て備えた試作品を提示しているものの、原告発明は新規性、進歩性を欠くため特許要件が認められず、原告発明について「特許を受ける権利」の侵害を観念することはできないから、被告による本件実用新案登録出願、放棄が原告の特許を受ける権利を侵害したとすることはできない、予備的請求について、商法512条は、商人がその営業の範囲内の行為をすることを委託されてその行為をした場合において、その委託契約に報酬についての定めがないときは商人は委託者に対し相当の報酬を請求できる趣旨のみならず、委託がない場合であっても、商人がその営業の範囲内の行為を客観的にみて第三者のためにする意思でした場合には、第三者に対してその報酬を請求できるという趣旨に解されるが、後者の場合には、その行為の反射的利益が第三者に及ぶというだけでは足りず、上記意思の認められることが要件とされるというべきである(最高裁昭和43年4月2日第三小法廷判決)ところ、原告は、ネズミの防除を専門とする業者としての立場から、被告製品について様々な意見を述べ、被告も、原告の意見を参考にし、その相当部分を取り入れて、被告製品を開発したことが認められるが、被告製品は、そもそも原告と被告の共同開発品という位置付けだったのであり、原告による上記の様々な意見やアドバイスも、共同開発者としての原告自身の利益を図るために行われたものということができるのであって、必ずしも被告に利益を与える意思で、被告のために行われたものと認めることはできないから、原告は、客観的にみて被告のためにする意思をもって被告製品の開発に関与したと認めることはできず、被告に対し、商法512条に基づく報酬金を請求することはできないとして、原告の請求を全て棄却した。
H22.11.29 知財高裁 平成22(行ケ)10060 審決取消請求事件  
  本件は、「遺体の処理装置」の特許について、原告が不明確、分割不適法、新規性ないし進歩性欠如を理由として無効審判請求をしたが、特許庁から請求不成立の審決を受けたので、その取消しを求めた事案である。  知財高裁は、@原告は本件発明の構成e1が不明確であり、審決にも合理的説明がない旨主張するが、審決は合理的な説明をしており、字句通り形成された構成であれば、どのような形状・材質であってもよいと解されるから、構成e1の記載が不明確であるということはできない。また、構成e2の記載も不明確ということはできず、原告の主張は採用できないとした。A本件発明が案内部材に吸収剤のみが収容されるものであると解したとしても、そのような構成は出願Cの当初明細書等に記載されていると認められ、出願A,Bの当初明細書等にも、案内部材に吸収剤のみが収容される構成が記載されていると認められるので、原告が主張する理由によっては本件発明が分割要件を満たしていないとはいえない。B審決の相違点a,bに関する判断には誤りがあり、本件発明と引用発明の間には審決が認定した相違点a,b以外に構成の相違があることについて特に被告から特段の主張はないし、その余の構成が同一とした審決の認定判断が正当なことは本件発明の請求項と引用発明の記載から明らかであるから、本件発明は引用発明に周知技術や当業者にとっての技術常識を適用することで、容易に想到し得たと言うべきである。とし、本件無効審判請求は理由があるとして、審決を取り消した。
H22.10.13 知財高裁 平成22(行ケ)10074 審決取消請求事件  
  本件は、「背骨曲がりズレ補整補助器具」の特許出願について、拒絶査定不服審判請求をしたところ、特許庁から当業者において出願前に頒布された刊行物に基づいて容易に発明することができたとして請求不成立の審決を受けたので、その取消しを求めた事案である。  知財高裁は、原告は本願発明の補整補助器具と引用発明の背伸ばし具とは、構造も材質も、形状も、固さも、高さも全く異なるものであるし、長時間使用する性格の有無や異なる大きさの器具を用意して順次使用する点などが異なると主張するが、本願発明の特許請求の範囲には、器具の材質や硬さは記載されておらず、形状も高さ、長さ及び横幅並びに面取りした四角形ないし円を有するものであることが特定されているに過ぎず、そこには本願発明に係る補整補助器具が長時間使用する性格のものを窺わせる記載や、大きさの異なる器具を複数用意して順次使用する旨の記載はないから、原告の主張は、特許請求の範囲に記載のない事項に基づいて、本願発明と引用発明の一致点及び相違点に係る審決の認定の誤りを主張するものであって、失当である等とし、原告の全ての主張は理由がないとして請求を棄却した。
H22.9.29 知財高裁 平成22(行ケ)10067 審決等取消請求事件  
  本件は、「顔写真付きカレンダー」の特許出願について、進歩性があるとして拒絶査定不服審判請求をしたが、特許庁から請求不成立の審決を受けたので、その取消しを求めた事案である。  知財高裁は、本願発明の請求項1や発明の詳細な説明には、カレンダー数字等をどのような形で準備するかに関する記載がないから、本願発明についての原告の、カレンダー数字等を機械の背景画像として内蔵する旨の取消事由は採用できないとし、原告の、引用例には背景画像の入力技術が記載されておらず、技術書として未完であるから引用発明にはならない等との取消事由は、シール作製装置に背景画像を入力することは当業者であれば適宜なし得る事項であるから、未完成な発明とはいえない等として、採用できないとした。また、審決が、引用発明と本願発明との相違点を、顔画像と組み合わせてシールに印刷する他の画像が、本願発明では「カレンダー数字等からなる画像」と特定されているのに対し、引用発明では「任意の物品から選択される画像」である点としたことに誤りはないとし、カレンダー数字等の画像と顔画像とを組み合わせるという周知技術を引用発明に適用し、引用発明の「任意の物品から選択される画像」を「カレンダー数字等からなる画像」に特定して、顔画像とカレンダー数字等とを1枚のシールに印刷するようにすることは当業者であれば容易に想到し得ると認められ、審決の判断に誤りはないとした。更に、当業者は単数である等としたことについては、当業者に単複の区別はない等とし、原告の全ての主張は理由がないとして請求を棄却した。
H22.8.31 知財高裁 平成21(行ケ)10416 審決取消請求事件  
  本件は、「機器の電装品検査装置」とする特許発明について、原告が本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明であるとして無効審判を請求し、特許庁が「本件審判の請求は成り立たない」とした審決の取消しを求めた事案である。  知財高裁は、「次のスイッチが操作されるまで」の意味について、刊行物の発明は、個別のスイッチを押すと、押している間、検査運転が行われ、離せば検査運転が停止するものである。そうすると、審決が、本件発明では、検査運転が、次のスイッチが操作されるまで実行されるのに対し、刊行物の発明では、個別のスイッチを押せばオフするものである点を相違点として認定し、本件発明は、刊行物の発明であるということはできず、本件特許は特許法29条1項3号の規定に違反してされたものではないとした判断に誤りはないとして、原告の請求を棄却した。
H22.7.28 知財高裁 平成21(行ケ)10343 審決取消請求事件  
  本件は、「リチウム電池用高電圧挿入化合物」の特許出願について、拒絶査定不服審判請求をし、その中でさらに特許請求の範囲の変更を内容とす2回目の補正をしたが、特許庁が補正を却下した上、引用文献に記載された発明と同一であるとして請求不成立の審決をしたので、その取消しを求めた事案である。  知財高裁は、本願明細書で開示された発明は、補正発明に係るリチウム挿入化合物を正極材に用いたリチウム二次電池において、従前とは異なる高電圧であるLi/Li+に対して4.5V以上の電圧を達成した点にその技術的意義があるものと解されるが、その要点の一つである「Li/Li+に対して4.5V以上の電圧を達成した点」の正確な定義ないし測定法の詳細は、本願明細書の記載によっても明らかでなく、そうすると審決の引用発明の内容に係る認定に誤りがあるとはいえないとし、原告の主張は全て採用することができないとして、原告の請求を棄却した。
H22.6.29 知財高裁 平成21(行ケ)10222 審決取消請求事件  
  本件は、「情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム」の国際特許出願について、拒絶査定不服審判を請求したが、特許法36条4項1号及び同条6項2号に規定する明確性及び実施可能性の各要件を満たしていないので特許を受けることができないとして、請求不成立の審決を受けたので、その取消しを求めた事案である。  知財高裁は、@被告が明確でないと主張する「発明を展開している度合いを示す」という記載は、「発明を展開している度合いを示す発明展開度」との請求項の記載を全体として解釈すれば、各用語の対応関係から、この部分は本件独自の用語である「発明展開度」を、単に分かり易く言い換えて説明しているにすぎないと認めるのが自然で、「発明を展開している度合いを示す」という記載のみを取り出して、それが不明確であるということは適切でない等と判示して被告の主張は採用できないとし、A本願明細書には「請求項数」と「カテゴリー展開数」の2変数だけから発明展開度を計算する具体例の記載はないが、実施例の発明展開度の算出式は例示に過ぎず、本願発明では、複数の変数を組み合わせる具体的な掲載方法には限定がない以上、本願明細書に記載されている実施例が、「ネストレベルの深さ」を用いる3変数の実施例のみであったとしても、2変数だけからなる発明展開度が算出不可能であるということはできない等として本願発明が実施可能であることは明らかであると判示し、審決を取り消すこととした。
H22.5.27 知財高裁 平成21(行ケ)10361 審決取消請求事件件  
  本件は、「耐油汚れの評価方法」の特許出願について、拒絶査定不服審判を請求し、同時に補正をしたところ、引用刊行物Aに記載された発明及び引用刊行物B、Cの記載に基づき当業者が容易になし得たものであるとして「本件審判の請求は成り立たない。」との審決を受けたので、その取り消しを求めた事案である。  知財高裁は、審決は、@本願発明において、擬似油汚れを被評価物の表面に滴下した後、乾燥工程を経由することなく、水を被評価物の表面に滴下しているのに対して、引用発明においては、流下水を滴下した後、乾燥工程を経由している点で両発明は相違すると認定した上、A同相違点に係る本願発明の構成は、引用刊行物Cに、乾燥することなく直ちに水洗して試料の汚れの付着の影響を評価する技術事項が記載されているから、本願発明に到達することができる旨の判断をするが、本願発明は、引用刊行物Aと解決課題や発明の技術思想の異なるものであり、これに、同様に本願発明と解決課題や発明の技術思想の異なる引用刊行物Cの技術事項の一部を適用して本願発明に到達することはないと解すべきであるとし、審決を取り消すこととした。
H22.4.27 知財高裁 平成21(行ケ)10326 審決取消請求事件  
  本件は、「マッサージ機」の特許について、特許請求の範囲の訂正を内容とする訂正審判請求をしたところ、特許請求の範囲を減縮するものでないとして「本件審判の請求は成り立たない。」との審決を受けたので、その取り消しを求めた事案である。  知財高裁は、特許請求の範囲の記載において、「構成」が付加された場合、付加された後の発明の技術的範囲は、付加される前の発明の技術的範囲と比較して縮小するか又は明瞭になることは、説明を要するまでもない。本件においても、訂正前は何ら限定されていなかったものに対して、訂正後には「施療子を移動させた後、操作装置への所定の操作を施すと、その所定の操作が行われたときの前記施療子の位置を基準位置として検出する、マッサージ機において、」との構成を有するものに限定されたのであるから、これに伴って、その技術的範囲が縮小するか又は明瞭になることは当然であるとして、審決が、訂正後の請求項2の発明は、「操作装置への所定の操作を施す場合に『所定操作による基準位置検出に基づく制御』を行うこと」及び「前記操作装置への所定の操作を行わない場合に『一定時間経過による基準位置検出に基づく制御』を行うこと」を択一的に行う発明であり、訂正前の請求項2の発明を減縮したものではないとした点は誤りであるとし、審決を取り消すこととした。
H22.3.31 知財高裁 平成21(行ケ)10247 審決取消請求事件  
  本件は、「先端に画像センサを備えた視界器具の可変方向性」の特許出願について、拒絶査定不服審判請求をしたが、特許庁が引用発明に記載された発明との関係で進歩性を有しないとして請求不成立の審決をしたので、その取り消しを求めた事案である。  知財高裁は、(1) 本願発明の視界方向が可変とされる視界器具は、センサがシャフトの長手方向軸線に対して実質的に平行な画像平面を有しているものであれば足り、これに加えてシャフトの長手方向軸線回りに固定されている必要はない。(2) 本願発明が「センサがシャフトの長手方向軸線に対して平行でかつ回転しないように固定されている」構成に特定されていることを前提とする取消事由は、前提において誤りがあって採用することができない。 (3) 引用発明と引用例2に記載された発明とは、内視鏡先端部に設けた回動機構によって視野方向が可変とされた内視鏡である点で共通しており、また、取得した画像の伝達手段として、光学系を用いる内視鏡、先端部に備えたセンサを用いる内視鏡は何れも周知であり、相互に技術を適用し得るものであるということができるなどと判示し、原告の請求を棄却した。
H22.2.26 知財高裁 平成21(行ケ)10219 審決取消請求事件  
  本件は、「パッケージ用窒素ガス噴射装置」の特許出願について、拒絶査定不服審判請求時の特許請求の範囲の変更等を内容とする手続補正を特許庁が却下した上、引用発明との関係で進歩性を有していないとして請求不成立の審決をしたので、その取り消しを求めた事案である。  知財高裁は、(1) 「本願補正発明の開放口カバーは、水平なプレート状に形成されているが、引用発明のフード16は、水平に対して傾斜した平らな天井壁24と周壁26からなる」点を相違点とすべきであったということができ、取消理由があるが、この相違点は当業者が容易に想到することができたものであるから、結論に影響を及ぼさない。(2)相違点について原告が主張する「スムーズな気体の流れ、乱流を抑制し層流になり易いガスの流れとする」作用効果は、本願明細書に記載されていないので考慮することができないし、作用効果の違いがあるとしても、それをもって格別のものということはできず、容易に想到することができる相違点に係る本願補正発明の構成から当然に予測されるというべきである。(3)本願補正発明の開放口カバーと引用発明のフード16とで格別の違いがあるとは認められず、当業者が容易に想到することができたというべきであって、認定が左右されるものではないなどと判示し、原告の請求を棄却した。
H22.11.30 東京地裁 平成21年(ワ)第7718号 特許権侵害差止等請求事件  
  本件は、「餅」の特許権者である原告が、被告製品を製造、販売及び輸出する行為が本件特許権の侵害に当たるとして、特許法100条1項及び2項に基づき、被告製品の製造、譲渡等の差止め並びに被告製品、その半製品及び被告製品の製造装置の廃棄を求めるとともに、不法行為による損害賠償14億8500万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。  本件発明の構成要件中、「B 載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け」及び「D 焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり、最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成した」を被告製品が充足する否かか、本件発明に無効理由があるか否かが、主要な争点となった。  本判決は、本件明細書の「発明の詳細な説明」の記載から、本件発明の構成要件Bの「載置底面又は平坦上面ではなく・・・」との文言は、切り込み部等を設ける切餅の部位が、「上側表面部の立直側面である側周表面」であることを特定するのみならず、切餅の「載置底面又は平坦上面」には切り込み部等を設けず、「上側表面部の立直側面である側周表面」に切り込み部等を設けることを意味するものと解するのが相当であるとした上で、本件特許の出願過程において、原告は、積極的に「載置底面又は平坦上面ではなく、切餅の側周表面のみ」に切り込みが設けられることを主張していたが、その主張が、拒絶理由通知に係る拒絶理由によって認められなかったため、これを撤回し、主張を改めたものというべきであるから、切餅の上下面である載置底面及び平坦上面に切り込みがあってもなくてもよいことを積極的に主張し、その結果、本件発明について特許すべき旨の審決がされたとの原告の主張は、その前提において失当であるとしてこれを認めず、被告製品においては、その載置底面及び平坦上面に当たる部分に十字状に切り込み部が設けられているから、切餅の載置底面又は平坦上面に切り込み部又は溝部を設けないことを要するものとされる構成要件Bを充足しないというべきであり、被告製品は、本件発明の技術的範囲に属するものとは認められないとして、原告の請求を棄却した。
H22.10.01 東京地裁 平成21年(ワ)第31831号 特許権侵害差止等請求事件事件  
  本件は、座椅子の特許権者である原告が、被告製品は本件特許権を侵害するとして、特許法100条に基づき、被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、不法行為に基づき、逸失利益480万円等の支払を求めた事案である。  本件発明の構成要件は、「座部と前記座部に対して傾倒自在な背部とを備えた座椅子において、前記座部は、座面中央に座面側に向かって次第に拡大する形状の円穴を有するとともに、当該座部の垂直断面において上面側表層カバー部材の直下に円穴の内周面側から座部の外周面側にかけてその長さ方向の中央が高く全体として弧状になるように配設された低反発クッション部材を有することを特徴とする座椅子」、であるところ、本判決は、被告製品の構成要件該当性を全て認めた上で、本件発明と、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された引用発明との対比において、一致点につき、「座部と前記座部に対して傾倒自在な背部とを備えた座椅子において、当該座部の垂直断面において上面側表層カバー部材の直下にクッション部材を有する座椅子」である点、相違点として、本件発明では、座部が「座面中央に座面側に向かって次第に拡大する形状の円穴」を有しており、「クッション部材を座部の垂直断面において上面側表層カバー部材の直下に円穴の内周面側から座部の外周面側にかけてその長さ方向の中央が高く全体として弧状になるように配設している」のに対し、引用発明では、木製ベース板に貫通孔があって、その貫通孔以外の部分に成形クッション材を上方突出状態に付設しているものの成形クッション材の上方に位置する上面側表層カバー部材及びクッション部材に明確な「穴」が存在するとまでは認められない点、及び、座部の表面張材の直下に張設されるクッション部材につき、本件発明では低反発性のものに限定されているのに対して、引用発明では、そのような性質のものであるか否かが明らかでない点、が認められるものの、相違点にかかる構成は、引用発明に、周知の技術的事項(座椅子の座部が座面中央に座面側に向かって次第に拡大する形状の円穴を設けること、椅子用のクッション材として上層に低反発クッション部材を配設すること)を組み合わせることにより、当業者が容易に想到できたものと認められ、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであり、特許法104条の3第1項により原告は被告に対し本件特許権を行使することができないとして、原告の請求を棄却した。
H22.9.22 知財高裁 平成22年(行コ)第10002号 特許料納付書却下処分取消請求控訴事件  
  件は、控訴人が、特許料の納付に関する管理事務の受託者であるCPAの過失により、特許料の追納期間の経過後に特許料納付書を提出して特許料及び割増特許料の納付手続をしたところ、特許庁長官が同特許料納付書を却下する手続却下の処分をしたため、被控訴人に対し、追納期間内に特許料及び割増特許料を納付することができなかったことについて、特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があるとして、本件却下処分の取消しを求めたが、天災地変、あるいはこれに準ずる社会的に重大な事象の発生により、通常の注意力を有する当事者が万全の注意を払っても、なお追納期間内に特許料を納付することができなかったような理由があるとは認められないとして、控訴人の請求を棄却した原判決に対して控訴した事案である。
 本判決は、特許法112条の2第1項の立法理由は、特許権の管理は特許権者の自己責任の下で行われるべきものであること、失効した特許権の回復を無制限に認めると第三者に過大な監視負担をかけることとなること等にあるから、同条項所定の「その責めに帰することができない理由」とは、通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により追納期間内に納付できなかった場合をいうものと解するのが相当であり、通常の注意力を有する当事者が「万全の注意」を払ってもなお追納期間内に特許料を納付することができなかったような場合に限らない一方、当事者から委託を受けた者にその責めに帰することができない理由があるといえない場合には、特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」には当たらないと解すべきであるとした。そして、控訴人は、本件特許料等の納付等の手続をCPAに委託し、CPAにおいて担当者の病気休暇等の事情もあって業務が滞った結果、本件特許料等の追納期限を経過したものであり、CPAに従業員欠勤の際の業務停滞防止体制の不備という過失があることは、控訴人の自認するところであるから、本件において本件特許料等の納付ができなかったことは、通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により追納期間内に納付できなかった場合に当たるということはできず、控訴人の本訴請求に理由がないとして、控訴を棄却した。
H22.8.31 大阪地裁 平成21年(ワ)第2097号 特許権侵害差止等請求事件  
  本件は、発明の名称を「研磨布および平面研磨加工方法」とする特許権の専用実施権者である原告が、被告による研磨布を製造、譲渡する等の行為が原告の専用実施権を侵害するとして、被告に対し、特許法100条1項及び2項に基づき、研磨布の製造、譲渡の差止めと廃棄を求めるとともに、不法行為に基づき、損害金4億9400万円等の支払を求めた事案である。
 本判決は、本件特許発明中の構成要件「前記表面層を、セルを開口させずに層内に内包するように表面が平坦な非発泡のスキン層で覆われている独立気泡フォームで形成し」に関し、「セルを開口させずに」の意義について、その表現ぶりからは、何らかの方法で開口「させ」るという製造工程を前提として、これをしないでおくということを意味していると解すべきように思われるが、そもそも本件特許発明が物の製造方法の発明ではなく、物の発明であることに加え、何らかの製造工程を前提とするならば、特許請求の範囲に開口「させ」る主体やその方法についての特定が必要となるはずだが、これを示唆する記載は全くないのだから、「開口させずに」との表現だけを独立した構成として理解し、「開口させる」という製造工程を省略した意味に解するのは相当ではなく、「セルを開口させずに」との構成は「層内に内包するように」との記載と一体となって、「スキン層で覆われている」という記載を修飾するもの、すなわち、研磨布の表面層にその層内に内包されたセルに通じる穴が開いていないという意味に理解すべきであるとし、また、「独立気泡フォーム」とは、プラスチックを発泡固化したものであって、その気泡のほとんどが、壁によってすべて囲まれ、したがって他の気泡とは連結されていないものを指すものとした。そして、被告製品には、少なくとも表面層に層内に内包されたセルに通水可能な穴が開いていることが認められ、すなわち、被告製品の製造過程において生成するセルは、その構造を詳細に認定できないとしても、少なくとも外部に「開口」していることは明らかに認められるばかりでなく、そのセルは、壁によってすべて囲まれ他のセルと連結されていないものがほとんどであるとは認められないから、このようなセルを含むフォームを「独立気泡フォーム」ということはできないため、被告製品は、本件特許発明の上記構成要件を充足するとは認められず、本件特許発明の技術的範囲に属するとは認められないとし、原告の請求を全て棄却した。
H22.7.8 東京地裁 平成18年(ワ)第27879号 補償金請求事件  
  本件は、被告の従業員であった原告が、「記録光学系」に関する本件発明は原告が単独で発明した職務発明であり、その特許を受ける権利を被告に承継させたとして、平成16年改正前の特許法35条3項、4項に基づき、被告に対し、上記特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の支払を求めた事案である。
 本件の争点は、@被告取扱規程の法的拘束力により、規程額を超えて対価を請求することができないか(争点1)、A本件発明は、原告の単独発明か(争点2)、B本件発明により被告が受けるべき利益の算定方法、代替技術の有無、包括クロスライセンス契約により得た利益の額、自己実施による利益の額(争点3)、C本件発明について被告が貢献した程度(争点4)、D特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の額(争点5)、E消滅時効の成否(争点6)である。
 本判決は、争点1につき、被告取扱規程により定められた対価の額が特許法旧35条4項の規定に従って定められる対価の額に満たないときは、同条3項の規定に基づき、その不足する額に相当する対価の支払を求めることができるとし、争点2につき、本件発明の技術的思想及びその着想、具体化の過程を詳細に検討した上で、本件特許の特許公報の「発明者」欄に発明者として記載されている原告及びB1の共同発明であるとし、争点3につき、特許法旧35条4項の「発明により使用者等が受けるべき利益」とは、使用者等が従業者等から職務発明についての特許を受ける権利を承継し、当該発明の実施を排他的に独占し得る地位を取得することによって受けることが客観的に見込まれる利益(独占の利益)をいうものと解され、具体的には、@第三者との間のライセンス契約の実施料収入、A第三者による当該発明の実施を禁止する特許権の効力に基づいて得られた自己実施の利などを基に認定することができ、さらに、包括クロスライセンス契約において本件発明により得た利益の額は、被告の全ライセンシーによる本件発明の実施品の譲渡価格に、本件発明の実施料率(「標準包括ライセンス料率」×本件発明の寄与度)を乗じて算定するのが相当であり、寄与度については、その特許発明の技術内容、相手方の実施割合、代替技術の存在及びその実施割合等を総合的に考慮して決するのが相当であるとし、争点4につき、特許法旧35条4項の「使用者等が貢献した程度」には、使用者等が「その発明がされるについて」貢献した事情のほか、特許の取得・維持やライセンス契約の締結に要した労力や費用、あるいは、特許発明の実施品に係る事業が成功するに至った一切の要因・事情等を、使用者等がその発明により利益を受けるについて貢献した一切の事情として考慮し得るものと解するのが相当であるとして、本件発明に関する被告の貢献度は97%と認めるのが相当であるとし、争点5につき、共同発明者である原告及びB1間の寄与割合は、原告が40%、B1が60%と認定し、原告の本件発明に係る相当の対価の額は、合計277万4415円であると認定し、争点6につき、被告が表彰による賞金として50万円を原告に対して支払ったことは、民法147条3号の時効中断事由である債務の「承認」に該当するとして消滅時効の完成を否定し、228万4251円及びこれに対する平成8年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で原告の請求を認容した。
H22.5.6 大阪地裁 平成20年(ワ)第17170号、平成21年(ワ)第2608号 損害賠償請求事件  
  本件は、原告会社及びその代表取締役である原告P1が、被告会社の代表取締役である被告P2の原告会社に対する特許権侵害に基づく差止め及び損害賠償請求訴訟の提起は、被告P2が、原告会社による発明の公然実施を知った上で出願した特許に基づくもので、特許に無効理由があることを知って提起したものであり、その結果、原告会社において1億0954万9036円の損害を受け、原告P1において2000万円の精神的損害を受けたとして、被告会社、被告P2及び被告らの前訴訴訟代理人P3らに損害賠償金の支払を求めた事案である。
 本判決は、被告P2らが、原告会社に被告製品の宣伝・販売活動を依頼するに際し、既に本件特許2を含む一連の発明について特許出願済みであったと誤解していた可能性があるところ、訴えの提起が不法行為を構成するか否かの判断基準時は提訴の時点であり、審理の結果、自己の主張する権利が事実的、法律的根拠を欠くことが明らかになったからといって、直ちに訴えを取り下げる義務までを認めることはできず、また、被告P2が本件特許権2に係る訴えを継続させたことを非難することはできず、被告P2が不当提訴による損害賠償債務を負わない以上、被告会社や被告P3も本件前訴の提起及びその継続による損害賠償債務を負うことはないとして、原告らの請求をいずれも棄却した。
H22.4.14 知財高裁 平成20年(ネ)第10083号 損害賠償請求控訴事件  
  本件は、「エコナクッキングオイル」等の商品名で製造販売した食用油の製造方法について、控訴人が「酵素によるエステル化方法」とする特許権を侵害するものであるとして、民法709条に基づく損害賠償を主位的に、民法703条に基づく不当利得返還を予備的に請求した事案である。
 原判決は、本件発明は引用発明と同一であり、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるとして、控訴人の請求を棄却したが、本判決は、本件発明に係る技術的事項は、原出願明細書に記載されたものでないので、本件特許出願は、改正前44条1項に規定する適法な分割出願であるということはできず、原出願公開公報に記載された発明に対して進歩性を有しないから、特許法29条2項の規定により無効とされるべきものであり、さらに、訂正後の特許出願についても、独立特許要件を具備せず、本件訂正によって本件特許の無効理由が解消されるものではないとして、控訴を棄却した。
H22.3.24 知財高裁 平成20年(ネ)第10085号 特許権侵害差止等請求控訴事件  
  本件は、インターネットに接続されたパソコンのユーザーに対して当該パソコンのウェブブラウザのアドレスバーに任意の文字を記述することで目的のウェブページのURLを取得させ、当該ウェブページへのアクセスを提供するというサービスの提供行為が、「インターネットサーバーのアクセス管理およびモニタシステム」についての控訴人の特許権を侵害するとして、差止め及び損害賠償請求が求めた事案で、進歩性欠如により特許が無効であるとして請求棄却した原判決を変更して、控訴人の請求を一部認容した。
 本判決は、被控訴人方法の構成要件該当性、本件発明の実施可能要件及びサポート要件充足性を肯定した上で、原審で否定された進歩性について、本件発明は、一貫してインターネットにおけるアクセスを念頭に置いており、ローカルエリア・ネットワーク内のサーバーとのアクセスを実現するためのフラグシップ・ホストに相当するサーバーの存在及びその機能としての「リダイレクト」によって、その技術的課題を解決しようとするものではなく、本件発明の存在を知らない当業者がこのような引用例の記載に接したとしても、フラグシップ・ホストを必要としないインターネットのアクセス方法において、このような「リダイレクト」の構成を採用して、本件発明のディレクトリサーバーによる「REDIRECTコマンド」に係る構成とするように動機付けられるということはできず、引用例において、フラグシップ・ホストの機能から離れて「リダイレクト」の機能を採用しようと動機付ける記載も存在しないなどとして進歩性を肯定した。
 また、侵害主体性について、本件発明の実施主体は、インターネットよりなるコンピュータネットワークのユーザーであるクライアントではなく、被控訴人方法の提供行為を行う被控訴人であるとし、損害額について、本件発明の実施者は、アクセスの提供自体又はアクセスの利用自体によって金銭を受けるものではなく、アクセス方法によって検索される対象となり得るキーワードの登録者が支払う登録料金を受領するものである等の事情から、控訴人の損害額を立証するために必要な事実を立証することは、その性質上極めて困難であるとしつつ、諸事情を総合的に考慮し、控訴人の損害額を1400万円を下らないと認定した。
H22.2.24 知財高裁 平成21年(ネ)第10017号 特許を受ける権利の確認等請求控訴事件  
  本件は、従業者Aの現会社が出願し特許庁において審査中の本件発明について、従業者Aの前会社が現会社に対し、本件 発明は前会社の従業者であるB等がその職務として発明したものであり、前会社が就業規則等に基づきB等従業者から特許を 受ける権利の譲渡を受けたとして、同権利を有することの確認を求めた事案である。 原審は、@本件発明の発明者は、平成16年1月15日に前会社を退職してその後現会社に入社したAのみであり、現会社 は、Aから本件発明について特許を受ける権利の譲渡を受けて平成16年6月14日に特許出願をした、A特許を受ける権利 の譲渡の対抗要件は出願である(特許法34条1項)ところ、現会社は対抗要件を具備しており、かつ、現会社は背信的悪意 者とはいえないなどとして前会社の請求を棄却した。 しかし、本判決は、本件発明の発明者はA1名でありB他は発明者ではないとしたものの、本件特許を受ける権利は本件発 明の完成と同時に前会社に承継された、本件特許を受ける権利は前会社によって放棄されたともAに返還されたとも認められ ない、本件発明は前会社のもとで平成15年8月23日に完成し現会社においてそのままの形で平成16年6月14日に特許 出願がされたということができるところ、Aは、前会社との秘密保持契約に違反して、本件発明に関する秘密を現会社に開示 したということができ、現会社の代表者は、平成16年6月14日までの間に現会社がAから本件発明の特許を受ける権利の 譲渡を受けた際、同発明について特許出願がされていないこと及び本件発明はAが前会社の従業員としてなしたものであるこ とを知ったというべきであると認定した。そして、現会社の代表者は、Aから本件発明について開示を受けてそのまま特許出 願しかつ製品化することは、前会社の秘密を取得して現会社がそれを営業に用いることになると認識していたというべきであ り、さらに、本件発明はAが前会社の従業員としてなしたものであることからすると、通常は、前会社に承継されているであ ろうことも認識していたというべきであるから、現会社の特許出願は、前会社において職務発明としてされた前会社の秘密で ある本件発明を取得して、そのことを知りながらそのまま出願したものと評価することができ、現会社は「背信的悪意者」に 当たり、先に特許出願したからといって、それをもって前会社に対抗することができるとするのは、信義誠実の原則に反して 許されず、前会社は、本件特許を受ける権利の承継を現会社に対抗することができると判示し、本訴請求は理由があるとして、 原判決を取り消し、控訴を認容した。
H22.1.29 知財高裁 平成21(行ケ)10174 審決取消請求事件  
  本件は、名称を「帯状貝係止具とロール状貝係止具」とする発明につき特許出願したところ、拒絶査定を受けたので、これ を不服として審判請求をしたが、特許庁が請求不成立の審決をしたので、その取り消しを求めた事案である。
  争点は、本願発明は、引用発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたか否かである。
  知財高裁は、引用発明2を引用発明1に適用して本願発明の構成と成すことは当業者が容易に相当することができると言うべ きであるという点について、原告は本願発明の特有の効果について主張するが、この主張は自動装填装置の構成を前提とするも ので、本願発明は自動装填装置を用いることはもとより、その構造について何ら特定するものではないので、原告が主張する効 果を本願発明の進歩性の判断に当って考慮することはできない。等と判示し、原告の主張は全て理由がないとして、原告の請求 を棄却した。
H22.1.25 知財高裁 平成21年(ネ)第10052号 特許権侵害差止等請求控訴事件  
  本件は、原審において、本件特許発明の構成要件を充足しないとして請求が棄却された「ドリップバッグ」の特許権者 が、控訴審において、被告製品が本件特許発明の文言侵害に該当しないとしても均等侵害に該当するとの主張を追加し、さ らに本件特許発明の間接侵害(特許法101条1、2号)に該当するとして、ドリップバッグ製造用シートの製造販売等の 差止めと廃棄を追加した事案である。 本判決は、ドリップバッグの掛止部材を構成する舌片部に関し、本件特許発明の構成要件にいう「舌片部」は、周縁部と連 続しその内側に形成されるアーム部の、さらにその内側に形成されるものであり、アーム部が周縁部と連続する端のもう一 方のアーム部の端と連続しており、袋本体にも貼着し得るとともに、周縁部を袋本体に貼着した場合にはアーム部と共に引 き起こしてカップ側壁にかけることが可能な部材をいい、用語の通常の意味からして、原判決も判示するとおり、「舌のか けら」様の形状を有するものであることが明らかであるとし、被告製品は本件特許発明における「舌片部」を備えるものと はいえず、本件特許発明の構成要件を充足せず、また、被告製品の掛止部材の一体構造により本件特許発明にいう「舌片部」 を備えるものでないこと、及び、この一体構造がアーム部に相当する把手部の内側のみにあるとはいえないこと、という控 訴人の主張する相違点は、いずれも本件特許発明の本質的部分において相違するものであり、均等侵害についての控訴人の 主張は理由がなく、さらに、ドリップバッグ製造用シートには、被告製品と同一の掛止部材が貼着されているところ、この 掛止部材の一体構造は、本件特許発明の「舌片部」に相当せず、本件特許発明の技術的範囲に属するものでなく、ドリップ バッグ製造用シートは、本件特許発明に係る「その物の生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)・「その物の生産に 用いる物」(同2号)ということはできないから、その製造販売差止等請求も理由がないとして、控訴を棄却した。
H21.12.28 知財高裁 平成21(行ケ)10199 審決取消請求事件  
  本件は、名称を「抜脱阻止機能と雨水浸入阻止機能と破壊阻止機能とを有するルーパー羽根及びそれらの機能の付与方法」 とする発明につき特許出願したところ、拒絶査定を受けたので、これを不服として審判請求をしたが、特許庁が請求不成立の審 決をしたので、その取り消しを求めた事案である。
 争点は、本願発明は、引用発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたか否かである。
 知財高裁は、(1)本願発明と引用発明は、接触部が金属フレームである点で一致すると認定されるべきであるとの原告の主張 は、審決の結論に影響を与える誤りを指摘するものではなくその主張自体失当であるのみならず、同構成を本願発明の相違点と した審決の認定に誤りはない。 (2)取付手段が本願発明では「挿着」、引用発明では「固着」で相違するにも拘らず、「挿着」 と「固着」を一致するとした審決の認定には、相違点を看過した違法があるとの原告の主張は、本願明細書及び引用例の記載に 照らすならば引用発明のルーパーの支持金具への取付態様は「挿しこんで着ける」ことを指すと解するのが合理的でため、本願 発明の「挿着」と同義と理解するのが相当であり、取付手段が「挿着」である点において一致するとした審決に、相違点の看過 はない。等と判示し、原告の主張は全て理由がないとして、原告の請求を棄却した。
H21.12.24 大阪地裁 平成20年(ワ)第10854号 特許権侵害差止等請求事件  
  本件は、「レベル・センサ」の特許権者が、被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、不当利得金の 支払等を求め、独占的通常実施権者も不法行為による損害賠償金の支払等を求めた事案である。裁判所は、争点の1つであ る「前記平衡重りの重量は、…該センサの全重量の少なくとも30%であり」との特許請求の範囲の記載が旧特許法36条 5項1号(明細書のサポート要件)に違反するかについて、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発 明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳 細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆 がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討し て判断すべきものであるとした上で、上記特許請求の範囲の記載は、要するに、平衡重りの重量を、センサが空気によって 囲まれている時に、センサ全重量の少なくとも30%とするとの数値限定をしたものであるところ、それにより、動作環境 下で強い水流や液面上の浮遊物から受ける大きな外力を受けても、概ね主水平位置を安定的に維持し、もってスイッチが確 実に作動するという本件特許発明の効果を奏することになるとの技術的意義に関して、なにゆえ平衡重りそれ自体の絶対的 な重量ではなく、センサ全体の重量との関係での相対的な重量比で定められるのかについて、発明の詳細な説明に何ら開示 されておらず、また、平衡重りの重量のセンサ全体の重量に対する比率を数値限定することが、マイクロスイッチを確実に 停止させる効果を奏するという技術的意義を有する旨の技術常識の存在を認めることはできない等とし、本件特許は、旧特 許法36条5項1号の規定に違反してなされたものであり、特許法104条の3第1項により、特許権者は、被告に対し、 本件特許権に基づく権利を行使することはできず、また、そうである以上、独占的通常実施権者も、被告に対し、不法行為 による損害賠償請求権を行使することはできないと判示して、両者の請求をいずれも棄却した。
H21.11.30 知財高裁 平成21(行ケ)10105 審決取消請求事件  
  本件は、名称を「外観検査装置の集中管理システム」とする発明につき特許出願したところ、拒絶査定を受けたので、 これを不服として審判請求をし、補正を行ったが、特許庁から請求不成立の審決を受けたことから、その取消しを求めた 事案である。
  争点は、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたか否かである。
 知財高裁は、(1)本願発明の各外観検査装置は、単独で自動検査を完了できるものであり相互に対等であるとの原告の主 張に対し、本願明細書にはそのような記載はなく、また各外観検査装置が同一基板に対してそれぞれ別の検査を行うもの であってはならないとの記載もないので、原告の主張は採用できない。(2)引用発明のサーバは本願発明の管理装置とは機 能が異なり、本願発明の管理装置に当らないとの原告の主張に対し、引用発明のサーバは外観検査装置等で得られた測定デ ータを一括して管理するものであるから、本願発明の管理装置に該当するものと認められる。等と判示し、原告の主張は全 て理由がないとして、原告の請求を棄却した。
H21.11.12 大阪地裁 平成20年(ワ)第4754号 特許権損害賠償請求事件  
  本件は、発明の名称を「X線異物検査装置」とする本件特許権1及び発明の名称を「放射線検査装置」とする本件特許権2を有する被告が、本件特許権1及び本件特許権2に基づいて、原告に対し、原告製品の製造販売の差止及び損害賠償として1億円の支払を求める訴え(別件訴訟)を提起したが、被告は、別件訴訟の第3回弁論準備手続期日において、本件特許権2に係る請求をいずれも放棄したところ、原告が、別件訴訟を提起した被告の行為が不法行為に該当するとして、民法709条に基づき、6342万3975円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。
 本判決は、民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合に、同訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(権利等)が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁判所昭和60年(オ)第122号同63年1月26日)とし、本件において、本件特許権1に基づく別件訴訟は未だ係属中であり、被告が敗訴の確定判決を受けたわけではなく、他方、本件特許権2に基づく別件訴訟については、被告が本件特許権2に係る請求を放棄したことにより、当該請求に係る部分については敗訴の確定判決を受けたものと同一の効力が生じているが、かかる効力は、本件特許権2に係る請求権の存否について及ぶにすぎず、請求の放棄があったからといって、直ちに本件特許権2に係る被告の主張が事実的、法律的根拠を欠くものであったということにはならないから、別件訴訟における訴訟物たる権利等に係る被告の主張につき、事実的、法律的根拠を欠くことについて、提訴者である被告がそのことを知り又は通常人(別件訴訟のように技術的事項が問題となる事件である以上、当業者であることが想定される)であれば容易にそのことを知り得たかどうかという観点から、当該訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるかどうかを判断するとした上で、本件特許権1、2いずれに基づく別件訴訟の提起も、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠き、違法であるとは認めらないとし、原告の請求を棄却した。
H21.10.28 知財高裁 平成21(行ケ)10011 特許審決取消請求事件  
  本件は、名称を「合成樹脂製壜体」とする発明につき特許出願したところ、拒絶理由通知を受けたので手続補正書を提出したが、拒絶査定を受けたので、これを不服として審判請求をしたが、特許庁から請求不成立の審決を受けたことから、その取消しを求めた事案である。
 争点は、本願発明は、引用例記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたか否かである。知財高裁は、審決における引用例の認定に誤りはなく、また原告が、審決に誤りがあると主張する点は、何れも理由が ないとして、原告の請求を棄却した。
H21.10.23 知財高裁 平成21年(ラ)第10004号 特許権移送申立却下決定に対する抗告事件  
  本件は、原被告のいずれもが静岡地裁管内の静岡市に本店所在地を有する基本事件の被告である抗告人が、管轄違い又は遅滞を避ける等のために必要があるとして、民訴法16条1項、20条2項・17条に基づいて東京地方裁判所への移送を申し立てたところ、原審の大阪地裁は、被告大阪営業所は民訴法5条9号の「不法行為地」に該当し、また東京地裁に移送しなければ訴訟の著しい遅滞又は当事者間の衡平を図ることができないとはいえない等として、被告の移送申立てを却下したので、これに不服の申立人が抗告を申し立てた事案である。争点は、@被告営業所(大阪市)を「不法行為地」と認定することの当否、及び、A遅滞を避ける等のため東京地裁へ移送をする必要があるか(民訴法20条2項・17条)、であった。知財高裁は、本件訴えは、民訴法4条1項、6条1項1号により東京地裁が土地管轄権を有すると認められるものの、そのほかに、被告が大阪地裁の管轄する大阪市等において製品の販売等をする行為が原告(相手方)に対する不法行為を構成する等とするものであるから、不法行為地の裁判籍として、民訴法5条9号、6条1項2号により大阪地裁も土地管轄権を有するので、東京地裁と大阪地裁の双方が土地管轄権を有することになるが、民訴法20条2項は、特許権等に関する訴えについても、遅滞を避けるための移送を定めた同法17条の適用を肯定しているから、両地裁間の管轄の調整は同法17条の適用により決すべきこととなるとした上で、原被告間における経済 的な格差は共に十分な経済力を有する当事者間における相対的なものにすぎず、抗告人及び相手方の事業活動の中心地が静岡にあるという事情も東京地裁への移送の必要性を基礎付けるものでなく、本件において東京地方裁判所に移送を認めなければ当事者間の衡平を図ることができないということはできないとして、本件移送の申立てを却下した。
H21.9.17 知財高裁 平成20(行ケ)10423 特許審決取消請求事件  
  本件は、名称を「無反跳非熱核融合反応生成方法及び無反跳非熱核融合エネルギー発生装置」とする発明につき特許出願したところ、拒絶査定を受けたので、これを不服として審判請求をしたが、特許庁から請求不成立の審決を受けたことから、その取消しを求めた事案である。
 争点は、請求項1〜6に係る発明が平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項又は同条6項2号の規定する実施可能要件を満たすか等である。知財高裁は、当該発明が実施可能であることは、出願人が特許庁長官に対し立証する責任があると解されるが、実験報告書(甲7)には、重水素イオンが本願各発明の構成である「パルス状ガス放電プラズマ」で加速されるものであるとの記載や、液体金属リチウムが「電極」であるとの記載がない。また、実験報告書(甲7)における実験ではα粒子を計測しているにとどまり、中性子nについては何ら測定しておらず、その実験の内容が本願の請求項1の「液体リチウムまたはそれに溶融する核融合物質を混入させた核融合燃料で構成される電極表面に、パルス状ガス放電プラズマで加速した重水素イオンを注入して、高密度の液体イオン電子プラズマを生成」したものとは認めるに足りず、また「無反跳非熱核融合反応」の発生を認めるにも足りないので、本願には特許法旧36条4項(実施可能要件)に違反する不備があるとして、原告の請求を棄却した。
H21.9.3 大阪地裁 平成20年(ワ)第12516号 特許権損害賠償請求事件  
  本件は、発明の名称を「射撃遊戯装置」とする特許権を有する原告が、被告による懸垂式シューティングライド「空中サーカ スアドベンチャー」の製造販売が同特許権を侵害するとして、被告に対し、不法行為に基づき、損害賠償金7000万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。本件特許発明は、情景が異なる複数のショーセットを有し、各ショーセットを通過するように空中軌道を配設し、該空中軌道に、走行する乗物を吊持させ、空中にて走行する該乗物から各ショーセットの射撃対象物に向かって射撃する射撃銃が該乗物に設けられていることを特徴とする射撃遊戯装置であるところ、進歩性欠如の無効理由の有無及び被告物件の構成要件該当性等が争われた。本判決は、本件特許出願前に頒布された乙3公報には、「前のゾーンから次のゾーンの演出が見えないように独立した複数のゾーンは異なる趣向によって演出されており、各ゾーンを通過するように配設された移動経路上を走行する搬器に各ゾーンの標的に向って射撃する射撃装置が設けられている射撃遊戯装置」(乙3発明)が記載されているものと認められ、本件特許発明と乙3発明とは、本件特許発明の乗物が「空中軌道に吊持されて空中を走行する乗物」であるのに対し、乙3発明の搬器(乗物)は「空中軌道に吊持されて空中を走行する乗物」ではない点で相違するが、乙3公報に接した当業者は、搬器として宇宙船を採用する場合に、宇宙空間を浮遊しながら移動するという実際の移動方法に近い感覚を利用者に体験させようと考え、上記周知技術を考慮して「空中軌道に吊持されて走行する乗物」として構成することは通常着想することができる範囲内のものであり、乙3発明の目的効果にも沿うものであって、乙3公報中にこれを阻害する記載や示唆もないことからすれば、乙3発明を具体化するにあたって、プレーゾーンの演出内容に適した搬器として「空中軌道に吊持されて走行する乗物」を選択することは、技術の具体的適用に伴って適宜容易になし得る程度の設計的事項であるといえ、しかも、このような構成を採用したことにより、予想外の格別顕著な作用効果を奏するものでもないから、本件特許発明と乙3発明との相違点は、当業者であれば、乙3発明に周知技術を適用することにより、容易に想到することができたとして、本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものであり、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求を棄却した。
H21.8.31 知財高裁 平成21(行ケ)10051 意匠審決取消請求事件  
  意匠に係る物品「光学部品シート転写成形ロール」の原告意匠出願に対する拒絶査定不服審判の請求不成立の審決の取消を求めた事案で、審決がロール外周の凹部相互の配置関係を対比の対象とせず、全体の集合を対象により類似の結論を導いた点について、専ら機能的な理由により凹部の配置が制約を受け、特定の配置、間隔しか選択できないような事情が存在するような場合には凹部の特定の配置等に特徴があったとしても考慮すべきできはないと言うことができるが、審決ではそうした特段の事情の主張、立証がなされていないと指摘し、凹部相互の配置関係を対象とした場合は引用意匠に対して特有の美感を生じさせる非類似の意匠であるとして審決を取り消した。
H21.8.25 知財高裁 平成20(行ケ)10315 特許審決取消請求事件  
  本件は、原告が名称を「リニアモータ式チャック」とする本願発明に対する拒絶査定不服審判の請求について特許庁が同請求は成り立たないとした本件審決の取消しを求めた事案である。  主たる争点は、本願発明が引用発明又は公知技術1及び公知技術2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたか否かである。知財高裁は、チャックを特定リニアモータで駆動する構成とすることで奏される結合効果は、特定リニアモータ自体の作用効果と同一視できるものではなく、また公知技術2のリニアモータの効果から予測できるものではない等の原告の主張は全て採用できないとして、原告の請求を棄却した。
H21.8.25 知財高裁 平成20年(ネ)第10068号 特許権侵害差止控訴事件  
  本件は、被控訴人が、商品名を「MCS−8000」とするシンギュレーションシステム装置を製造、販売した行為について、控訴人が、被控訴人の上記行為は、控訴人の有する発明の名称を「切削方法」とする特許権を侵害するものとみなされる(特許法101条5号)と主張して、本件特許権に基づき、被控訴人製品の製造、販売等の差止めを求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として、3400万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。原判決は、被控訴人の上記行為による本件特許権の侵害の成否について判断することなく、本件特許は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから、特許法104条の3により、本件特許権を行使することはできないとして、控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した。本判決は、文言侵害の成否について、被控訴人方法が、本件発明に係る切削方法の対象物である「半導体ウェーハ」を切削する方法ではなく、文言上、被控訴人方法が本件発明の技術的範囲に属さない、均等侵害の成否について、本件明細書の記載及び出願経緯に照らし、当業者であれば、当初から「半導体ウェーハ」以外の切削対象物を包含した上位概念により特許請求の範囲を記載することが容易にできたにもかかわらず、控訴人は、切削対象物を「半導体ウェーハ」に限定しこれのみを対象として特許出願し、切削対象物を半導体ウェーハに限定しない当 初の請求項を削除するなどしたものであるから、外形的には「半導体ウェーハ」以外の切削対象物を意識的に除外したものと解されてもやむを得ないものといわざるを得ず、被控訴人方法は、均等侵害の要件のうち、少なくとも、「被控訴人方法が本件発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない」を欠くことが明らかであるから、被控訴人方法は、本件発明の技術的範囲に属さず、特許法101条5号による間接侵害は成立しないと判示した。さらに、原判決が、特許権侵害の成否について判断することなく、本件特許が無効であるとして、控訴人の請求を棄却していることに鑑み、被控訴人の主張する特許法104条の3の抗弁についてもその成否を判断し、原判決と同様に、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認め、控訴人は、被控訴人に対し、本件特許権を行使することができないと判示し、控訴人の本訴請求に理 由がないとした原判決は結論において正当であるとして、控訴を棄却した。
H21.7.30 知財高裁 平成20(行ケ)10444 特許審決取消請求事件  
  本件は、原告が名称を「尿取りパッド」とする発明につき特許出願をしたところ、特許庁から拒絶査定を受けたので、これを不服として審判請求をしたが、同庁が請求不成立の審決をしたことから、その取消しを求めた事案である。主たる争点は、本願発明が引用例1に記載された引用発明を前提として、引用例2その他の周知技術をも参酌することにより、当業者が容易に想到することができたか否かである。知財高裁は、@本願補正発明における「開口部を囲む領域」とは、液吸収体を有する積層体で形成されている領域であって、基本的にシール部以外の領域を指すものと解するのが相当であるが、引用発明の「近傍16」はシール部にすぎないものであって、これが本願補正発明の「開口部を囲む領域」や「液吸収体を薄くし又は液吸収体を除去した変形境界部」に相当すると理解することはできない。A本願補正発明における「開口部を囲む領域とこれ以外の領域との境に液吸収体を薄くし又は液吸収体を除去した変形境界を形成すること」は「開口部の周囲の領域の積層体」が「袋体の他の領域」と独立して変形しやすいようにするための工夫であるが、引用発明においては、そもそも「開口部の周囲の領域の積層体」など存在しないから、同「積層体」が「袋体の他の領域」と独立して変形することはできず、本願補正発明が想定する効果も得られない可能性が高い。として、原告の請求を認容し、審決を取り消した。
H21.7.15 東京地裁 平成19年(ワ)第27187号 特許権侵害差止等請求事件  
  本件は、テレビジョン番組リストのユーザーインタフェースに関する特許権を有する原告が、被告に対し、被告製品が本件発明の技術的範囲に属し、本件特許権を侵害すると主張して、被告製品の製造、販売の差止め及び廃棄を求めるとともに、特許法102条3項に基づく損害賠償として、26億3212万円と年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。請求項における用語の解釈、各請求項にかかる発明についての侵害の有無、無効理由の有無が争点となり、裁判所は、被告製品につき、本件特許の請求項8にかかる発明(「テレビジョン番組リストを複数のセル内に表示している時間とチャンネルのグリッドガイド形式で表示モニターに、RAMに記憶したテレビジョン番組リストを表示させる信号を発生し、その表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たさせる信号を発生し、そして、グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組リストを表示する信号を発生するようプログラムされていることを特徴としたマイクロプロセッサ。」)の構成要件該当性を認めたが、本件発明は、本件特許の優先権主張の日より前に頒布された特許公報に記載された発明との比較において、「テレビジョン番組リストを複数のセル内に表示する時間とチャンネルを軸とするグリッドガイド形式で表示モニターに、RAMに記憶したテレビジョン番組リストを表示させる信号を発生し、その表示されたテレビジョン番組リストの一つを目立たさせる信号を発生することを特徴とする制御手段」である点で共通し、本件発明が、信号を発生させるよう制御する制御手段として、プログラムされたマイクロプロセッサを用いているのに対し、上記発明では、どのような内部構成を備えているかが明確に開示されていない点、本件発明が、グリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目立たされたテレビジョン番組リストを表示する信号を発生しているのに対し、上記発明は、どのような構成を備えているかが明確に開示されていない点で相違点があるものの、制御のための信号を発生させる制御手段としてマイクロプロセッサを用いることは慣用技術にすぎず、グリッドガイド形式から単一チャンネル形式への番組表の表示形式を変更する発想も周知技術であり、いずれも周知技術等に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、進歩性欠如(特許法29条2項違反)の無効理由を有するとして、原告の請求を全て棄却した。
H21.6.30 知財高裁 平成20(行ケ)10396 審決取消請求事件  
  本件は、名称を「排泄物処理材」とする発明について、被告が無効審判請求をしたところ、特許庁がこれを無効としたことから、特許権者である原告がその取消しを求め、上記発明が甲第1号証との関係で進歩性を有するかが争点となった事案である。  知財高裁は、@取消事由1については、本件発明の「破砕片」と甲第1号証発明の「粉砕物」は、いずれも廃材を細かく砕いたものである点で共通しており、審決が一致点とした認定に誤りはなく、原告主張の取消事由1は理由がない。A取消事由2については、本件発明の「破砕片」と甲第1号証発明の「粉砕物」とは、シート形態を残存するかどうかという点に違いがあり、また、甲第1号証発明の「粉砕物」は、仮にシート形態を残存したものがあったとしても、本件発明の「破砕片」と甲第1号証発明の「粉砕片」は、表面が平滑であるか、凹凸があるかという点に違いがあるため、取消事由2には理由がある。B取消事由3については、本件発明の「破砕片」と甲第1号証発明の「粉砕片」は形状に違いがあり、甲第1号証発明の「粉砕片」は本件発明が有する「通水路内に凹凸によって繊維状吸水材又は粉粒状吸水材を確実に保持すると共に、排尿は通水路内に誘引されつつ通水路内の繊維状吸水材又は粉粒状吸水材と凹凸に捕捉される」という作用効果を有しないことも明らかであり、本件発明の「壁紙」を排 泄物処理材に用いることを記載した先行技術があったとも認められないから、当業者が甲第1号証発明の「廃材」に代えて本件発明の「壁紙」を用いることを容易に想到すると認めることはできず、取消事由3は理由がある。として、原告の請求を認容し、審決を取り消した。
H21.6.29 知財高裁 平成21年(ネ)第10006号 補償金等請求控訴事件  
  本件は、控訴人(一審原告)が、被控訴人(一審被告)に対し、被告が製造、販売する7つのモデルのゴルフクラブ(被告製品)は、原告が有する特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主張して、出願公開後の警告から設定登録までの間の特許法65条1項に基づく補償金と設定登録後の民法709条に基づく損害賠償との合計額の一部請求として2億円及び訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を請求した事案である。原判決は、被告製品は本件発明の構成要件を文言上充足せず、本件発明の構成と均等なものと解することもできず、被告製品は本件発明の技術的範囲に属さないとして、原告の請求を棄却したため、原告は、これを不服として控訴を提起した。知財高裁は、被告製品の構成における「炭素繊維からなる短小な帯片8」は、構成要件の「縫合材」であることの要件(「金属製外殻部材の複数の(二つ以上の)貫通穴を通し、かつ、少なくとも2か所で繊維強化プラスチック製外殻部材と接合(接着)する部材」)を充足しないので、被告製品は、本件発明の構成要件を文言上充足せず、文言侵害は成立しないが、本件発明の構成要件における「(繊維強化プラスチック製の)縫合材」と被告製品の構成における「(炭素繊維からなる)短小な帯片8」とは、目的、作用効果(ないし課題解決原理)を共通にするものであるから、置換可能性があり、それは被告製品の製造の時点において、当業者が容易に想到することができるから置換容易性があり、「縫合材であること」は、本件発明の課題解決のための手段を基礎づける技術的思想の中核的、特徴的な部分であると解することはできないから、本件発明において貫通穴に通す部材が縫合材であることは、本件発明の本質的部分であるとは認められず、被告製品が本件特許の出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものであるとは認められず、原告が、本件特許の出願経過において、本件発明の「縫合材」を、一つの貫通穴を通し、金属製外殻部材の上下のFRP製外殻部材と各1か所で接着した部材に置換する構成を意識的に除外したと認めることもできないから、被告製品は、本件発明の構成と均等なものとしてその技術的範囲に属する、また、本件発明は進歩性を欠くものとはいえず本件特許は無効とは認められない、との中間判決をした。
H21.5.28 知財高裁 平成20(行ケ)10401 意匠権 審決取消請求事件  
  原告の意匠に係る物品「流体圧シリンダ」についてした不服審判の請求不成立の審決の取消を求めた事案で、当事者間に争いのない本願意匠と引用意匠との共通点の評価について、被告は両意匠の形態が「ありふれた形態」であることから、該共通点が要部であると主張するが、「ありふれた形態」が最も強く需用者の注意をひくのは、当該ありふれた形態以外の形態が生じさせる美感が、当該ありふれた形態が生じさせる美感を超えるに足りない場合であると解され、共通点から生じる美感から直ちに両意匠が類似していると判断し得るものではなく、類否判断のためにはありふれた形態以外の部分から生じる美感を併せて判断することが必要である、との趣旨に基づいて相違点について検討し、該相違点の形態が相まって生じる本願意匠の意匠的効果は両意匠の共通点の形態から生じるありふれた美感を超えるに足りると判断して審決を取り消した。
H21.5.21 知財高裁 平成20(行ケ)10389 審決取消請求事件  
  本件は、名称を「ラベル連続体」とする本願発明についての出願が拒絶査定を受けたので、原告がこれを不服として審判請求をしたが、特許庁から請求不成立の審決を受けたことから、その取消しを求めた事案で、補正後の発明が刊行物との関係で独立特許要件(進歩性)を有するかが争点となった事案である。  知財高裁は、@引用発明及び補正発明のいずれにおいても、剥離被覆層は、感熱発色層を発色させる加熱体への剥離層を形成する物質の付着を防止するものであるから、引用発明にはこの点の特定がないことを内容とする相違点1については、引用発明と補正発明との実質的な相違点ではないとした審決の認定に誤りはない。Aサーマルヘッドのクリーニングのためにサーマルヘッドと直接接する層にクリーニング機能を有する無機粉体を含有させることは周知技術であると認められので、審決が認定した引用発明と補正発明との相違点2に関する構成は周知技術に基づき容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。として本件補正却下の違法をいう原告主張の取消事由は、いずれも理由がないとして、原告の請求を棄却した。
H21.5.20 東京地裁 平成19年(ワ)第8426号 損害賠償請求事件  
  本件は、薄膜トランジスタ装置に関する特許権を有していた原告が、被告に対して、被告が輸入、販売した製品が原告の特許権 に係る発明の技術的範囲に属し、原告の特許権を侵害するとして、民法703条に基づき、不当利得103億円のうち30億円の返還及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。被告製品の本件発明構成要件充足性、原告の訂正審判請求による訂正の違法性、進歩性欠如の無効理由の有無等が争われたが、本判決は進歩性欠如の無効理由の有無のみ判断し、引用例に記載された発明と本件発明の相違点、すなわち、2端子薄膜半導体素子が接続されている対象が、本件発明では外部取り出し端子とこれに近接して設けられた共通浮遊電極であるのに対し、引用例に記載された発明では、外部取り出し端子と接地端子である点、本件発明においては、外部取り出し端子と共通浮遊電極の間には、2端子薄膜半導体素子が、順方向接続態様で1個接続されているのに対し、引用例に記載された発明においては、入力端子2a(外部取り出し端子)とアースとの間には、Tr2、Tr3(2端子薄膜半導体素子)が、順方向接続態様で直列に2個接続されている点、本件発明では、「前記共通浮遊電極は、前記外部取り出し端子と同時に、または前記ゲート電極または前記ソース電極及び前記ドレイン電極と同時に形成されて」いるのに対し、引用例に記載された発明では、共通浮遊電極が存在しないから、その形成方法も開示されていない点mのいずれも、本件発明の構成は、公知技術に基づいて当業者が容易に推考し得るものであったとして、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであり、その余について判断するまでもなく、原告の請求を棄却した。
H21.4.28 知財高裁 平成20(行ケ)10119 審決取消請求事件  
  本件は、名称を「ディジタル・ビデオ信号処理システム用のオンスクリーン表示装置」とする本願発明についての国際特許出願が日本国特許庁から拒絶査定を受けたので、原告がこれを不服として審判請求をしたが、同庁が請求不成立の審決をしたことから、その取消しを求めた事案で、本願発明が引用例に記載された発明との関係で進歩性を 有するかか争点となった事案である。  知財高裁は、本願発明は、グラフィック画像を表す信号と通常のビデオ信号の間の切換えを行う回路を備えた「ディジタル・ビデオ信号処理システム用のオンスクリーン表示装置」への適用を背景としつつ、相異なるデータ・フォーマットのビデオ画像とグラフィック画像を単一のメモリに記憶させ、かつ記憶されたビデオ画像とグラフィック画像をそれぞれ表示させることができるディジタル・ビデオ信号処理装置を提供することを目的とするものであるところ、刊行物発明は、符号化複合化装置を経由しているにもかかわらず、これを複合化することなく符号化したままでVRAMに記憶させる必然性を認めることはできないというべきで、複合化前の「圧縮形式の画像を表すディジタル・データ」とグラフィック画像を表すディジタル・データの両方を記憶する単一のメモリということはできないVRAMは、符号化した画像情報を記憶するものではないから、審決が「符号化されている画像情報は、複合化する前に、ワークメモリとしてのVRAMに一時記憶されるものと理解される」と認定したことは誤りであり、従って、VRAMは「上記画像を表すディジタル・データと上記グラフィック画像を表すディジタル・データの両方を記憶する単一のメモリ」といえる限りにおいて本願発明と相違しないとした審決の一致点の認定も誤り で、その誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。として、原告の請求を認容した。
H21.4.27 大阪地裁 平成20年(ワ)第4394号 損害賠償請求事件  
  本件は、発明の名称を「開き戸の地震時ロック装置」とする発明に係る特許権者である原告が、被告に対し、被告の製造販売する家具等は本件発明の技術的範囲に属し、これらを製造販売する被告の行為が本件特許権を侵害(直接侵害及び間接侵害)するとして、民法709条の不法行為に基づく損害賠償の内金及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。本判決は、本件各特許発明の技術的範囲の解釈につき、特許請求の範囲が作用的、機能的に記載されているからといって、明細書の発明の詳細な説明に開示された実施例のみに限定されると解すべきではなく、明細書の発明の詳細な説明の記載から当業者が認識し得る技術思想に基づいて当該発明の技術的範囲を定めるのが相当であり、本件明細書に記載されていない原出願明細書の記載をもって本件各特許発明の技術的範囲の解釈を補うことは許されないとし、本件明細書の記載からすれば、本件各特許発明においては、地震のゆれによって係止手段が自ら移動するとの技術思想が開示されているというべきところ、被告各物件はかかる構成とは異なり、本件特許発明の技術的範囲に属するとは認められない、また、構成要件中の地震時ロック装置の取付位置について、「開き戸の自由端でない位置の家具、吊り戸棚等の天板下面に取り付け」と記載されているのみであり、「開き戸の自由端でない位置」の具体的範囲については何らの記載も示唆もなく、発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものであり、特許法36条6項1号の定めるサポート要件を充たさず、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから、特許法104条の3により、原告は被告に対し、本件特許権を行使することができないとし、その余について判断するまでもなく、原告の請求を棄却した。
H21.3.31 知財高裁 平成20(行ケ)10358 審決取消請求事件  
  本件は、被告が名称を「経口投与用吸着剤、並びに腎疾患治療又は予防剤、及び肝疾患治療又は予防剤」とする発明について有する特許権の特許の請求項1〜7に対し原告から無効審判請求がなされ、特許庁が請求不成立の審決をしたことから、原告がその取消しを求めたもので、「除くクレーム」を内容とする本件補正は、願書に最初に添付した明細書等に記載した範囲のものではなく、特許法17条の2第3項に違反するかが争点となった事案である。  知財高裁は、@「除くクレーム」を内容とする補正は、第三者出願に発明に本願に係る発明の一部が重なる場合のみならず、同一人による出願の内容の一部に重複部分がある場合にも、妥当すると解される。A本件補正は、球状活性炭につき、X線回折法による回折角が15°、24°、35°における回折強度の比(R値)が1.4以上であるものを除くとするもので、球状活性炭のうちフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として用いた場合において、そのR値が1.4以上であるときには、本件特許に係る発明と別件特許に係る発明は同一である。そして、本件補正は、このR値が1.4以上である球状活性炭を特許請求の範囲の記載から除くことを目的とするものであるところ、本件当初明細書の記載によれば、本件補正は、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないと認めるのが相当であるから、本件補正は、特許法17条の2第3項に違反するものではないから、補正要件違反の無効理由は認められず、原告の主張は採用できない。として、原告の請求を棄却した。
H21.3.25 知財高裁 平成20(行ケ)10402 意匠権 審決取消請求事件  
  原告の意匠に係る物品「人形」の登録意匠(襟元の部分意匠)に対して被告が請求した無効審判における登録を無効とする審決の取消を求めた事案で、被告は、本件意匠について、原告ホームページに掲載された「引用意匠」と同時期に掲載された雛人形の「画像」を併せて見れば本件意匠の内容や態様を推認できる点、また、引用意匠を見る需用者は過去の登録例や「市販のレース地」により不鮮明な意匠の部分を補って判断するから本件意匠の内容及び形態を(これら公知例より)確認できる点、により出願前に公知である意匠について登録された旨を主張するが、「引用意匠」も「画像」も不鮮明で当該部分の内容や態様を特定することができず、また、多数存在する既存の「レース地」から特定模様を選択してその形状を確定することは到底できない、として審決が認定した内容には根拠がない、として審決を取り消した。
H21.2.26 知財高裁 平成20(行ケ)10236 審決取消請求事件  
  本件は、原告が名称を「アクティブマトリックス液晶ディスプレイデバイス」とする発明についてした特許出願が拒絶査定を受けたので、これを不服として審判請求をしたが、特許庁が請求不成立の審決をしたことから、その取消しを求めた事案で、本願発明が引用例に記載された発明との関係で進歩性を有するかが争点となった事案である。  知財高裁は、@刊行物4及び乙1〜3には、何れも審決が周知技術として認定した、「ゲートラインを覆って形成された複数のトランジスタを備え、ゲート電極を形成するためにゲートラインから延出する付加的構造を有しないでゲートライン自体を複数のトランジスタのゲート電極として用いること」との構成が記載されていると認められ、これらの文献は何れも本願の優先権主張日以前に公開されていたものであり、その技術分野は本願発明と同様、アクティブマトリックス液晶表示装置における薄膜トランジスタの電極構造に係るものである上、乙1公報に関する記載は、その出願当時における従来技術として挙げられたものであることを併せ考慮すると、審決の認定した上記構成は、本願の優先権主張日当時において、当業者において周知技術であったと認められ、審決の認定に誤りはない。そして、乙1公報は周知技術の例示として適切でないとの原告の主張についても、原告の主張する点は周知技術に係る前記認定を左右するものではない。Aその他の原告の出張についても、全て採用できない。として、原告の請求を棄却した。
H21.1.27 知財高裁 平成20(行ケ)10332 意匠権 審決取消請求事件  
  原告の意匠に係る物品「基礎杭」についてした不服審判の請求不成立の審決の取消を求めた事案で、原告が「太径部+段差部+細径部」の構成において太径部と細径部の長さの比率が6対1である本願意匠は1対2である引用意匠に対して類否判断に与える影響は大きい旨を主張したが、太径部と細径部の長さの比率が異ならせたものが公知であったことからすると本願意匠と引用意匠とにおける当該比率が異なる点が新規の形態であるとはいえず、また、当該長さの比率の主たる関心が意匠がもたらす美感よりも形態のもたらす機能的側面に向けられたものであるから、当該長さ比率が異なる点が両意匠の類似判断に与える影響は微弱である、として原告請求を棄却した。
H20.12.25 知財高裁 平成20(行ケ)10251 意匠権 審決取消請求事件  
  原告の意匠に係る物品「ビールピッチャー」(注ぎ口周辺の部分意匠)についてした不服審判の請求不成立の審決の取消を求めた事案で、透明部分を含む部分意匠について、被告は公知意匠を含むありふれたものであり、看者の注意を惹くものではないと主張するも、透明部分により透過する部分を含めた注ぎ口周辺の「部分」の具体的態様には側面視において看者の注意を惹く十分な特徴があり、「全体」としては公知意匠とは異なる内容器と外容器の二重構造であること、から本願意匠の一部について公知のものが含まれるとしても、それをもって類否の判断に影響を及ぼすものとは言えない、として審決を取り消した。
H20.11.27 知財高裁 平成20(行ケ)10168 特許審決取消請求事件  
  本件は、発明の名称を「容器」とする発明につき特許出願をしたところ、拒絶査定を受けたので、これを不服として審判請求 をすると共に、同日付け手続補正書を提出したが、特許庁が請求不成立の審決をしたことから、その取消しを求めた事案である。
 争点は、本件補正の判断及び本願発明の認定、引用発明の認定、容易想到性の判断について誤りがあったかどうかである。  知財高裁は、本願発明に「異なる注射器の目印として異なる目印あるいはケースが設けられる」との事項を付加することを含む本 件補正は、本願発明における、ケースそのものを「目印」として使用しない態様から、本願補正発明における、ケースそのものを「目印」として使用する態様に、その範囲を拡張したもので限定的減縮に当たらず、ケースそのものを「目印」として用いるとの事 項は新規事項の追加に当たるので、本件補正を却下した審決の判断に誤りはなく、それを前提とした審決の本願発明の認定にも誤り はない。また、審決は、引用例1に記載された事項に基づいて、引用発明として認定したものであり、引用例1に記載されていない 事項を追加したり、引用例1と異なる事項を認定しているのではないので、引用発明の認定に誤りはない。さらに、引用例1と引用 例2とは、技術分野、機能、課題において共通するので、引用例1の射出ノズルに引用例2の構成を適用して、本願発明と引用発明 との相違点に係る構成とすることに、格別の障害はなく、容易に想到できたものといえ、審決の容易想到性の判断に誤りはないとし、 取消事由1〜3の全てについて、原告の主張には理由がないとして、原告の請求を棄却した。
H20.11.20 知財高裁 平成20年(ネ)第10027号 特許権差止請求権不存在
確認請求控訴事件  
  本件は、被控訴人(一審原告)が、名称を「工芸素材類を害虫より保護するための害虫防除剤」とする発明について特許 権を有する控訴人(一審被告)に対し、控訴人の特許は無効であると主張して、被控訴人製品の生産等に対する差止請求権の 不存在確認を求めた事案である。原審は、本件発明について進歩性欠如により無効理由を有すると判断し、ただ、特許権から 派生する差止請求権は、その存在そのものは否定されるわけではなく、その行使が制限されるとして、差止請求権を行使する ことができないことを確認するとの限度で本訴請求を認容した。これに対し、控訴人は、原判決は「イミダクロプリドが別の 翅目のものに対しても殺虫効果を有するのであれば、当該別の翅目のものに対しても長時間の殺虫効果を発揮することが、当 業者であれば、容易に予想することができた。」と述べるが、単なる「殺虫効果」からそれを超える「長期の殺虫効果」が容 易に予想し得るとはいえない、また、「イミダクロプリドが別の翅目のものに対しても殺虫効果を有するのであれば」との点 は仮想事実であり論理の飛躍があるなどと主張したが、本判決は、一般に、殺虫活性のある化合物は、分解、揮発等により自 然に消滅するか、又は、人為的に除去されるという事情がなければ、その施用箇所にとどまって、殺虫活性を示し続け、この ような性質は、殺虫対象となる昆虫によって左右されるものではなく、また、公知特許に生物試験の実施例の記載がないこと によって左右されるものでもないなどとして、控訴人の請求を全て棄却した。
H20.10.30 知財高裁 平成20(行ケ)10017 特許審決取消請求事件  
  本件は、原告らが発明の名称を「弾力性の優れた高度テーパリング歯ブラシ毛が植毛された歯ブラシ、及びその製造方法」と する特許の出願をしたところ、拒絶査定を受けたので、これを不服として審判請求をしたが、特許庁が請求不成立の審決をしたこと から、その取消しを求めた事案である。
 争点は、本願発明が、引用発明との関係で進歩性を有するかどうかであったが、知財高裁は、引用例が本願発明の優先日以降に補 正される前の内容を記載した公開公報であったとしても、かかる補正前の公開公報に記載の開示内容から引用発明を認定できないと いうことはないという理由などから、取消事由1〜3の全てについて、原告らの主張は全て採用することができないとして、原告の 請求を棄却した。
H20.10.29 知財高裁 平成20年(ネ)第10039号 特許権職務発明の対価請求
控訴事件  
  本件は、医薬品である商品名「アンプラーグ」に関する2件の特許(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。) の共同発明者の一人で元従業員であった控訴人(一審原告)が、使用者であった被控訴人(一審被告)に対し、平成16年法 律第79号による改正前の特許法35条に基づき、平成8年4月1日から平成21年5月18日までの実施に対応する相当対 価31億3800万円又は15億6900万円から既払金4800円を差し引いた残額の一部として150万円及びこれに対 する訴状送達の日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求めた事案である。
 原審は、控訴人の実績補償に係る相当対価請求権は、本件発明1については実施開始時である平成5年10月7日が、本件 発明2については設定登録時である平成6年4月11日がそれぞれ起算点となり、控訴人が履行を請求した平成19年2月1 日までに10年以上が経過したから時効により消滅したとして、当該相当対価の額について判断することなく、控訴人の本訴 請求を棄却した。これに対し、控訴人は、被控訴人の発明等取扱規則9条は、発明を実施し、当該発明の効果が顕著であった か否かによって褒賞金の支給の有無が決定される旨を規定し、特許報奨取扱い規則において、「営業利益基準」として「5会 計年度の累積営業利益」を要求し、また、職務発明取扱規則施行細目においても、「累積営業利益額」として「5年間の累積 営業利益額」を要求しているから、「顕著な効果」の有無が判断でき、それに基づく実績補償の請求が可能となるのは、本件 発明が実施後5年間の経過したであると主張して控訴し、被控訴人は、勤務規則等に明確な支払時期の定めはなく、発明等取 扱規則9条は従業員にとって一方的に不利益な定めであるためその効力が否定され、同条を根拠に弁済期の未到来を主張する ことはできないから、同規定は実績補償に係る相当対価の支払請求に対する法律上の障害とはならない旨主張したが、本判決 は、同規定の合理性を肯定し、勤務規則等により支払時期の定めを解釈することができるとした上で、勤務規則等に対価の支 払時期が定められているときは、勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は、相当の対価の支払を受ける権利の 行使につき法律上の障害があるから、控訴人の本訴請求債権は時効消滅していないとして、消滅時効の抗弁についてのみ判断 して控訴人の本訴請求を棄却した原判決を取り消し、相当対価の額等について審理を尽くさせるため、原審に差戻した。
H20.9.29 知財高裁 平成19(行ケ)10280 特許審決取消請求事件  
  本件は、原告が名称を「凹凸付与装置」とする発明につき特許出願をしたところ、拒絶査定を受けたので、不服の審判請求を したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたことから、その取消しを求めた事案である。
 争点は、手続き補正に係る発明が刊行物1及び2との関係で進歩性を有するかであったが、知財高裁は、取消事由1については、 本願発明の凹凸模様と刊行物1の凹凸模様との相違は、審決が相違点として認定したとおりのものであって、審決に相違点を看過し た違法はないと、取消事由2については、審決が刊行物2に記載されていると認定したことに誤りはないと、また引用発明1の凹凸 模様に換えて刊行物2に記載されているように互いに交差する2つの溝によって凸部及び凹部を形成することとした上、交差する2 つの溝として左螺旋ねじ溝と右螺旋ねじ溝を採用することは、当業者が容易になしうることであるとし、原告主張の取消事由はいず れも理由がないとして、原告の請求を棄却した。
H20.9.8 知財高裁 平成19年(ネ)第10085号 特許権損害賠償請求控訴事件  
  本件は、名称を「円盤状半導体ウェーハ面取部のミラー面取加工方法」とする発明(本件発明)について特許権を共有 する控訴人(一審原告)らが、半導体ウェーハ外周面取部研磨装置を含む装置(被告製品)を製造・販売する被控訴人(一 審被告)に対し、被告製品を製造販売する行為は、本件特許権を侵害する等として、実施料相当額の損害賠償金と遅延損害 金の支払を求めた事案である。原審は、(1)被告装置の構成及び同装置において使用されている半導体ウェーハの外周面取部 の研磨加工方法(被告方法)は本件発明の技術的範囲に属しない、(2)被告方法は本件発明と均等であるともいえないとして、 控訴人らの請求を棄却した。これに対し、控訴人は、本件発明の構成要件である「ほぼ全周において押し当てた状態」につき、 ウェーハの外周面面取部の周全体のうちおおかたの部分において押し当てた状態であればよい等と主張して争ったが、本判決 は、そのような点につき本件明細書に記載も示唆もされておらず、加えて、「本発明はウェハ外周部全体に加圧できるために 外周部の欠損を防止することができ、研磨加工時間の短縮が可能となる」といった審査段階における控訴人らの主張とも矛盾 する等の理由により控訴人の主張を排斥し、「ほぼ全周において押し当てた状態」については、ウェーハや研磨面に設けられ た切欠きや溝等の存在により、ウェーハと研磨面が当接しないこととなる部分を除いた部分については全周にわたり当接する ことを意味すると解釈した上で、被告方法はこの構成要件を充足するとはいえず、また、上記審査段階における控訴人らの主 張からも、同構成要件は本件発明の本質的部分であることが明らかであるとして均等侵害も否定し、控訴を棄却した。
H20.8.28 東京地裁 平成19年(ワ)17344 特許権損害賠償請求事件  
  本件は、原告が、石風呂装置の特許につき、専用実施権設定契約を締結し、契約金として3000万円を支払ったところ、そ の後、同特許を無効とする審決が確定したため、上記特許に係る石風呂装置を独占的に使用することができなくなったとして、上 記特許に無効原因があることを知りながら、原告にそのことを告げずに原告に同特許が有効であると誤信させ、また、同特許に係 る発明を実施したものでない石風呂装置を同特許に係る発明を実施したものであると誤った説明をして、原告にその旨誤信させて 上記専用実施権設定契約を締結させた上、契約金を支払わせたこと、及び上記特許の無効を招いたことが、共同不法行為又は債務 不履行に当たるとして、被告らに対し損害賠償を請求し、予備的に、同契約は、錯誤ないし公序良俗違反により無効であるとして、 又は審決が確定したことを理由として、被告らに対し不当利得返還請求権に基づき契約金の返還を請求した事案である。

本判決は、本件発明の実施品と説明された石風呂装置は、本件発明の技術的範囲に属しないと認定した上で、無効審決において 公知文献であるとされたからといって本件実施契約締結時にそれらを知っていたということはできない、被告らが上記装置を本件 発明の実施品でないことを看過し誤った説明をしたことにつき過失があるとしても不法行為となるような違法行為とはいえない、 無効審決が確定し本件特許が無効になったとしても本件特許を維持すべき契約上の義務違反があったとはいえない、本件実施契約 書に「本契約に基づいてなされたあらゆる支払いは、事由の如何にかかわらず原告に返還されないのもとする」と規定されている ことなどを理由として損害賠償請求及び審決が確定したことを理由とする不当利得返還請求を排斥したが、かかる契約の規定は無 効審決が確定した場合でも契約金等の返還をしない趣旨であり、本件実施契約につき錯誤や詐欺等が存在する場合において、契約 の無効や取消しを理由として契約金等の返還請求をすることが一切できないとの趣旨まで含むことについての合意の存在をうかが わせる証拠はなく、本件においては原告が上記装置が本件発明の技術的範囲に属さないことを知っていれば本件実施契約を締結す ることはなかったといえるから、原告に本件実施契約の締結につき要素の錯誤があるとして、遅延損害金の一部を除き、原告の不 当利得返還請求を認容した。
H20.8.26 知財高裁 平成20(行ケ)10001 特許審決取消請求事件  
  本件は、原告が名称を「音素索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書」とする特許出願について補正をしたが拒絶査 定を受けたので、不服の審判請求をしたところ、本件審判の請求は成り立たないとの審決をしたことから、原告がその取消しを求 めた事案である。争点は、本願発明が特許法2条1項の発明に該当するかであったが、知財高裁は、審決の判断は、発明の対象た る対訳辞書の具体的な特徴を全く考慮することなく、本願発明が「方法の発明」であるということを理由として、自然法則の利用 がされていないという結論を導いており、本願発明の特許請求の範囲の記載の全体的な考察がされていない点、及び「辞書を引く 方法」は人間が行うべき動作を特定した人為的取り決めであると断定し、なにゆえ、辞書を引く動作であれば「人為的取り決めそ のもの」に当たるのかについて説明がないなど、自然法則の利用に当たらないとしたことの合理的な根拠を示していないことの妥 当性を欠くので、審決の理由は不備であり、その余の点を判断するまでも取り消しを免れないとし、原告の請求を棄却した。
H20.7.30 知財高裁 平成19(行ケ)10431 特許補正却下決定取消請求事件  
  本件は、原告が名称を「遊技機」とする特許出願について拒絶査定を受け、審判請求をしたところ、その審理の中でした本 件補正に対し、特許庁がこれを却下する決定をしたことから、原告がその取消しを求めた事案である。争点は、本件補正が明細書 の要旨を変更するものであるかであったが、知財高裁は、本願の出願当初明細書に記載された特別可変表示装置は、特別変動入賞 装置の作動を決定する目的を有する装置であって、特別変動入賞装置とともに存在することに技術的意義を有する装置とした上で 、本件補正においては、特別変動入賞装置については規定されていないので、特別変動入賞装置を有しない遊技機をも含むもので あり、明細書の要旨を変更するものであると認定し、原告の請求を棄却した。
H20.7.14 知財高裁 平成18年(ム)10002 平成19年(ム)10003 特許権侵害差止再審請求事件  
  再審原告の製造販売する海苔異物除去機が、再審被告の有する特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主張して、再審原告製品の製造販売行為の差止め及びその廃棄を求める訴えを提起し、これを認容する判決が確定した後、当該特許について無効審判 請求がなされ、公知例と周知技術による進歩性の欠如を理由として、特許無効審決が確定したケースで、再審原告が再審被告に対 して再審の訴えを提起し、再審の開始決定が確定した事案である。 再審原告は、無効審決が確定したことによる権利消滅の抗弁を主張したのに対し、再審被告は、原判決で主張されたたものとは 別個の無効理由であっても、原判決の確定後にこれを主張し、本案に係る訴訟物の存否を争うことができるとすることは、確定判 決に求められる紛争解決機能を損ない、法的安定性を害するとともに、確定判決に対する当事者の信頼をも損なうとして、同抗弁 を主張することは信義則に反するなどと主張したが、本判決は、再審被告の主張は確定判決に認められる既判力に基づく遮断効を 主張するものに過ぎないのであって、再審開始決定が確定した後の本案の審理においては、判決の確定力自体が失われているから その前提を欠くこと、原審で主張された権利濫用の抗弁と無効審決の確定による権利消滅の抗弁とは別個の法的主張と理解すべき ものであり、原判決が再審原告の主張した権利濫用の抗弁について判断したからといって、本件特許の有効性について判断したも のとはいえないこと、及び、無効審判の請求人及び請求期間には制限がなく、同一人であっても再度の無効審判請求ができる等の 無効審判制度の趣旨から、権利消滅の抗弁を主張することを制限すべき理由はないとして、原判決を取消し、再審被告の請求を棄 却した。
H20.6.30 知財高裁 平成20(行ケ)10011 特許審決取消請求事件  
  本件は、原告が名称を「座金付きナット、座金付きボルト及び取り付け治具」とする本件発明1及び2につき無効審判請求 がなされ、特許庁がこれを無効とする審決をしたことから、原告がその取消しを求めた事案である。争点は、(1)審決が原告からの 訂正請求を認めなかったのは適法か、(2)本件発明1及び2が引用発明との関係で進歩性を有するか、である。
 (1)については、「座金部と切り刃の関係」について、審決の判断は論旨が一貫しておらず、誤った認定に基づいてした審決は 取り消されるべきである、との原告の主張は、誤りで採用できないと認定した。また、個別訂正事項の誤りの有無については、 審決の判断には、誤りのあるものと誤りのないものがあるが、本件訂正について、各訂正事項について個別に判断することを原告 においても求めてはおらず、またこれを訂正事項毎に個別に判断すべき事情も認められないから、本件訂正はこれを全体としては 認められるものではなく、審決の判断には結論において誤りはないと認定した。
 また、(2)については、原告の主張は、全て採用することができないと認定し、原告の請求を棄却した。
H20.6.5 知財高裁 平成19(ネ)10087 特許権侵害差止等請求控訴事件  
  本件は、体内脂肪重量計についての特許を有する控訴人が、被控訴人の輸入等する製品は同特許権を侵害すると主張して、 特許法100条1項に基づく輸入等の差止め及び同条2項に基づく在庫品の廃棄、並びに同法102条2項に基づく損害賠償の支払 を求めた事案である。
原判決は、構成要件中の「足用アタッチメント」は「付属品」であり、体重測定装置に取付け、取外し可能 であるものを意味すると解すべきであり、輸入自認物件は、足首用電極支柱が体重測定装置の上面に固定されているから構成要件を充足 しない、また、当初明細書に記載した事項の範囲内ではない補正がなされており、特許法17条の2第3項に該当し無効とされるべきも のであり、控訴人は、同法104条の3によりその権利を行使することができないなどとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。
これに対し、控訴人は、原判決の構成要件の解釈は余りにも形式的用語にとらわれたものであると主張し、足用電極が体重測定装置 への着脱自在な「足用アタッチメント」に設けられているか、あるいは体重測定装置の上面に固定された部材上に設けられているかは 大した問題ではないなどと主張したが、本判決は、広辞苑によれば「アタッチメント」とは、「器具・機械の付属品」を意味するところ、 本件明細書には、「足用アタッチメント」をこれと異なる意味で使用する旨の明示又は黙示の定義はされておらず、出願時の補正の経緯 からも、本件発明の構成要件中の「足用アタッチメント」は、体重測定装置に取付け、取外しが可能であるものを意味すると解すべきで あるなどとして構成要件充足性を否定し、その余の争点について判断するまでもなく控訴を棄却した。
H20.5.28 知財高裁 平成19(行ケ)10329 特許 審決取消請求事件  
  本件は、原告がした特許出願の拒絶査定に対する不服審判請求を成り立たないとした審決の取消しを求めた事案である。 争点は、引用発明との関係における進歩性につての審決の判断の当否であったが、
 @ 長方形の短辺部をそれぞれ略半円弧状の湾曲部に代えた形状は略長方形ということができ、明細書及び図面の記載を参酌しても、 この略長方形状が半円弧状の湾曲部を有する形状を除外していると解することはできず、審決が引用例2の第5図及び第10図に 関して、「接続用接点が略長方形ないし長円形の閉空間を有する形状で、一辺部が、対向する二辺部の一方に当接」していると 認定したことについて誤りはない
A 接続用接点の当接態様について、請求項1には「前記枠部の他の一辺部は、前記二辺部の一方に当接し」と記載されているのみで、 当接の態様について何らかの限定を付する旨の記載もないため、接続用接点の枠部の他の一辺部が対向する二辺部の一方に略直角に 当接するので、引用発明1に引用発明2記載の技術を適用して容易想到性を肯定した審決に誤りはない
B 作用効果に関する審決の判断にも誤りはない と判示して、原告の請求を棄却した。
H20.5.14 知財高裁 平成19(ネ)10100 特許権侵害に基づく差止等
請求控訴事件
 
  本件は、圧延油中に含まれる異物を除去するためのフィルタモジュールの発明に関する特許権を有する控訴人が、本件特許の 出願公開後に被控訴人が製造販売した製品が本件特許発明の技術的範囲に属すると主張して、被控訴人に対し、被控訴人製品の 製造販売等の差止め及び廃棄、補償金の支払、特許権侵害による損害賠償金の支払をそれぞれ請求した事案である。 原判決は、本件特許発明が、その特許出願前に公然実施されていたものであり、無効とされるべきものであるとして、控訴人の 請求をいずれも棄却した。
控訴人は、@ 特許庁審査官が公然実施にかかる文献を見出せずに本件特許発明に対して特許査定がなされたこと、A公然実施し たとされる者がその後特許請求の範囲に本件特許発明を含む特許出願をしたこと、B 本件訴訟提起前の警告に対して、被控訴人が 本件特許に係る出願の半年程前に被控訴人が被控訴人製品の製造販売を開始した旨の回答をしていたのみであったが、本件訴訟に 至ってから、それ以前に他社が公然実施していたとの主張を追加提出したとしたことは不自然である、などと主張して原判決の取消 を求めたが、知財高裁は、@ 本件特許発明が当業者が現実に利用してきた技術であって、当業者に広く知られ、これについての 文献が多数に上っていたはずであるなどと即断できない、A 出願当初の特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載された発明 の範囲と比較しても広すぎる特許出願は往々にして見かけるものであり、特許出願に係る特許請求の範囲が本件特許発明を 含むものであったとしても、それまで本件特許発明と同一の発明を実施していなかったと即断できない、B本件特許発明 の公然実施を主張するためには、従前の実施者に対して少なからぬ時間と労力を要する協力を求める必要があるから、自身に関する ものとして当然事実関係を把握し、かつ、資料の収集もより容易な被控訴人による本件特許発明の実施をまず主張して、訴訟係属に まで発展してから、やむを得ず従前の実施者の協力を求めるようなことは、極めて自然な経過というべきであるなどとして、控訴を 棄却した。
H20.4.28 知財高裁 平成19(行ケ)10346 特許権審決取消請求事件  
    本件は、原告がした特許出願について引用例1発明との関係において進歩性を欠くとする拒絶査定に対する不服審判請求を成り 立たないとした審決の取消しを求めた事案である。  審決が認定する引用例1発明の内容、同発明と本願補正発明との相違点は、1)金属板の中心に、本願補正発明では、軽量化のため にくり抜き部が形成されているのに対して、引用例1発明では、前記くり抜き部が形成されていない点、2)金属板に対しフランジを 直角に設ける場合に、本願補正発明では、折り曲げているのに対して、引用例1発明では折り曲げていない点、3)直角を挟む2辺の フランジを接合部にあてがうに際して、本願補正発明では、接合部の中心線上にあてがっているのに対して、引用例1発明では、前者 のようにあてがっているかどうか不明である点であったが、本件判決は、これら相違点1)〜3)は、何れも周知慣用技術を参照する ことによって、当業者が容易に想到できたものと認められ、本願補正発明の効果も、引用例1発明及び各周知慣用技術から予測できる 範囲内で、原告が主張するような効果を本願補正発明が有するものとは認められないとして、審決の判断に誤りはないと判示し、原告 の請求を棄却した。
H20.4.24 最高裁判所第一小法廷判決 平成18年(受)第1772号 特許権に基づく製造販売禁止等請求事件  
    本件は、上告人が有する特許権の侵害に基づく被告らに対する被告製品の製造、販売の差止め及び損害賠償請求について、 第1審の口頭弁論終結前に請求原因となる特許発明を追加し、これに係る特許請求の範囲の訂正を求める訂正審判請求を繰り返 した上告人が、上告及び上告受理申立てをした事案である(第1審及び、原審いずれも本件発明に無効理由があることが明らか であることを理由として棄却)。5度目の訂正審判請求に対し、上告受理申立て理由書提出期限までに、訂正をすべき旨の審決 がなされたため、上告人は、原判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更されたものとして、民訴法338条1項 8号に規定する再審事由があるといえるから、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があると主張した。  これに対し、本判決は、原判決においては、本件訂正後の特許請求の範囲を前提とする本件特許に係る無効理由の存否につい て具体的な検討がされているわけではなく、本件訂正審決が確定したことにより、本件特許は、当初から本件訂正後の特許請求 の範囲により特許査定がされたものとみなされるところ、本件訂正は特許請求の範囲の減縮に当たるものであるから、これによ り上記無効理由が解消されている可能性がないとはいえず、上記無効理由が解消されるとともに、本件訂正後の特許請求の範囲 を前提として本件製品がその技術的範囲に属すると認められるときは、上告人の請求を容れることができるものと考えられ、本 件については、民訴法338条1項8号所定の再審事由が存するものと解される余地があるとしながら、特許法104条の3第 2項の規定は、無効主張について審理、判断することによって訴訟遅延が生ずることを防ぐためであり、無効主張のみならず、 無効主張を否定し、又は覆す対抗主張も、審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められれば、却下され ることになるというべきであるから、前記事実経過に照らし、上告人は、第1審においても、被上告人らの無効主張に対して対 抗主張を提出することができたのであり、上告人が本件訂正審決が確定したことを理由に原審の判断を争うことは、原審の審理 中にそれも早期に提出すべきであった対抗主張を原判決言渡し後に提出するに等しく、上告人と被上告人らとの間の本件特許権 の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものといわざるを得ず、上記特許法104条の3の規定の趣旨に照らしてこれを許 すことはできないとして、上告を棄却した。
H20.4.14 知財高裁 平成19(行ケ)10321 意匠権 審決取消請求事件  
    原告のした意匠法第10条の2第1項の規定に基づく意匠登録出願が、(1)第1及び第2形態の意匠を含む原出願につ いて意匠法第7条(一意匠一出願)違反の拒絶理由通知を受けた際、第1形態の意匠を削除し、第2形態を登録を受けよう とする意匠とする補正をし、(2)残された第2形態の意匠について引用意匠による拒絶理由を受けた際、前記原出願から、 前記補正で削除した第1形態の意匠と第2形態の意匠とを分割する補正をしたが、分割の要件を満たさず、結果、第2形態 の意匠について引用意匠により拒絶査定を受け、不服審判を請求したが請求不成立とされたため、この審決の取消を求めた 事案で、原告が(1)の補正があってもなお原出願の内容は留保された状態にある旨主張するが、適法な補正がされれば、 その出願時に遡って補正の内容のとおり変更されることは、意匠法第9条の2(補正と要旨変更)、同第17条の2第1項 及び同第17条の3(補正却下の新出願)の各規定から当然に導かれる、として原告請求を棄却した。
H20.3.27 知財高裁 平成19(行ケ)10279 特許権審決取消請求事件
    本件は、特許庁が特許無効審判請求事件についてした審決の取消しを求めた事案である。  駆動軸、回転機構及び回転整畦体の配置構成に関して、本件発明が「駆動軸の下部に回転機構を連設し、駆動軸の上部に回転整畦体 を設ける」ものとしたのに対して、先願発明がこのような配置構成を用いていない点が相違するが、両者は実質的に同一であり、本件 特許は特許法29条の2の規定に違反してされたとする審決は、以下の理由により判断に誤りがあるとして原告主張の取消事由は理由 があるとした。  すなわち、先願明細書の特許請求の範囲には、駆動軸と回転機構との配置構成について記載はないが、先願明細書には、駆動軸の 「上部」に回転機構が連設されており、駆動軸の「下部」に回転機構が連設されている本件発明とは、配置構成が異なる。そして、先 願明細書には駆動軸と回転機構との配置構成について、上記実施例記載の構成以外の記載はなく、他の構成を適用できることの明示の 示唆もない。そして、本件発明は、相違点に係る本件発明の構成を採用することで、先願明細書に記載のない作用効果を奏するもので あるから、両者は実質的に同一であるとの認定は誤りである。
H20.3.13 東京地裁 平成18年(ワ)第6663号 特許権侵害差止等請求事件
    本件は、「粗面仕上金属箔および自動車の排ガス触媒担体」についての特許権を有している引受参加人が、被告が製造・販 売した粗面仕上金属箔が上記特許権の技術的範囲に属し、その製造・販売が上記特許権を侵害したものであると主張して、被告 に対し、上記粗面仕上金属箔の製造・販売の差止、損害賠償金12億円及び不当利得金2億6000万円並びにこれらに対する 遅延損害金の支払を求めた事案である。  本件特許発明を構成要件に分説すると、A ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられるB 耐熱性ステンレス 鋼製の金属箔において、C 表面粗度Rmaxが0.7〜2.0μmであることを特徴とするD 粗面仕上金属箔であるところ、 本件に顕れた証拠では、被告製品の表面粗度Rmaxが構成要件Cの規定する0.7〜2.0μmの範囲内にあり被告製品が構 成要件Cを充足することを認めるには未だ足りないとしつつ、原告が入手した被告製品に限ってみると構成要件C充足性につい て今後さらに立証がされていく可能性があるとして、被告の先使用権の抗弁について判断した。そして、被告が、本件特許出願 に先立ち、少なくとも構成要件A、B、Dを充足する金属箔を自ら開発し、その製造・販売の準備行為を行っていたことを認定 した上で、原告(引受参加人)が被告製品の少なくとも一部が構成要件Cを充足することの立証に成功したとしても、そのこと 自体がこの先使用権の抗弁における被告旧製品の構成要件Cの充足を推認させる事実となり得るとして、かかる被告旧製品の構 成要件Cの充足性も認定し、本件では、被告は、本件特許出願日より前に、ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用 いられる金属箔として、本件特許発明を知らずに、その製造・販売について、即時実施の意図を有し、かつ、即時実施の意図が 表明されていたといえるから、その製造・販売の事業の準備をしていたとして、先使用権を認め、引受参加人の請求をいずれも 棄却した。
H20.2.21 知財高裁 平成18(行ケ)10538 特許権審決取消請求事件
    本件は、原告がした特許出願についての拒絶査定に対する不服審判請求を成り立たないとした審決の取消しを求めた事案である。  取消事由1については、引用例としては同一でも、そこから把握する技術内容の変更は、本願発明と対比されるべき公知技術の内容 の変更であり、原告に意見陳述の機会を与えねばならなかったというべきで、特段の事情がない限り、特許法159条2項の規定に違 反するが、本願発明の構成は簡素で、材質等も格別のものが使用されておらず、各引用例も程度の差こそあれ、何れも類似した構成で、 各構成を比較対比することに格別の困難性がなく、原告は意見書、審判請求書においても各引用例と比較検討しているので、原告に具 体的な不利益が生じていたとは認められず、原告の主張する根拠も認められないので、上記違法は審決を取り消すべき違法ではないと 判示した。また、取消事由2〜4についても、(1) 原告の主張は、特許請求の範囲に何の言及もなく、明細書の記載にも格別の記載は ないこと、提出した刊行物は本件の出願日後に作成されたもので、公知(周知)技術を推知する資料とはなり得なかったり、原告の主 張を裏付けたり示唆する記載もないなどの理由によって原告の主張は採用できない、(2) 本願発明と引用発明とは、異なる機能、特性 を有することを前提とするものであり、前提において誤っているので採用できない、等と判示し、原告の請求を棄却した。
H20.2.18 大阪地裁 平成18年(ワ)第8836号 特許権不当利得金返還請求事件
    本件は、被告が有する特許権等について通常実施権許諾契約を締結していた原告らが、同契約は原告らの製品が本件特許権 の技術的範囲に属すると誤認して締結したものであるが実際には抵触していなかったことを前提とし、同契約は、@被告が虚偽 の説明をしたため誤認したことにより締結したものであるから詐欺により取り消した、A要素の錯誤により無効である、として 同契約により通常実施料及び経常実施料として支払った金額の返還及びこれに対する遅延損害金の支払を請求した事案である。  @について、ある製品を製造販売する事業を行おうとする事業者には、特許公報等の資料を検討し、その製品と特許権との抵 触関係(侵害するか否か)を判断して、特許権者等からの許諾を受けるか否かを決定することが求められているというべきであ るとした上で、原告が誤信した内容は、本件発明に係る技術分野の製品を製造販売する事業を行おうとする事業者として普通の 知識を持つ者であれば、特許公報を検討することにより容易に知ることができるものであり、被告の説明は、事業者が特許公報 等の資料を検討して本件特許の技術内容を判断するに当たり、技術的範囲の判断を誤らせたり、内容を誤認させたりするような ものということはできず、原告が本件特許公報を見ることを妨げた等の特段の事情もない本件では、被告がセールストークとし て許容される限度を超えた「虚偽の説明」をしたとすることはできないとし、Aについて、原告がその事業のために本件特許の 実施許諾を得ることが不可欠であると錯誤に陥っていたとしても、それは動機の錯誤であり、そのことを被告に表示し、これを 前提として本件契約が締結されたものでなければ、要素の錯誤とすることはできないとした上で、本件ではかかる表示がなく、 これが前提となって本件契約が締結されたとは認めるに足りる証拠はないから、これを契約の要素とすることができないとし、 また、特許公報を読めば容易に認識できることについて認識をしなかった原告らには事業者としての重大な過失があるとし、原 告の請求を全て棄却した。
H19.12.26 知財高裁 H19(行ケ)10209 意匠権 審決取消請求事件
    原告の物品「包装用容器」に係る意匠登録出願が、引用意匠により拒絶査定を受け、不服審判を請求したが請求不成立と されたため、この審決の取消を求めた事案で、本願意匠には、従来の「キャップ」を径方向に大きく拡大させることで、頭 部が目立ちすぎて威圧感を与えたり、容器形状として異様な印象を与えたり、容器との調和を乱したりするなどの欠点を解 消させ、均衡を保つための美感上の工夫が施されており、そのような点でも特徴があるといえ、引用意匠との対比において は、本願意匠は多様なデザイン面での選択肢から相違工夫を施して創作したものであるから、容易に創作することができた とは言えないとして審決を取り消した。
H19.12.25 知財高裁 H19(行ケ)10180 意匠権審決取消請求事件
    原告の物品「プーリー」に係る意匠登録出願が、意匠に係る物品「動力伝導用プーリー」の引用意匠により拒絶査定を受 け、不服審判を請求したが請求不成立とされたため、この審決の取消を求めた事案で、原告は引用意匠に係るプーリーにベ アリングを装着した場合には本願意匠と別異の印象を与えると主張するが、引用意匠に係るプーリーは、ベアリングを装着 しなくても原動プーリーとして使用可能である以上、両意匠に係る物品は共に「プーリー」として共通するから、あえてベ アリングを装着した態様の意匠を対比する必要はなく、また、ベアリング装着の有無の差異は機能上の要請から生ずるもの であり、直ちに美感に影響が生じるものではないから、両意匠の類否の判断において重視することはできない、として原告 請求を棄却した。
H19.12.11 大阪地裁 H18(ワ)14144 意匠権侵害差止等請求事件 
    原告の意匠に係る物品「カーテンランナー」の意匠権を被告が侵害したとして、意匠権に基づく差止めなどを求めた事案 で、原告は、本件登録意匠にはランナー部・支軸部とフック部とを組み合わせて一体とした従前のカーテンランナーにない 構成、ランナー部に対してフック部を回動及び揺動可能にバランス良く組み合わせた構成、を要部として被告物品の意匠と 類似すると主張するが、原告主張の構成はいずれも技術思想であって意匠権によって保護される要部とはいえず、被告物品 の意匠と本件登録意匠とにはフックの全体的形状において一見して目に付く相違があるから、両物品は類似しないとして、 原告請求を棄却した。
H20.1.23 知財高裁 平成19(行ケ)10200 特許審決取消請求事件 
本件は、原告がした特許出願についての拒絶査定に対する不服審判請求を成り立たないとした審決の取消しを求めた事案である。  「筐体の開口部」の意義について、原告は筐体の縁部分を含むと主張し、被告は上記の縁部分を含まないと主張したのに対して、本 願発明では、「筐体の開口部」とは、縁部分を含まない「外に向かって開いた穴の部分」を意味するものと解するのが相当と判示し、 原告の主張は採用できず、審決の認定に誤りはないとした。また、「レンズ板を筐体の開口部における中央部分において各々揺動自在 に軸支する」構成についても、設計的事項に過ぎないとの審決の判断に誤りはないと判示した。また、本願発明の作用効果を周知技術 によっては予測できないとした原告の主張も失当であると判示し、本訴請求を理由がないとして、原告の請求を棄却した。
H20.1.22 東京地裁 平成19(ワ)11981 特許権侵害差止請求事件
本件は、「コンパクト型豆乳・豆腐製造機」に関する特許権を有する原告が、被告らが販売している製品は原告の特許発明の 技術的範囲に属するとして、被告らに対して、特許法100条1項に基づき、製品の製造・販売等の行為の差止めを求めるととも に、民法709条及び特許法102条3項に基づき、不法行為による損害賠償を請求した事案である。
 本件特許発明の構成要件は、「おから槽本体の上部を覆い、前記おから槽本体と分離可能に結合され、前記リテンションカップ に固定的に取り付けられたキャップ」を要素とするところ、被告製品には、「リテンションカップ」に別個の部材として固定的に 取り付けられた「キャップ」に相当する部材が存在しないため、かかる構成要件を充足しない。次に、被告製品の構成が、かかる 構成要件と均等かという点について、均等論のいわゆる第5要件については、禁反言の法理に照らし、均等を主張することが許さ れない特段の事情が存在するかどうかを判断すべきであるから、当初の特許請求の範囲に明確に包含されていたものが補正により 意識的に除外された場合のみならず、当初の特許請求の範囲に包含されているかどうかが不明確であったものが補正により包含さ れないことが明確にされた場合にも、禁反言の法理に照らし、第5要件により、特段の事情が存在するというべきであるとし、本 件特許発明の出願時の特許請求の範囲においては、「リテンションカップ」と「キャップ」との関係については具体的に何も規定 していなかったのであるから、当初から、両者が独立した別個の部材の場合のみを限定して規定していたのか、両者が一部材とし て一体成形されたようなものも包含して規定していたのかについては必ずしも明確ではないが、その手続補正等の出願の経緯にお いて、被告製品のような構成のもの、すなわち、「リテンションカップ」とは別に「キャップ」に相当する独立した部材を有しな い構成のものが、その技術的範囲に含まれないことを明らかにしたものと認められるから、このような場合においては、均等論の いわゆる第5要件の根拠とされる禁反言の法理に照らし、被告製品について原告の均等の主張を認めることはできないと判示し、 原告の請求を全て棄却した。
H19.12.26 知財高裁 平成18(行ケ)10449 特許審決取消請求事件
本件は、原告がした本願発明についての拒絶査定に対する不服審判請求について、特許庁がした請求不成立の審決の取消しを求 めた事案である。争点は、先願の出願日が優先権主張の基礎となる出願の出願日であるかどうか、本願発明と先願発明は実質的に同一 であるかどうか(特許法29条の2)である。  優先権基礎出願と先願の請求項1中のCaO含有量は、前者が「0〜10.0%」、後者は「0〜8.0%」で、先願における含有 量は優先権基礎出願における含有量の範囲に含まれる。しかし、優先権基礎出願明細書には「0〜8.0%」の範囲の数値については、 何ら技術的な意味を示唆する記載はなく、同書の実施例及び比較例におけるCaOの含有量は2.1〜7.5%の範囲であって、Ca Oを「8.0%」含有させたガラス組成物についての開示はないので、同書には「8.0%」を上限とする「0〜8.0%」のCaO 含有量範囲について何らかの技術的意義を示した記述はないと理解するのが自然で、先願発明は優先権基礎出願明細書に記載されてい るということはできない。また、刊行物には「製品のガラス組成において各成分は一般に0.05%以内の範囲で一定でなければなら ない。」、ガラス原料を配合した場合の誤差として、CaO成分については「0.008%」という小さい数値が例示されているので、 「7.5%」の概数として「8.0%」まで包含するような大きさであるとは到底認められない。そうすると、数値的には、「0〜1 0.0%」を減縮すれば「0〜8.0%」になり得るとしても、優先権基礎出願明細書において上限値の「10.0%」を「8.0%」 という特定の数値に変更する理由が見当たらないから、「0〜8.0%」は「0〜10.0%」を単に減縮したものであるとは認めら れないと判示し、審決が本願との関係で先願発明を特許法29条の2所定の発明として同条の規定を適用したことは誤りであるとして、 原告の請求を容認した。
H19.12.8 大阪地裁 平成18(ワ)11880 特許権侵害差止等請求事件
本件は、発明の名称を「遠赤外線放射体」とする特許発明の特許権者である原告が、甲事件被告、乙事件被告及び丙事件被告が製造販売している遠赤外線放射体はいずれも上記特許発明の技術的範囲に属し、同商品を製造販売等する被告らの行為は原告の上記特許権を侵害すると主張して、被告らに対し、特許法100条に基づき、同商品の製造販売等及び同商品のカタログの配付の差止めと同商品、その製造装置及び同商品のカタログの廃棄を求めるとともに、民法709条(特許法102条2項)に基づき、特許権侵害の不法行為による損害賠償を請求した事案である。
 本件発明の構成要件は、「A セラミック遠赤外線放射材料の粉末と、B 全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として換算して0.3以上2.0重量%以下に調整したモナザイトの粉末とをC 共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合物を、D 焼成し、E 複合化してなることF を特徴とする遠赤外線放射体」であるところ、構成要件Cの「平均粒子径」の定義(算出方法)又はその測定方法に関して本件明細書に明示の記載もその手掛りとなる記載もなく、複数ある算出方法ないし測定方法からいずれを選択するかについて、当業者間に共通の理解があると認めるに足りる証拠もないから、本件発明においていかなる算出方法あるいは測定方法をもって平均粒子径の数値を特定するかは不明であり、特許法36条6項2号の明確性の要件を満たしておらず、本件特許は、同法123条1項4号の無効理由を有するとして、原告の請求を全て棄却した。
H19.11.29 知財高裁 平成19(行ケ)10022 特許 審決取消請求事件
 本件は、原告がした本願発明についての拒絶査定に対する不服審判請求について、特許庁がした請求不成立の審決の取消しを 求めた事案である。争点は、本願発明が先願発明と同一であるかどうか(特許法29条の2)である。  本願発明と先願発明の同一性の有無について、本願発明における「第2のインクを第1のインクに隣接してプリントする」ことの 意義は、異なる色領域が接することにより、当該色領域を生成するインクが接触し得る状態でプリントする場合を指すものと理解す べきであるのに対して、先願発明の両インクを同一地点に着弾させるという課題解決手段は、本願発明における両インクを隣接させ る方法と同一であるとはいえないが、カラー画像の形成過程において、カラー画像の内容によっては、両インクが隣接して着弾され、 その結果両インクの接触に至ることは、当業者の技術常識に照らしても自明の事項であり、その場合も同様の作用効果が得られるこ とは明らかであるから、当業者の技術常識を参酌すれば「第2のインクを第1のインクに隣接してプリントする」ことは、先願明細 書に記載されているに等しいと認められ、本願発明と先願発明は実質的に同一であると判示し、原告の主張は採用できない又は理由 がないとして請求を棄却した。
H19.11.8 最高裁第一小法廷判決 平成18年(受)第826号 特許権侵害差止請求事件
 本件は、インクジェットプリンタ用インクタンクに関する特許権を有する被上告人が、被上告人の製造販売したインクジェットプリ ンタ用インクタンクの再生品を上告人が輸入販売する行為について、被上告人の特許権を侵害するとして、上告人に対し、そのインクタ ンクの輸入、販売等の差止め及び廃棄を求めた事案であり、原審(知財高裁平成18年1月31日判決)が、@当該特許製品が製品としての 本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合(第1類型)、又は、A当該特許製品につき第三者に より特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合(第2類型)には、特許権は消 尽せず、特許権者は、当該特許製品について権利行使をすることが許されるものと解するのが相当であるとの判断基準を示して、国内販 売分及び国外販売分のいずれの被上告人製品の再生品の輸入販売行為も、上記第2類型に該当するものとして、特許権を侵害すると認め たのに対して、東京高裁平成13年11月29日判決(アシクロビル事件)と相反する判断があり、特許法の解釈に関する重要な事項を 含むことなどを理由に上告受理の申立がなされた事件である。 最高裁は、本件を上告審として受理した上で、特許権者等が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ、それに より当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは、特許権者は、その特許製品について、特許権を 行使することが許されるとして、上記知財高裁の判断基準を変更したものの、上告人の再生工程における加工等の態様は、単に消耗品で あるインクを補充しているというにとどまらず、インクタンク本体をインクの補充が可能となるように変形させるものであること、使用 済みの本件インクタンク本体を再使用し、本件発明の本質的部分に係る構成を欠くに至った状態のものについて、これを再び充足させる ものであること、インクタンクの取引の実情などを総合的に考慮すれば、加工前の被上告人製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造さ れたものと認めるのが相当であり、原審の判断は、結論において正当である、と判示し、上告を棄却した。
H19.10.31 知財高裁 平成19(行ケ)10062 特許 審決取消請求事件
 本件は、原告らがした本願発明についての拒絶査定に対する不服審判請求について、特許庁が、審判請求時における本件補正 の却下と共にした審決の取消しを求めた事案である。  原告らは、本件審決は、周知技術1〜3の認定等の誤り(取消事由1)、相違点についての容易想到性の判断の誤り(取消事由2)、 請求項2の本件補正に関する手続的瑕疵(取消事由3)により取り消されるべきであると主張したが、裁判所は、取消事由1については、 (1)周知技術1、2は当該技術分野においてよく知られている技術事項である以上、審決において、拒絶理由通知に挙げられない周 知例が示されても、出願人に対する不意打ちとならず、手続上の違法はない。(2)周知技術3については審決の認定に誤りはない。と 判示した。取消事由2については、原告の主張は全て採用できないと判示した。取消事由3については、本件補正を却下した点は手 続上の瑕疵があるが、原告らの@改めて拒絶理由が通知されなかったので、意見書提出・補正の機会を失った、A前記瑕疵は審決の 結論に影響を及ぼす、との主張に対しては、原告らは、本願発明の各請求項について拒絶理由通知を受けて本願発明2につき補正の 機会があり、本願発明2は特許要件がないとの審決についての判断に誤りがないので、他の請求項について特許性の有無を検討する までもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、原告らの各主張に係る瑕疵は審決の結論に影響を及ぼさないと判示し、原告ら の請求を棄却した。
H19.10.1 大阪地裁 平成18年(ワ)第4494号 特許権侵害差止等請求事件
 本件は、@発明の名称を「防災瓦」とする特許権及びA発明の名称を「瓦の成形方法」とする特許権並びにB意匠に係る物品を「平 板瓦」とする意匠権を有する原告が、被告の製造販売等する瓦が上記各特許権の特許発明の技術的範囲に属し、又、上記意匠に類似する ものであるから、被告の行為は上記各権利を侵害すると主張して、被告に対し、当該瓦の製造販売等の差止め等と損害賠償を求めた事案 である。  @原告は、「凹円弧面」にいう「円弧」の形状について、特定部位への応力集中緩和という作用効果の有無を基準として理解すべきと 主張したが、本件明細書には、「凹円弧面」にいう「円弧」の形状について何ら説明はなく、「円弧」の構成を採用したことによる作用 効果も記載されていないこと等から、「凹円弧面」にいう「円弧」については、「円弧」の一般的な意味であって、真円の周の一部分を 意味するものと認めるのが相当であるA被告方法における成形順序は、本件明細書に記載されている成形順序と異なるB被告意匠は、本 件登録意匠とその要部において異なり、本件登録意匠との一致点を凌駕して、これと美感を異にし、本件登録意匠とは非類似である、と 判示し、原告の請求を全て棄却した。
H19.9.11 東京地裁 平成18(ワ)22172 特許権損害賠償請求事件
 本件は、「振動型軸方向空隙型電動機」について特許権を有していた原告が、被告が販売した電動機が上記特許権の特許発明 の技術的範囲に属し、その販売が上記特許権を侵害したものであると主張して、被告に対し、原告に対する損害賠償金及びこれに対 する遅延損害金を求めている事案である。  本件特許発明はコアレス扁平電機子が振動して回転する振動型であるに対し、引用発明は無鉄心電機子が振動して回転するもので あるかどうかについての記載がない。また本件特許発明はコアレス扁平電機子が平面において円板状を形成しないように変形形成さ れたものであるのに対し、引用発明は無鉄心電機子が平面視円板状を形成している。しかしながら、これらの相違があっても、当業 者が引用発明を見て本件特許発明の構成とすることに想到することは容易であるから、本件特許発明は特許無効審判により無効にさ れるべきものと認められると判示し、本訴請求は何れも理由がないとして棄却した。
H19.9.11 大阪高裁 平成19(ネ)790 意匠権 侵害差止等請求控訴事件  
 意匠に係る物品を「金属管継手」とする原告(控訴人)の意匠権を侵害したとして、被告(被控訴人)に対し差止めなどを請求した 事案であり、原告の請求を棄却した原審判決に対して、控訴人は、本件意匠権と公知意匠との間に「止めビス」の1)有無、2)位置、 3)頭部形状、などの差異があり、これらを要部として被控訴人意匠との類否を判断すべきであると主張したが、大阪高裁は、1)公 知意匠には使用時に止めビスが存在することが開示されていることなどから、この点が創作困難と認められないと共に、全体に占める 割合は小さい、2)前記全体に占める割合が小さいため止めビスの位置は微差というべきである、3)頭部形状はありふれた形状であ り、また大きさも小さい、としてこれらのみが要部であるとは認めず、これを前提として共通点及び相違点を対比して、本件意匠権と 被控訴人意匠とは非類似であるとして、控訴人の控訴を棄却した。
H19.9.10 知財高裁 平成19(行ケ)10119 意匠権 審決取消請求事件
 本件は、原告の、意匠に係る物品「工芸用パンチ」の意匠登録出願が拒絶査定を受け、不服審判において請求不成立の審 決を受けたので、この審決の取り消しを求めた事案であり、原告が、1)公知意匠において部材の機能において通常採択される ような形状は要部から除外すべき、2)審決には原告主張の応答が尽くされていない、3)商業的成功を収めた本願意 匠の物品の登録を認めないのは意匠制度の趣旨に反する、4)特徴記載書の提出に拘わらず審決に反映されなかったな どと主張したのに対し、知財高裁は、1)要部から除外すべきは物品の機能を確保するために不可欠な形状である、2)審決書 には結論を導き出すのに必要な限度で記載すれば足りる、3)意匠法3条1項3号の公知意匠との類否判断に商業的成功が影響をお よぼすものとはえない、4)特徴記載書は審査の迅速化を図るためのものであって審決書に判断結果を記載する義務はな い、などと判断して、原告の請求を棄却した。
H19.8.28 東京地裁 平成19(ワ)14650 特許権損害賠償請求事件
 本件は、被告の元従業員である原告が、被告に対し、平成16年法律第79号による改正前の特許法第35条に基づき、原告 が被告に承継させた職務発明に係る特許権について、相当対価の一部の支払を求め、被告が原告に相当対価を支払済みであるし、仮 に不相当な額であったとしても、相当対価を受ける権利は時効消滅したと主張して、争った事案である。  本件判決は、従業者等が取得する相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効は、特段の事情のない限り特許を受ける権利を使用者 等に承継させた時から進行するが、勤務規則等の支払時期に関する条項がある場合にはその時期が消滅時効の起算点になると解する のが相当であると判示した上で、特許法第35条に基づく相当の対価の支払を受ける権利は、法定の債権として権利を行使すること ができる時から10年の経過によって消滅すると解されるので、原告が請求する相当対価の一部は、既に時効消滅したとして、原告 の請求を棄却した。
H19.7.26 東京地裁 平成19(ワ)1623 実用新案権確認反訴請求事件
 本件は、反訴原告が、反訴被告に対し、反訴原告と反訴被告は、本件実用新案の登録出願は反訴原告及び反訴被告共同で行い、 本件実用新案権は各持分2分の1で反訴原告及び反訴被告の共有とする旨の合意があったにもかかわらず、反訴被告は、反訴原告の 知らぬ間に単独で出願し、単独名義で登録したと主張して、反訴原告の共有持分を2分の1とする共有持分権移転登録手続をするこ とを求めた事案である。  実用新案法は、考案者が冒認出願者に対して実用新案権の移転登録手続請求権を有する旨の規定をおいていない。そして、実用新 案権は、出願人を権利者として設定登録により発生するもので、たとえ考案者であっても自己の名義で出願をし、その登録を得なけ れば、実用新案権を取得することはない。このような法の構造に鑑みれば、考案者から冒認出願者に対する実用新案権の移転登録手 続請求をすることを認めているものではないと解されると判示し、本件の反訴原告の請求を棄却した。
H19.6.4 大阪地裁 平成18(ワ)8019 特許出願人変更等請求事件
 本件は、法人格のない社団である原告の構成員等が被告にした情報提供に基づいて、被告が製品を開発したとして、原告が、被 告に対し、@合意又は原告が情報を提供したことに基づき、被告の特許出願の出願人に原告の構成員を追加し、発明者を原告の構成員 に変更することを請求すると共に、A合意に基づき情報提供料の支払、B前記Aの合意がなかった場合、原告に無断で原告が提供した 情報を利用して、被告が製品を開発したことは不法行為に該当するとして損害賠償の支払を求めた事案である。  事実、証拠、弁論の全趣旨から、原告と被告の間に合意があったと認めることはできず、また本件特許出願に係る発明と、原告特許 に係る発明及びその試作品とは全く異なるもので、相互に利用関係はないし、本件情報は、情報提供した当時はもとより原告特許出願 前には周知ないし技術常識であったので、原告の主張はその前提を欠いているもので理由がなく、被告の行為が原告との関係で不法行 為となる事もないと判示し、原告の請求を全て棄却した。
H19.5.30 知財高裁 平成18(行ケ)10463 意匠権 審決取消請求事件  
 本件は、原告の、意匠に係る物品「管継ぎ手」の意匠登録出願が拒絶査定を受け、不服審判において請求不成立の審決を 受けたので、この審決の取り消しを求めた事案で、原告は、引用意匠と本願意匠とにおいて共通する基本的構成態様及び具 体的構成態様について、機能、用途上、創作の余地が残されていない不可避の必然的形態であって、要部となり得ないと主 張したが、本件判決は、機能、用途と意匠的な創作とは別問題であって、機能、用途上、創作の余地が残されていない形態 であったとしても、意匠的な面で創作の余地がなくなるわけではなく、機能、用途の制約からありふれた構成態様にならざ るを得ないとしても、全体として一つの意匠的なまとまりを形成し、看者に視覚を通じてまとまった一つの美感を与えてい る場合、看者の注意を強くひき付ける部分となるとして、原告の請求を棄却した。
H19.5.16 知財高裁 平成18(行ケ)10492 意匠権 審決取消請求事件
本件は、原告の、意匠に係る物品「自動車用タイヤ」の意匠登録出願が拒絶査定を受け、不服審判において請求不成立の 審決を受けたので、この審決の取り消しを求めた事案で、原告は、本願意匠と引用意匠との共通点は従来から存在する特徴 のないものであるから、審決は共通点の評価を誤ったなどと主張するが、意匠の構成態様のうちのある部分が公知であるこ とは必ずしもそれが意匠の特徴を示す要素となり得ないことと結びつくものではないとして、原告請求を棄却した例。
H19.5.15 知財高裁 平成17(ネ)10119 特許権侵害差止等請求控訴事件
本件は、「レンジフードのフィルタ装置」に関する特許権を有する原審原告が、原審被告らに対し、原審被告らが本件差止対象 製品を製造販売して、本件特許権を侵害していると主張して、@本件差止対象製品の製造販売及び販売のための宣伝広告の差止め、A 本件差止対象製品の廃棄、B原審原告に生じたとする損害額の内金及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を、各請求したのに対し、 原審被告らが、@被告製品に対する、本件特許権に基づく製造販売差止請求権の不存在確認、A原審原告が虚偽の事実を告知、流布し ていることを理由とする(ア)告知、流布の差止め、(イ)謝罪広告、(ウ)原審原告らの損害額及びこれに対する遅延損害金の支払 を、反訴請求した事案である。  原判決は、原審原告の本訴請求を全部棄却し、原審被告らの反訴請求のうち、@不存在確認請求、A告知、流布行為の差止請求、B 損害賠償請求、をそれぞれ容認し、謝罪広告の請求を棄却したが、本件判決は、本件発明が特許法29条2項に違背し、無効審判にお いて無効とされるべきものであるとして、原審原告の請求を何れも棄却する一方で、原審被告らの請求のうち、告知、流布の差止請求 は認容したものの、不存在確認を請求する部分に対する訴えは、被告製品が、原審原告が特定した範囲と重複するから不適法というべ きであるとして、その余の原審被告らの請求は、不正競争防止法2条1項14号に該当する原審原告による行為につき、故意過失があ ったとまでは直ちに認めることはできないとして、いずれも棄却した。
H19.4.25 東京地裁 平成18(ワ)19023 実用新案権損害賠償請求事件
本件は、「ディファレンシャルギヤ二段差伝達の無段変速機」に関する実用新案権を有する原告が、被告の製造、販売する車両 に搭載された増速機構について、実用新案権の技術的範囲に属するとして民法709条の損害賠償を請求して争った事案である。  被告装置は、本件考案の構成要件A〜Hの全てを充足しないので、本件考案の技術的範囲に属しないとして、原告の請求を棄却した。
H19.3.29  知財高裁 平成18(行ケ)10430 意匠権 審決取消請求事件  
本件は、原告の、意匠に係る物品「金属製ブラインドのルーバー」の意匠登録出願が拒絶査定を受け、不服審判において 請求不成立の審決を受けたので、この審決の取り消しを求めた事案で、原告は引用意匠との比較において、審決が「概略倒 A字状」と誤認定した点、本願意匠と引用意匠の作図手法の相違を看過した点、に基づいて非類似を主張したが、本件判決 は、両意匠を比較したうえで、「概略倒A字状」である点で共通するとした審決の認定に誤りはなく、また、本願意匠と引 用意匠は作図手法の相違から看者に大きく異なる美感を与えるということはできないから審決が差異点を看過したというこ ともできず、結果的に、両意匠の差異点は共通点が形成する視覚的なまとまりに吸収されてしまう程度のものであるとして、 原告の請求を棄却した。
H19.3.27 知財高裁 平成18(ネ)10084 意匠権 謝罪広告等請求控訴事件
本件は、原判決において、原告保有の意匠に係る物品「ゴルフ用ボールマーカー」の意匠権を、被告が製造し譲渡した物 品に係る意匠が侵害するとして謝罪広告を求めたが、被告物品に係る意匠は原告意匠とは類似しないとの理由で棄却された ので、原判決の取り消しを求めて控訴した事案で、控訴人は本件意匠につき、全体がドーム形状で、表面にエンボス加工を 施して、複数のディンプルを形成し、内部にマグネットを有する点を要部として主張したが、本件判決は、内部にマグネッ トを有する点は本件意匠公報に全く表されてなく、表面にディンプルを形成する点及び全体がドーム形状である点は公知で あり、結果的に比較すべき要部はディンプルの大きさ及び配置の態様であるとして、控訴を棄却した。
H19.3.16 東京地裁 平成18(ワ)9943 意匠権 侵害差止等請求事件
本件は、原告保有の「墓前用収納箱」に係る2つの意匠権に基づき、被告の製造・販売する2つの「墓前用収納箱」について、 製造販売の差止及び廃棄並びに損害賠償を求めた事案で、原告は、2つの意匠権のうちの1つの意匠権に係る意匠と被告の2つ の物品のうちの1つの物品の意匠との比較において、被告の主張する相違点はありふれた形状、デザインの部分に過ぎず、両者 は全体として類似する旨主張したが、原判決は、この原告の主張について、個々の形状を取り出してありふれたものと形容し、 それらの組合わせにより新たな美感を生み出している点を無視するものであるとして、原告の請求をいずれも棄却した。
H19.3.15 知的財産高裁 平成18(ネ)10074 特許権職務発明対価請求控訴事件
 本件は、被控訴人の有していた本件特許権(米国特許権)に係る発明について、被控訴人の元従業者である控訴人が、同発明は、被控訴人会社在職中に関与した控訴人を含む複数の発明者による職務発明であり、控訴人は、発明者の一人として、被控訴人に特許を受ける権利(共有持分)を承継させたものであるとして、特許法35条3項に基づいて、その相当の対価として、内金及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案である。 原判決は、控訴人の請求を棄却したが、控訴審においても、先ず、当事者は準拠法について争っていないので、その準拠法は日本法とされるべきとした上で、控訴人は、研究開発や研究目標の設定に対する貢献をしたとはいえず、また測定方法を独自に考案したと評価することもできないので、控訴人が本件発明の技術的思想の創作行為に現実に加担したということができず、控訴人を本件発明の発明者であると認めることはできないとして、控訴人の請求を棄却した。
H19.2.22 知的財産高裁 平成18(ネ)10051 特許権侵害差止等請求控訴事件
 本件は、控訴人が被控訴人に対し、控訴人が有する第1〜4特許権に基づき、(1)被告製品1、3、4の製造販売の差止め及び廃棄を求めると共に、(2)損害賠償金及び不当利得金の内金と遅延損害金の支払を求めた事案であり、原審では、控訴人の請求をいずれも棄却している。  被告製品1、4はいずれも第1、4特許発明の技術的範囲に属さず、また被告製品2を製造、販売する被告の行為につき、間接侵害の成立をいう控訴人の主張は理由がないので、控訴人の第1、2、4特許に基づく請求は理由がなく、また、第3特許発明は進歩性欠如の無効理由が存在し、無効にされるべきと認められるので、控訴人は被控訴人に対しその権利を行使できないとの理由で、控訴審においてもいずれの請求も棄却された。
H19.1.31 知的財産高裁 平成18(行ケ)10318 意匠権審決取消請求事件
 意匠に係る物品を「プーリー」とするボス部の部分意匠について新規性欠如を理由とする拒絶査定を受け、不服審判を請求したが請求不成立の審決を受けたため、その取り消しを求めた事案で、原告は本願意匠と引用意匠との比較において、リム部、ディスク部、の各々に対する当該両意匠の「位置、大きさ、範囲」の差異点を主張したが、予定されていると解釈し得る位置等の差異は類否判断に影響を及ぼすものではなく、また、意匠登録を受けようとする部分について当該差異点を本願意匠の内容に取り込んで限定して捉えることを前提とする主張は失当である、として原告の請求を棄却した。
H19.1.31 知的財産高裁 平成18(行ケ)10317 意匠権審決取消請求事件
 意匠に係る物品を「プーリー」とするボス部の部分意匠について新規性欠如を理由とする拒絶査定を受け、不服審判を請求したが請求不成立の審決を受けたため、その取り消しを求めた事案で、原告の主張する本願意匠と引用意匠との比較におけるプーリー全体に対する位置及び形状の差異について、被告は、両意匠は共に共通する位置で、格別特異な形状でもないと反論したが、当該位置の差異は、単に共通する位置ではなく、ディスク部に相違点を有するプーリーにおいての差異であり、また、当該形状の差異は、創作容易性が否定できないとしても、前記位置の差異に基づいては形状の共通点を凌駕して本願意匠と引用意匠とにおいて異なった美感をもたらし、類否判断に影響を及ぼすものである、として審決を取り消した。
H19.1.30 知的財産高裁 平成18(行ケ)10451 意匠権審決取消請求事件
 意匠に係る物品を「鍵材」とする部分意匠について工業上利用不可能を理由とする拒絶査定を受け、不服審判の請求をしたが請求不成立の審決を受けたため、その取り消しを求めた事案で、原告は、図面が不明りょう又は不明確との点に関して、審査段階では意見書提出時、審判段階では請求時に、現物、及び参考斜視図、を提出したが、これらは願書に添付する図面に代えてひな形、見本を提出することができると規定する意匠法6条2項に則ったものとは認められず、現物に基づいて本願の意匠が特定されるということができない、として原告の請求を棄却した。
H19.1.25 大阪地裁 平成17(ワ)9396 特許権侵害差止等請求事件       
 本件は、発明の名称を「車両運転モード表示装置」とする特許権を有する原告が、車両運転モード表示装置を製造販売する被告に対し、特許権に基づき被告装置の製造販売等の差止め、廃棄及び特許権侵害に基づく損害賠償を請求した事案である。  本件特許発明と、出願前に頒布された引用例に記載された引用発明とでは、本件特許発明が、テスト走行の全工程の速度変化をグラフにして示す全走行速度データであるに対し、引用発明は、全工程の速度変化を示すのか、一部の工程の速度変化を示すのかが明らかでない点で相違するが、本件特許発明の課題は当業者であれば容易に想到し得たものであると認められ、また作用効果も引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のもので、特許法29条2項に違反して特許されたものであるとして、原告の本訴請求を棄却した。
H18.12.21 大阪地裁 平成18(ワ)7014 意匠権侵害差止等請求事件
 本件は、原告が保有する「ブロックマット」を物品とする意匠権に基づいて被告意匠の物品の製造販売の差止めと不法行 為に基づく損害賠償を請求した事案で、原告は「本件意匠の出願の後に同物品の別の意匠登録出願をし、本件登録意匠に類 似するとして拒絶査定が確定した後願意匠と、被告意匠とが同一又は類似するから、当該被告意匠もまた本件登録意匠と類 似する」と主張したが、後願意匠ついて特許庁がなした拒絶査定の理由は裁判所に対して何ら拘束力を持つものではな く、意匠の類否の判断は「本件登録意匠」と「被告意匠」とを対比すれば足りる、として原告主張を採用せず、前記両意匠 を非類似と判断して、原告の請求をいずれも棄却した。
H18.12.20 知的財産高裁 平成18(ネ)10056 特許権損害賠償等請求控訴事件
 本件は、「電話の通話制御システム」の発明に係る本件特許権1及び本件特許権1に係る特 許出願を親出願とする分割特許出願である「電話の通話制御方法」の発明に係る本件特許出願2を 有する控訴人が、国内及び国際電話サービスを提供する被控訴人に対し、被控訴人が提供する同サ ービスが本件特許出願1,2を侵害すると主張して、不法行為に基づく損害賠償等の支払を求めた 事案である。原審では、控訴人の請求を棄却している。
 本判決は、原審と同様の @本件特許発明1についてなされた補正は要旨変更で、補正日を基準として判断した場合、乙3〜 5文献に記載された発明に基づいて容易に発明できるので、本件特許権1は特許法29条第2項に 違反してなされたものである。A本件特許発明2についてなされた補正は、当初明細書等に記載され た事項の範囲内で、特許請求の範囲を増加等した補正と認められないから、本件出願2は分割出願 の要件を満たさず、またその補正は、本件特許発明2に係る特許出願の当初明細書等に記載した事 項の範囲内においてなされたものとも認められないので、特許法17条の2第3項に反するもので ある。の理由で請求を棄却し、当審における控訴人の主張を全て採用しなかった。
H18.11.21 知的財産高裁 平成17(ネ)10125 特許補償金請求控訴事件
 本件は、被控訴人の従業者であった控訴人が、被控訴人に対し、物質発明と用途発明である本件各発明がいずれも控訴人 を共同発明者の一人とする職務発明であり、その特許を受ける権利の共有の持分を被控訴人に承継させたと主張して特許法35 条3項所定の相当の対価及び遅延損害金の支払を求め、原審で、控訴人の請求が棄却されていた事案である。  本件判決も、原審と同様に控訴人の本件物質発明に係る相当対価請求権は、既に時効により消滅したというべきであるとして 棄却した。また、本件用途発明に係る相当対価請求に関する部分は、被控訴人が本件用途発明を排他的、独占的に実施し、又は 実施するところにより得られる利益の額を「発明により使用者等が受けるべき利益の額」と認め、これから本件用途発明がされ るについて被控訴人が貢献した程度に相当する金額を差し引いた額を、共同発明者で平等に分けた額等の支払を求める限度で容 認し、その余の請求は棄却した。
H18.10.30 東京地裁 平成18(ワ)13406  意匠権・謝罪広告等請求事件
 本件は、被告が製造し、販売促進品として無償譲渡した「ゴルフ用ボールマーカー」の意匠が同物品に係る原告保有の意 匠権を侵害するとして、原告が被告に対して謝罪広告の掲載を求めた事案で、ゴルフボールを半分にした部分を上部とする 本件意匠と被告意匠の物品分野ではゴルフボールらしさのみが求められ、ディンプルの詳細は要部とはなり得ないから、基 本的な構成を同一とする両意匠は類似するとの原告の主張に対し、当該物品分野において看者の注意を惹くのは地面上に配 されて視認できるディンプルの施された上面であり、ゴルフボールにディンプルを配することは公知で、しかもゴルフボー ルを物品とする意匠登録においてはディンプルの具体的な配置や形状などの相違が見られるから、ゴルフボールを模したデ ザインの当該物品においても上面、特に各ディンプルの形状や配置を要部として把握すべきであるとして、複数種の径のデ ィンプルを独特の配置した本件意匠と、略同径のディンプルを相互に近接配置した被告意匠とは非類似と判断し、原告の請 求を棄却した。
H18.10.25 知財高裁 平成18(行ケ)10237 意匠権・審決取消請求事件  
 本件は、原告の「電車おもちゃ」を物品とする意匠登録出願が、拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を請求したが請求不 成立の審決を受け、この審決の取消しを求めた事案で、原告の、当該物品における新幹線300系のぞみをモデルとした本 件意匠と引用意匠とは、実在モデルの特徴を生かしつつ「電車おもちゃ」として創意工夫を加えてデフォルメしていて、そ の部分を要部とすべきであるとの主張に対して、実在モデルに由来しない構成態様が意匠の特徴であるとしても、本願意匠 と引用意匠との対比において、実在モデルとの対比における特徴部分が当然に看者の注意を引くということができず、その 他の原告主張の特徴部分はいずれも引用意匠と比較して看者に格別な美感を与えるというものとはできないとして、原告の 請求を棄却した。
H18.10.4 知的財産高裁 平成17(ネ)10111 特許権侵害差止等請求控訴事件
 本件は、透過形スクリーンの発明に係る特許権を有する控訴人が、本件スクリーンを製造 販売する被控訴人に対し、本件スクリーンが控訴人の特許発明の技術的範囲に属し、その製造販 売が控訴人の特許権侵害であると主張し、被控訴人に対し、本件スクリーンの製造販売等の差止 めと、本件スクリーンの宣伝広告に係るウェブページの削除及び本件スクリーンの廃棄を求める と共に、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金を求め、原審で、控訴人の請求を棄却した事案 である。  本件判決は、本件発明は引用発明1及び引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすること ができたものであり、引用発明1に引用発明3を適用することは容易でないとする根拠として、 控訴人が挙げる点は、全て採用することができないとして、原判決を維持した。
H18.9.20 知財高裁 平成18(行ケ)10088 意匠権・審決取消請求事件
 本件は、意匠に係る物品「金属製ブラインドのルーバー」の意匠出願の拒絶査定に対する不服審判請求に対して、「公知意匠」 である御簾垣の組子における反割竹の形状を、「引用意匠」である建造物笠木の装飾用ホルダ材に採用するのは当業者が容易に 創作できた(意匠法第3条2項)として請求不成立と審決されたため、同審決の取消しを求めた事案で、意匠法3条2項は一般需 要者の立場からみたものではなく当業者の立場からみた創作の容易性を登録要件としたものであり、「本件意匠」「引用意匠」 「公知意匠」は互いに機能・構造の異なる物品であることから、「本件意匠」の分野における当業者が、「公知意匠」「引用意匠」 に基づいて容易に創作できたとは言えないとして審決を取り消した。
H18.9.20 知財高裁 平成18(行ネ)10001 実用新案権侵害差止等
請求控訴事件
 本件は、名称を「テレビハンガー」とする考案につき実用新案権を有する控訴人が、被控訴人の製造販売する製品は同考案の 技術的範囲に属するとして、被控訴人に対し、被控訴人製品の製造等と損害補償金等の支払を求めた事案である。  原審では、控訴人の請求を棄却したが、控訴審においても、本件実用新案登録の請求項1,2の考案は引用刊行物1,2に基づ いて当業者がきわめて容易に相当することができたとして、控訴人の本訴請求は、原判決の「事実及び理由」欄の第4記載のとおり 何れも理由がないとして棄却した。
H18.8.24 知財高裁 平成18年(行ケ)第10136号 意匠権審決取消請求事件
 「ピアノ補助ペダル」の意匠登録出願のアタッチメントを示す参考斜視図、アタッチメントを取り付けた使用状態を示す参 考斜視図などを分割した新たな意匠登録出願について受けた拒絶査定の不服審判の請求不成立審決の取り消しを求めた事案 であるが、「参考図」とは、意匠登録を受けようとする意匠のように所定の様式に従って厳密に記載された図面により示さ れたものでも、意匠に係る物品を明らかにしているわけでもないから、意匠制度の下で保護することが予定されているとい うことはできないとして、意匠法10条の2第1項の「二以上の意匠」で言う意匠とは「意匠登録を受けようとする意匠」 に限定されず、「意匠登録出願に表現された意匠」を含むから、「参考図」の分割が認められるとの原告の主張が棄却され た事例。
H18.8.4 東京地裁 平成17(行ウ)609 PCT出願 裁決取消等請求事件
 本件は、原告が世界知的所有権機関の国際事務局にした国際特許出願に対して日本特許庁にした審査請求について、特許庁 長官がした手続却下処分の無効確認と、行政不服審査法に基づく異議申立の棄却決定の取消しを求めた事案である。  本件出願日である1996年10月10日は、体育の日で祝日であったが、審査請求時には第2月曜日が体育の日となって、祝日でなく なった場合、改正法附則2条4項の従前の例によるとの規定の適用は無く、期間の末日は10月10日で、特許法3条2項により その日の翌日にはならないとの特許庁長官の判断に違法はないとした。また、裁決の取消しの訴えで主張できる違法事由は、裁決 固有の違法に限られるので、本件処分の実体的判断の誤りをいう原告の請求は、裁決固有の違法の主張が無く、主張自体失当なも のであるとして、原告の請求をいずれも棄却した。    
H18.7.20 大阪地裁 平成17(ワ)10821 特許権侵害差止請求事件
 本件は、被告らが保守管理している立体駐車場装置には、原告の特許発明を使用した台車固定装置が設置されており、その 保守管理をする行為は原告の特許権を侵害するとして、原告が、被告Aに対し本件特許権の設定登録日からの実施料相当額の不当 利得の返還を、その余の被告等に対し、本件台車固定装置の点検、修理及び部品の交換の差止めを求めた事案である。  本判決は、被告らが物の発明である本件特許発明を実施しているといえるのは、被告らの行為が、「生産」「使用」「譲渡等」 「輸入又は譲渡等の申出」の何れかに該当する場合であり、「使用」とは、発明の目的を達するような方法で当該発明に係る物を 用いるものと解すべきであるから、単に、台車固定装置の点検、修理及び部品の交換をしただけでは、この本件特許発明の目的を 達することはできず、本件台車固定装置の「使用」に該当しないと判示した上、被告Aは本件台車固定装置について後に特許権者 となる原告から適法に譲渡を受けたもの故、当該本件台車固定装置については、後に設定登録される本件特許発明はその目的を達 成し消尽したと解すべきで、その後被告らがこれを使用しても本件特許権の侵害とはならないとし、原告の各請求は理由がないと して、原告の請求を棄却した。
H18.7.8 知財高裁 平成18年(行ケ)第10004号意匠権審決取消請求事件
 本件は、意匠に係る物品「スポーツ用シャツ」の「部分」意匠登録出願に対する拒絶査定不服審判の請求不成立の審決の取 り消しを求めた事案で、@審決が引用意匠との一部の差異点を看過したとの取消事由については「看過した差異点は軽微で あって類否判断に影響を及ぼすとは言えない」と、A引用意匠との共通点がスポーツ用シャツの形態としてごくありふれた ものであるから、看者の注意を引くものということはできず、審決が意匠の類否判断を誤ったとの取消事由については、意 匠の類否判断は、一般需要者の立場からみて、当該意匠に、新たな創作的工夫により独自の美感を与える要素を付加するも のがあるか否かの観点から、当該意匠と公知意匠について混同が生ずるおそれがあるといえるほどに似ているかどうかによ って決することになるとした上で、共通の形状の範囲内で具体的形状に相違があるとしても、その相違によって看者に相異 なった格別な美感を与える要素が付加されない限り、一般需要者の立場からみた美感において異なるところはないとして、 原告の主張は、採用することができないと、B物品の類否判断の誤りについては「出願当初に上着としていたところ、その 後スポーツ用シャツと補正し、この補正が容認された事実から見ても、引用意匠としたセーターもまた上着の一種であるか ら、物品は類否している」として、いずれの原告の請求も棄却した。    
H18.3.2 大阪地裁 平成17(ワ)3057 実用新案権侵害差止等請求事件
 本件は、「足場部材のロックピン」に関する登録実用新案の共有権者である原告らが、被告が製造販売等している 製品が実用新案の技術的範囲に属し、その製造販売等が原告らの実用新案権の侵害にあたると主張して、被告に対し、被 告製品の製造販売等の差止め等と、損害賠償を請求した事案である。
 本件考案と引用考案1とでは、他の足場部材の孔に進入していたピン部材を該孔から抜くための構成(構成要件D)が 相違しているが、当該構成要件Dは、引用考案1と関連性がある技術分野の引用考案2(引用考案3)に記載されている から、当業者が引用考案1の他の足場部材の孔に進入していたピン部材を該孔から抜くための構成部分に引用考案2(引 用考案3)の当該構成を採用することにきわめて容易に想到し得たものと認められる。また、その作用効果も、引用考案 1に引用考案2を適用することによって、当業者が予測できる範囲内のことと認められる。したがって、本件考案は、実 用新案無効理由が存在し、実用新案法30条、特許法104条の3第1項により本件実用新案権を行使できないと判示し、 原告らの請求を棄却した。
H18. 2. 2 知財高裁 平成17(行ケ)10620 意匠権 審決取消請求事件
 本件は、被告の「運搬車用キャスター」の意匠権について原告が無効審判の請求をし、請求不成立となったため、審決の 取消を求めた事案であるが、原告が本件意匠権と引用意匠との共通点について、知財高裁平成17年(行ケ)第10274号事件 の判決を引用して、「引用意匠における共通点の組合せが、公知意匠に既に見られ、また、既にありふれたものとなってい たとしても、本件登録意匠及び引用意匠において、意匠全体における支配的部分を占め、意匠的まとまりを形成し、看者の 注意を強く惹くときは、両意匠に共通して見られる特徴として類否判断を行うのは、当然というべきである。」と主張した のに対し、「当該判決例は引用意匠に言及したに過ぎないものであって、本件登録意匠と引用意匠との類否を厳密に検討し て判示したものでないことは、その説示に照らして明らかであり、本件登録意匠と引用意匠との類否が争われている本訴に おいて、原告主張の共通点を認定する根拠となるものではない」などとして原告の請求を棄却した。
H18. 1.17 大阪地裁 平成16(ワ)14355 意匠権 意匠権侵害差止等請求事件
 本件は、原告の「手さげかご」の意匠権に基づき、被告の手さげかごの製造販売の差止め等を請求した事案で、被告の手 さげかごとこれより先に被告が製造販売していた従来品の意匠が類似し、かつこの従来品を本件登録意匠に類似する類似意 匠3の出願日に既に製造販売していた事実から、本意匠の意匠権者を優遇する特別規定のない旧意匠法10条1項に基づく 出願が登録された類似意匠3は、本意匠である本件登録意匠と類似意匠3の両出願の中間で公知となった被告の従来品の意 匠が介在するので、旧意匠法48条1項1号の無効事由により無効と認められ、本件登録意匠の要部認定に類似意匠3を参 酌するのは相当でないと判断し、そのうえで、本件登録意匠と被告の手さげかごの両意匠について、全体を観察し、物品の 性質、用途、使用態様や公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌し、取引者・需要者の注意を最も惹きやすい部分を 意匠の要部として構成態様の共通性の有無を中心に観察し、全体の美感の共通性の有無を判断した結果、両者は類似してい ないとして、原告の請求をいずれも棄却した。
H18. 1.18 知財高裁 平成17(行ケ)10643 意匠権 審決取消請求事件
 本件は、原告が、「建築用壁板材」の意匠出願の拒絶査定を不服として審判請求をしたが審判請求不成立の審決がされた ため、同審決の取消しを求めた事案で、本願意匠の類否判断における要部認定に際し、需要者とは施工業者や設計業者であ って建築物の購入者ではないとの原告主張に対し、本願意匠の壁板材の需要者は施工業者や設計業者であろうことは容易に 推測できる一方、建築物の購入者や注文者が、建築物の外観に影響を及ぼす壁板材に関心を有することも容易に推測でき、 建築用壁板材の選定をすることも想定し得るから、需要者を施工業者や設計業者のみに限定し、建築物の購入者ないし注文 者を無視することは相当でなく、また、施工業者や設計業者が、設計及び施工の観点から原告主張の要部の形状に関心を持 つことも推測されるが、意匠としての評価は必ずしも設計・施工上の関心と一致するものではないとして請求を棄却した。
H17.12.15 大阪地裁 平成16(ワ)6262 意匠権 侵害差止等請求事件
 本件は、「化粧用パフ」の部分意匠登録を有する原告が、被告の製造販売する物品の意匠が本件登録意匠と類似するとし て、被告に対し製造販売の差止め及び損害賠償を求めた事案で、両者の物品及び意匠が類似し、本件意匠権に無効理由もな いため、原告の請求の請求は理由があると判断されたが、損害賠償額について「本件登録意匠は部分意匠であって、これと 類似する被告意匠は被告物品の一部を構成するものであるから、本件意匠権侵害により原告が被った損害と推定される被告 が受けた利益の額とは、被告物品のうち被告意匠に係る部分の製造販売により被告が受けた利益の額ということになり、そ の額は、同部分の被告物品全体に占める価額の割合等を基準に、被告物品全体の利益に対する同部分の寄与度への寄与率を 50%とするのが相当である」と判断した事例。
H17.12.22 知財高裁 平成17(ネ)10112 意匠権 損害賠償等請求控訴事件
 本件は、控訴人の有する「前立腺治療器」の登録意匠に基づき、損害賠償等を求めた事案であるが、原審において、本件 意匠登録は無効審判により無効にされるべきものと認められるから、控訴人は被控訴人に対して本件意匠権に基づく権利行 使をすることはでないと判断されたことに対し、被控訴人が本件意匠登録の無効を主張することが権利の濫用又は信義則違 反として許されないとの主張が認められるべきであるとして控訴した事例であるが、知財高裁は、「意匠権侵害を理由に差 止め等を求められた者が、意匠法41条、特許法104条の3に基づく権利を行使して、当該意匠に意匠登録無効審判事由 があると主張することは、法で認められた権利の行使であって適法である、また、控訴人と被控訴人との間の合意の具体的 内容は不明確であるのみならず、関係証拠を総合しても、控訴人と被控訴人とが本件意匠登録の有効性を争わない趣旨の合 意をしたと認めることはできない」として控訴を棄却した。
H18.2.28 東京地裁 平成17(ワ)4581 特許権侵害差止等請求事件
 魚釣用電動リールに関する特許権を有する原告が、魚釣具及び釣具関連用品の製造、販売等を業として行な っている被告に対し、被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属し本件特許権を侵害するとして、特許法10 0条に基づき、被告製品の製造、販売の差止め及び廃棄を請求するとともに、民法709条に基づき、損害賠 償を請求した事案である。
 被告製品はモータ出力調節体が2つ存在して、本件特許発明の構成要件Bの「単一のモータ出力調節体」を 充足しない上、本件特許発明は、本件特許出願前に頒布された引用例発明2に、本件特許出願前に頒布された 乙4、5号証に記載された発明を組合わせることで当業者が容易に発明をすることができたもので進歩性を欠 き、特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから、原告は特許法104条の3により権利行使 することができないと判示し、原告の請求を棄却した。
H18.1.31 知財高裁 平成17(ネ)10021 特許権侵害差止請求控訴事件
 本件は、発明1の技術的範囲に属する控訴人製品を、発明10の技術的範囲に属する方法で製造販売してい る本件特許権者(控訴人)が、インク費消後の使用済みの控訴人製品にインクを再充填して製品化した被控訴 人製品を輸入販売している被控訴人に対し、被控訴人製品の輸入、販売等の差止め及び廃棄を求めた事案である。
 知財高裁は、以下のように判示して、原判決を取り消し、控訴人の請求を認容した。
1.控訴人製品が国内販売分である場合について
 インク費消後にインクを再充填する行為は消耗部品の交換に該当し、また、当初のインク費消により特許権 が消尽したとも言えないので、特許製品が耐用期間を経過して効用を終えた後に再使用又は再生利用された第 1類型には該当しない。一方、被控訴人製品中の部材は、発明1の本質的部分を構成する部材の一部に当たる から、第三者により特許発明の本質的部分の全部又は一部を加工又は交換された第2類型に該当する。従って、 発明1に係る本件特許権は消尽せず、控訴人は、被控訴人に対し、発明1に係る本件特許権に基づき、被控訴 人製品の輸入、販売等の差止め及び廃棄を求めることができる。
 また、発明10の成果物である控訴人製品も、当初のインク費消をもって前記第1類型に該当するとは言え ないが、丙会社によって発明10の本質的部分を構成する工程により被控訴人製品として製品化されたことで 前記第2類型に該当するから、控訴人は、発明10に係る本件特許権に基づく差止請求権等の行使が許される。 一方、方法の使用については、発明1に係る本件特許権が消尽しない以上、同様の理由で、丙会社が発明10 の技術的範囲に属する方法により生産した成果物である被控訴人製品について、控訴人が発明10に係る本件 特許権に基づく権利行使は許される。また、本件において、控訴人及び控訴人の許諾を受けた者が発明10に 係る方法を使用してのインクタンク製造のための製造機器ないし原材料等の販売といえないから、控訴人によ る発明10に係る本件特許権に基づく権利行使が許されないということはできない。従って、発明10に係る 本件特許権に基づいても、控訴人は、被控訴人に対し、被控訴人製品の輸入、販売等の差止め及び廃棄を求め ることができる。
2.控訴人製品が国外販売分である場合について
 物の発明に係る特許権は、国内販売分の前記場合と同様に、控訴人は、被控訴人に対し、発明1に係る本件 特許権に基づき、被控訴人製品の輸入、販売等の差止め及び廃棄を求めることができる。
 一方、物を生産する方法の発明に係る特許権のうち、成果物の使用、譲渡等も、国内販売分の前記場合と同 様、控訴人は、被控訴人に対し、発明10に係る本件特許権に基づき、被控訴人製品の輸入、販売等の差止め 及び廃棄を求めることができる。また、特許発明に係る方法の使用をする行為は、控訴人及び被控訴人の許諾 を受けた者が発明10に係る方法を使用してのインクタンクの製造のための製造機器ないし原材料等を販売し たとは言えないため、控訴人は、被控訴人に対し、発明10に係る本件特許権に基づき、被控訴人製品の輸入、 販売等の差止め及び廃棄を求めることができる。
H17.12.28 知財高裁 平成17(ネ)10103 特許権侵害差止等請求事件
 本件は、発明の名称を「施工面敷設ブロック」とする特許発明の特許権者である控訴人が、被控訴人製品を 製造販売する被控訴人に対し、その製造販売の行為が本件特許権を侵害するとして、本件特許権の基づき、損 害賠償を請求した事案である。
本件発明の構成要件Aの「ブロック」は、「コンクリートブロック」及びそれに類する人工素材から成る成 形品であって、人工素材とは言えない「自然石」を包含しないものと解すべきであるとして、被控訴人製品は、 いずれも本件発明の構成要件Aを充足するものとはいえず、本件発明の技術的範囲に属しないと判示し、控訴 人の請求を棄却した。
H17.11.24 大阪地裁 平成16(ワ)8657 意匠権 損害賠償請求事件
 本件は被告らが製造販売する輸液バッグの意匠が、原告の所有する意匠権に類似し、その製造 販売が意匠権を侵害するとして、被告らに対し損害賠償及び遅延損害金の支払を請求した事案で あるが、「被告らの提出した証拠は本件登録意匠の要部であるダンベル形状のシール部が示され ていないものである」との被告の先使用による通常実施権の成否についての原告の主張に対し、 被告らの行為の全経過を判断した結果、被告らは、本件登録意匠に係る意匠を知らないで、自ら これに類似する意匠を創作し、本件登録意匠に係る意匠登録出願の際、現に日本国内において本 件登録意匠に類似する意匠の実施である事業をし、ないしその準備をしていたと認められるから、 その実施ないし準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において、本件登録意匠について通 常実施権を有するとして原告の請求を棄却した事例。
H17.11.16 東京地裁 平成15(ワ)29080 特許補償金請求事件
 本件は、被告の有していた2件の特許権に係る発明について、被告の元従業員である原告が、同発明2件は 被告在籍中にした職務発明で、被告に特許を受ける権利(共有持分)を承継させたとして、特許法35条3項に基 づき、相当の対価及び遅延損害金の支払を求めたのに対し、被告は、1件(本件物質発明)は原告が発明者ではな いとすると共に、対価請求権は時効により消滅していると、他の1件(本件用途発明)は被告において利益を得て おらず、既に支払った対価を超える請求権は発生しないので、原告の対価請求権は認められないと主張して争った 事案である。本件物質発明の対価請求権は、登録前に実施されているから、登録補償及び実績補償は登録時から時 効期間が進行し、既に10年を経過しているので、被告の主張通り時効により消滅していると判示した。また、本 件用途発明は発明の内容での承認を受けておらず、それを効能・効果として掲げていないので、被告による本件物 質発明の実施品である製剤の販売が、本件用途発明を排他的に独占する利用形態であるといえず、被告において、 本件用途発明を排他的に独占することが可能となったことによって受けるべき利益があると認められないこと、ま た、本件用途発明に係る特許権について、被告から他者に実施許諾がされたことも、他者に当該発明の実施を禁止 することにより得られた利益があることを示す事情もないことから、被告から原告に支払われた出願補償、登録補 償を超えて原告に支払われるべき対価は認められないと判示し、原告の請求を棄却した。
H17.10.31 知財高裁 平成17(ネ)10079 意匠権侵害差止等請求控訴事件
 本件は意匠に係る物品名「カラビナ」の意匠権を有する控訴人が、被控訴人に対して形状が類似する「アクセサリー」の販売等の行為が前記意匠権を侵害するとして、被控訴人の商品等の販売等の差止め及び廃棄並びに損害賠償を請求した事案 で、控訴人の主張する「意匠に係る物品」欄に『カラビナ』と記載するが「意匠に係る物品の説明」欄に『登山用具や一般 金具として使用される他、キーホルダーやチェーンの部品等の、装飾用としても使用されるものである』と記載しているか ら、被控訴人が販売等を行う『キーホルダー』も本件意匠権の範囲に属すると主張したが、『登録意匠における物品の範囲 は「意匠に係る物品」の欄に記載された物品の区分によって確定されるべきものであり、「意匠に係る物品の説明」の欄の 記載は「意匠に係る物品」の欄に記載された物品の理解を助けるためのものであるから、被控訴人商品と本件登録意匠に係 る物品とは物品の使用の目的、使用の状態等が大きく相違し、具体的な取引の場で被控訴人商品と本件登録意匠に係る「カ ラビナ」とを混同するおそれがあるとは認め難い』から、被控訴人商品は、本件登録意匠の権利範囲に属するとはいえず、 本件意匠権の効力は及ばないとして控訴人の請求を棄却した事例。
H17.10.11 大阪地裁 平成16(ワ)3265 特許権侵害差止等請求事件
 本件は、炭酸飲料用ボトルの製造方法の特許権を有する原告が、被告の用いる炭酸飲料用ボトルの製造方法は 原告特許権に係る特許発明の技術的範囲に属すると主張して、同方法による被告製品の製造・販売の差止等を求める と共に、損害賠償を請求した事案である。本件発明は、1次ブロー工程後に各移動金型を前進させた状態であること が要件であるのに対し、被告の製造方法は、1次ブロー工程の完了前に各移動金型の前進が終了することになるので、 本件発明の構成を充足せず、本件発明の技術的範囲に属しないと判示して、原告の請求を棄却した。
H17. 9.28 知財高裁 平成17(行ケ)10274 意匠権 審決取消請求事件
 意匠に係る物品を「キャスター」とする原告の登録意匠が無効とされた審決の取消を求めた事案で、「引用意匠の出願以 前から存在する公知意匠の存在を前提として、引用意匠が公知意匠との関係で意匠的創作として有する特徴点を明確にした 上で、登録意匠との類否判断を行えば、登録意匠と引用意匠は非類似である。」との原告の主張に対し、「意匠法3条1項 3号該当性の判断においては、登録出願に係る意匠が公知の意匠に見られないような看者の注意を惹く点を有するかどうか を検討すれば足り、その際、当該対比に用いる公知意匠以前の公知意匠に見られない特徴的部分の範囲を確定することを要 するものではない。」と判示して原告の請求を棄却した事例。
H17. 9.15 大阪高裁 平成17(ネ)570 意匠権侵害差止等請求控訴事件
 意匠に係る物品を「床束」とする原告(控訴人)の登録意匠を侵害したとして、被告(被控訴人)に対し、差止め及び損害賠償を求めた事案において、「意匠公報の図面上は、ターンバックルに縦線が存在するため角部がとがったようなイメージ図となっているが、実際上、この種ターンバックルは鋼製であるため、略正方形状の角筒状であっても、その角はとがった形状では決してない。」として意匠の構成の特定を争った原告(控訴人)の主張に対し、登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面又は写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならないとする意匠法24条を引用して、本件意匠に係る物品が鋼製であるとの記載はなく、そのことを示唆する図面等の添付もないことを理由に原告(控訴人)の主張を採用しなかった事例。
H17. 9.13 知財高裁 平成17(行ケ)10422 意匠権 審決取消請求事件
 意匠に係る物品を「輸液バッグ」とするの被告の登録意匠についての無効審判が請求不成立とされた審決の取消しを求めた事案において、審決には、本件登録意匠の要部を参考図に示されているにすぎない形状、模様に基づき認定した違法があるとの原告の主張に対して、意匠法施行規則3条を引用して、参考図と6面図との間に明らかな矛盾があるといった特段の事情がない限り、6面図とともに参考図をも参照して意匠を認定すべきであると判示して原告の請求を棄却した事例。
H17.9.5 大阪地裁 平成16(ワ)12860 特許権侵害差止等請求事件
 本件は、ケースに関する特許権を有する原告が、被告によるDVD貸出用ケースの製造販売が、上記特許権を侵害すると主張して、その差止め等と損害賠償を請求した事案である。本件発明は、その出願前に公開された米国特許公報に記載された発明と認められ、特許法29条1項3号に該当し、特許無効審判により無効にされるべきものであると判示して、原告の請求を棄却した。
H17. 8.25 知財高裁 平成17(行ケ)10392 意匠権 審決取消請求事件
 本件は、「道路用防獣さく」の意匠権者である原告が、被告請求の無効審決の取消しを求めた事案である。 本判決は、公知意匠との相違点の創作性について、『意匠の完成に至る経緯や、出願前における公知意匠の技術的不備を 補完するために創作されたという技術的・形状的理由を忖度(そんたく)することなく判断することはできない』との原告主張に対し、その相違点は『「防獣さく」の本来の目的から当然考えつくことでもあるから格別の創作性を認めることはできず、また、 同一分野に属する公知の態様からはこれらを組み合わせた態様とすることも当業者であれば容易になし得る』と示し、原告 の請求を棄却した。
H17.8.30 知財高裁 平成17(ネ)10069 特許権侵害差止等請求控訴事件
本件特許権の特許権者である控訴人と同人から専用実施権の設定登録を受けた控訴人会社が、被控訴人の製造販売する被控訴人装置が本件特許発明の技術的範囲に属すると主張して、控訴人会社は、特許法100条に基づく被控訴人装置の製造販売の差止めと同法102条3項に基づく損害賠償を、控訴人は、同法65条1項に基づく補償金と102条3項に基づく損害賠償を、それぞれ被控訴人に求めた事案である。  本判決は、本件特許発明に係る特許は、進歩性がなく特許無効審判により無効にされるべきものであり、控訴人らは本訴請求に係る権利を行使できないものと言うべきであると判示して、控訴人らの本訴請求を全て棄却した。
H17. 8.31 東京地裁 平成17(ワ)2065 意匠権 損害賠償等請求事件
本件特許権の特許権者である控訴人と同人から専用実施権の設定登録を受けた控訴人会社が、被控訴人の製造販売する被控訴人装置が本件特許発明の技術的範囲に属すると主張して、控訴人会社は、特許法100条に基づく被控訴人装置の製造販売の差止めと同法102条3項に基づく損害賠償を、控訴人は、同法65条1項に基づく補償金と102条3項に基づく損害賠償を、それぞれ被控訴人に求めた事案である。  本判決は、本件特許発明に係る特許は、進歩性がなく特許無効審判により無効にされるべきものであり、控訴人らは本訴請求に係る権利を行使できないものと言うべきであると判示して、控訴人らの本訴請求を全て棄却した。
H17.7.29 東京地裁 平成16(ワ)14019 特許権侵害差止等請求事件
船舶の動揺軽減装置の制御方法に関する特許権を有する原告が、被告に対し、特許権の間接侵害に基づく被告製品の製造又 は販売行為の差止めと、損害賠償を求めた事案であるが、被告が主張した構成要件非充足、発明未完成又は実施不可能、進歩性欠 如による無効のうち、本件発明が進歩性欠如の理由で無効審判により無効にされるべきものとする点を認め、特許法第104条の3 (特許権者等の権利行使の制限)の規定を適用して、本件特許権を行使することができないと判示し、原告の請求を全て棄却した。
H17. 7.28 大阪高裁 平成16(ネ)2599 意匠権に基づく差止請求権
不存在確認請求控訴事件
控訴人が輸液バッグを製造することについて、被控訴人が輸液バッグについて有する意匠権に基づく差止請求権を有しないことを確認した事案において、先使用による通常実施権(意匠法29条)が認められるためには、意匠出願の際に、登録意匠と同一又は類似の意匠が完成し、又は少なくとも完成に近い状態にあり、それについて意匠の実施である事業をし、又は事業の準備をしている必要があるとしたうえで、結果的に製造されることがなかったものの見積もり段階で作成されていた図面があったことなどから、控訴人の先使用による通常実施権を認め、原判決を取り消した事例。
H17.6.17 東京地裁 平成16(ワ)4339 特許権損害賠償事件
低周波治療器に関する特許権を有する原告が、被告製品の製造販売が特許権を侵害すると主張して、被告製 品の製造等の差止め及び廃棄と、損害賠償、補償金の支払いを請求した事案である。本件発明は、新規性を欠く とはいえないが、本件発明の出願前から製造販売していた被告製品の解析から開示される構成に基づいて当業者 が極めて容易に想到でき、また、黙示の守秘義務があるとの原告の主張は理由がなく、また、被告の販売行為も 原告の意に反するものであったとはいえないから、進歩性を欠き、無効理由が存在することは明らかであると判 示し、原告の請求を棄却した。
H17. 6.15 知財高裁 平成17(行ケ)10036 意匠権 審決取消請求事件
意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」として意匠登録出願をした原告が、特許庁が受け入れた国内カタログに掲載された 引用意匠の対比において、形態においても共通点が差異点を凌駕するものであって、類似するといわざるを得ないから、本 願意匠は、意匠法3条1項3号に該当すると判断した拒絶査定不服審決の取消を求めた事案である。 本件判決は、「普通に採用される周知あるいは公知の形状は、看者の注意を惹くことがないから意匠の類否判断において 支配的要素とはならない」との原告の主張に対して、自動車用タイヤは、トレッドパターン全体の輪郭というべき基本的な構成 は、看者が真っ先に注意を惹くことになるべきであり、意匠を観察する場合にその周知あるいは公知の形状を捨象して意匠 の類否を判断してもよいということにならないと判断するとともに、「本願意匠及び引用意匠の共通点を具備する意匠の存 在が少ないからといって周知と認定することを妨げることにはならない」との原告の主張に対して、限定された一部の消費 者層において周知になっているとしても、直ちに、一般消費者の間で周知となっているとはいえず、幅広く一般的な自動車 用タイヤに採用されていると認められない以上、両意匠の共通点がこの種物品について普通に採用される周知あるいは公知 の形状であるということができないと判断して、原告の請求を棄却した。
H17. 5.23 知財高裁 平成17(行ケ)10253 意匠審決取消請求事件
原告の出願した本件関連意匠は、本意匠に類似しないから意匠登録を受けることができないとした審決の取消を求めた事案において、関連意匠制度の下で保護される「類似する意匠」に該当するか否かは、本意匠との間のデザイン・コンセプトの共通性いかんによるとの原告の主張に対し、関連意匠も具体的な物品を離れた抽象的、観念的なものではなく、具体的な構成態様に基づいて判断されるべきものであり、仮に「デザイン・コンセプト」なるものが共通しているとしても、具体化された物品の形態である意匠がすべて類似するとはいえないと判断した事例。
H17.5.16 大阪地裁 平成16(ワ)5380 特許権侵害差止等請求事件
被服用ハンガーに関する特許権を有する原告らが、被告製品の製造販売の差し止め及び損害賠償を請求 した事案である。本件発明は本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された引用発明と同一であり、また、 無効審判請求においてなされた訂正請求が認められたとしても、上記引用発明及び本件特許出願前に頒布さ れた他の刊行物に記載された引用発明並びに周知慣用技術によって当業者が容易に想到できたものというべ きで、無効理由が存するから、特許権者らはその権利行使ができず、本件特許権に基づく差し止め等や損害賠 償を請求することは許されないと判示し、原告らの請求を棄却した。
H17.4.28 名古屋地裁 平成16(ワ)1307 特許権侵害差止等請求事件
移載装置に関する特許権を有する原告が、被告の製造、販売したパレット積替装置は当該特許発明の技術的 範囲に属すると主張して、被告にその製造等の差止め及び損害賠償等の支払いを求めた事案である。 先使用権を有する製造業者が製造した先使用権の範囲内の製品を購入した販売業者が、当該製品を販売することは本件特許権の侵害とはならないが、販売業者自らかかる製品の製造ないし発注を行うことまでも正当化できないので、被告による先使用権の援用は許されないと判示した。また、被告が得た利益の額は、特許発明の新規性・進歩性が当該発明の一部にかかる場合は、侵害者による製造・販売による利益のうち、新規性・進歩性にかかる部分のみが寄与した部分であるとし、被告製品全体の利益は、販売価格から部品代、交通費などを控除した額の前記寄与部分と判示し、これらについて認容し、その余は失当として棄却した。
H17. 4.13 知財高裁 平成17(行ケ)10227 意匠審決取消請求事件
原告の出願した本件関連意匠は、本意匠に類似しないから意匠登録を受けることができないとした審決の取消を求めた事案において、関連意匠制度の下で保護される「類似する意匠」に該当するか否かは、本意匠との間のデザイン・コンセプトの共通性いかんによるとの原告の主張に対し、関連意匠も具体的な物品を離れた抽象的、観念的なものではなく、具体的な構成態様に基づいて判断されるべきものであり、仮に「デザイン・コンセプト」なるものが共通しているとしても、具体化された物品の形態である意匠がすべて類似するとはいえないと判断した事例。
H17. 3.16 東京高裁 平成16(ネ)3517 意匠権損害賠償請求控訴事件
被控訴人が仕入れて販売する「布団用除湿具」が控訴人の有する意匠権を 侵害するとして損害賠償を請求した事案において、原判決で認定された要部を誤りとし、「側板の断面が略L字状」と「すのこ板の両端が側板から外側に突出していない」点が要部であり、これら要部が被控訴人の実施物品と類似すると主張したが、後者は「すのこ」のバリエーションとして美感上重視する部分と解することはできず、また、前者は吸湿材を収容する皿状のフレームを支えるための機能的工夫にすぎず、需要者の注意を惹く意匠の骨格となる部分とみることはできないとして要部と認定せず、被控訴人の実施物品とは非類似と判断した事例。
H17.3.10 東京地裁 平成16(ワ)11289 特許権侵害差止等請求事件
原告とその専用実施権者が、被告の製造販売する装置が原告の特許発明の技術的範囲に属するとして、被告に 製造販売の差止めと損害賠償金、補償金の支払いを求め、被告が冒認出願および進歩性欠如の明白な無効理由が あるとして請求棄却を求めた事案である。本判決は、冒認出願について、出願前の打合せ時、特許発明の主要な 構成について、単に要望しただけでは提案したものとはいえず、また、進歩性についても、特許発明の構成は公 知の構成を組合わせることにより当業者が容易に発明できるとして、進歩性が欠如すると判示し、明白な無効理 由があるとして、原告の請求を棄却した。
H17.2.25 東京地裁 平成16(ワ)17488 特許権損害賠償等請求事件
被告製品の製造・販売等はフィルター取付け方法に関する方法特許の間接侵害に当たると主張して、その製造、販売等の差止め及び損害賠償の支払いを求めた事案である。面ファスナーは出願前から様々な分野で広く利用されていたにも関わらず、取付けに使用する面ファスナーのフック面を構成する鉤状突起につき具体的な言及がないので、鉤状突起は明細書に記載の形状に限定され、被告製品とは異なると判示して、原告の請求を棄却した。
H17. 2.23 東京地裁 平成16(ワ)10431 意匠権侵害差止請求権不存在確認請求事件  
原告の販売する携帯電話用ストラップの意匠が、被告の意匠権を侵害するとして その販売の停止等を求めてきた被告に対し、原告が被告の差止請求権の不存在確認 を求めた事案において、「米国NPOインターネット・アーカイブ」に示す収集内容 及び日付から、意匠登録出願日より前に被告が自らホームページで公開した被告製 品の意匠と本件登録意匠とが同一であることを認定し、本件登録意匠は新規性(意匠法 3条1項1号)を有せず、本件意匠権に無効理由が存することは明らかであるとして、 被告の本件意匠権に基づく権利行使は権利濫用として許されないと判断した事例。
H17.1.26 東京地裁 平成16(ワ)13922 特許実施許諾料返還請求事件  
出願中の特許発明に基づき実施許諾料を支払ったところ、特許出願が取り下げられたので被告に対し実施許諾料の返還等を求めた事案である。実施許諾契約には出願につき拒絶査定が確定した場合には実施許諾料を返還する旨を定めており、拒絶査定が確定した場合とは、特許として成立しなかった場合を意味し、特許出願が公開後に取り下げられた場合も含まれると判示して、原告の請求を認容した。
H17. 1.17 大阪地裁 平成16(ワ)1099 意匠権侵害差止等請求事件  
床束(ゆかづか)の意匠権を有する原告が被告による鋼製束の製造販売が侵害に該るとして、差止及び損害賠償を求めた事案であるが、 本件意匠の構成を認定するに当たって、組み立てられた状態では外観に現れることはない内部の形状であるターンバックルの内周面 におけるねじの刻設の有無まで確定する必要はないとした上で、意匠を全体的に観察し、意匠に係る物品の性質、用途等も考慮して 意匠の要部を認定し、「被告製品の意匠と本件意匠との間で共通する要部が存在しても本件意匠の要部の一部分について共通するに とどまり、その他要部についても、大きな相違点が存在するため、両意匠は非類似である」と判断して、原告の請求を棄却した事例。
H16.12.8 東京地裁 平成16(ワ)8557 特許権侵害差止請求事件  
インクジェットプリンタ用のリサイクルインクカートリッジを輸入する被告に対し、液体収納容器とその製造方法の特許権を有する 純正品メーカーの原告が製品の輸入、販売等の差止め及び廃棄を求めた事案であるが、本件インクタンク本体にインクを再充填して 被告製品としたことも、本件インクタンク本体を用意し、特定の態様にインクを再充填して被告製品としたことも、新たな生産に当 たるものと認めることができないから、容器の特許及び製造方法の特許のいずれについても、特許権の国内消尽の成立が認められ、 海外で譲渡された原告製品を再製品化したインクカートリッジについても、国際消尽の成立が認められると判示して、原告の請求を 棄却した。
H16.10.29 東京地裁 平成16(ワ)793 特許権 侵害差止等請求事件  
意匠権を侵害となるためには、登録意匠に係る物品と被告物品とが類似していることも必要であるが、この場合に、 対比の対象とされる被告物品は,流通過程に置かれ,取引の対象とされる独立した物品を指すものというべきであ って,単に,当該物品の一部を構成するにすぎない部分を指すと解すべきではないとして、液晶テレビ,液晶モニ ターの一部に意匠権の対象物品である「プリント配線板用コネクタ」が使用されていても、液晶テレビ,液晶モニ ターとは物品が類似しないので、意匠権の侵害とはならないと判断した事例。
H16.10.29 東京地裁 平成15(ワ)2101 特許権損害賠償等請求事件  
出願変更が不適法と判断された結果、出願日が遡及せず、原出願明細書に記載する技術によって進歩性が欠如し た明白な無効理由があると認められ、また、被告製品は本件発明の技術的範囲に属しないとされたため、特許権の 侵害が否定された事例。
H16.10.19 東京高裁 平成16(行ケ)172 意匠審決取消請求事件  
特徴記載書を提出せず、審判請求理由においても問題とする形状について記載していなかったことを理由に当該形状が本願意匠の主要な特徴でないという被告の主張を排斥して、両者を非類似の意匠と認定し、両意匠の共通点が差異点を凌駕するとして両意匠を類似するとした審決を取消した事例。
H16.10.4 大阪地裁 平成16(ワ)4 実用新案権損害賠償請求事件  
無効審判請求をしていなくとも、無効理由が存在することが明らかである実用新案権に基づく損害賠償請求は、特段の事情が存在しない限り権利の濫用として許されないとされた。
H16.9.27 大阪地裁 平成15(ワ)889 特許権侵害差止等請求事件  
無効理由が明らかな特許権に基づく差止め等の請求は、特段の事情が存在しない限り権利の濫用として許されないとされた。
H16.7.14 東京地裁 平成16(ワ)1052 特許権 損害賠償請求事件  
構成要件の1つが、補正によって限定され、意見書によって意識的に除外されたことにより、均等なものと認められなくなった事例。
H16.6.24 東京高裁 平成16(ネ)979特許権侵害差止等請求控訴事件  
本質的部分と不可分一体の関係にある前提要件を欠く場合は、本質的部分を具備しない場合 に準じて均等侵害に該当しないとした事例。
H15.6.17 東京地裁 平成14(ワ)4251 特許権侵害差止請求事件  
数値限定された特許請求の範囲について、従来、その数値の測定方法が複数あって測定方法によって数値に有意な差が生じる時は、どの従来方法を使用するのかを明細書中で限定しなかった場合、従来のどの方法で測定したものでも、特許請求の範囲に記載の数値を充足しなければ、特許権侵害にはならないとされた。
H15.1.30 東京地裁 平成14(ワ)8839 特許権侵害差止等請求事件  
均等論の適用につき、均等を主張している構成要件が本件特許発明の本質的部分であるとして均等論の適用を否定した。

H16.1.30 東京地裁 平成13(ワ)17772 特許権 持分確認等請求事件  
青色LED訴訟の一審判決で、職務発明に対する相当の対価として604億円という高額が認定された。

H15.6.25 東京地裁 平成13(ワ)24051 特許権 侵害差止等請求事件  
2つの特許権について明らかな無効理由があることから権利の濫用として侵害差止等請求が棄却された。明らかな無効理由による権利濫用の抗弁が有効に機能した判例。

H15.2.10 名古屋地裁 平成08(ワ)2964 実用新案権 侵害行為差止等請求事件  
圧流体シリンダの「スチールバンド」なる構成を「樹脂製バンド」に置き換えた製品に対して、意識的除外ないし包袋禁反言の主張を排斥して均等論の適用が認められた。

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