発行日 :平成26年 8月
発行NO:No33
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【4】記事のコーナー:〜改正法について〜

     2014年5月14日に、「特許法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第36号)が公布されました。
  改正点は次のとおりです。

(1)特許法の改正
@救済措置の拡充
  国際的な法制度に倣い、制度ユーザーにやむを得ない事由(災害等)生じた場合に特許料の納付等の手続期間の延長を可能とする規定を網羅的に整備する等、救済規定を拡充する。(実用新案法、意匠法、商標法及び特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律についても同様の措置を講ずる。)

A特許異議の申立て制度の創設
  特許無効審判制度(請求について期間の制限がない)に加え、申立期間を権利化から6か月以内に制限すること等により強く安定した権利の早期確保を可能とし、かつ制度ユーザーの負担が少ない特許異議の申立て制度を創設する。これに併せ、特許無効審判は利害関係人に限り請求できることとする。
 
(2)意匠法の改正
  他国において意匠権を低コストで取得できるよう、「ジュネーブ改正協定」(現在、加入を検討中の「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定」)に基づき、複数国に対して意匠を一括出願するための規定の整備を行う。

(3)商標法の改正
@保護対象の拡充
  既に他国で広く保護対象となっている色彩や音といった商標について、我が国商標法の保護対象に追加するとともに、出願手続等について所要の規定の整備を行う。

A地域団体商標の登録主体の拡充
  地域ブランドの普及の担い手である商工会、商工会議所及び特定非営利活動法人(NPO)を地域団体商標制度(※)の登録主体に追加する。
※地域団体商標制度とは、商標の登録要件を緩和し、「地域名+商品名」等からなる商標の登録をより容易なものとする制度。(現行法上、登録主体は事業協同組合等に限定。)


(1)−@救済措置の拡充
<手続期間の延長に係る規定の整備>
→特許法等に基づく手続をする者の責めに帰することができない事由が生じたときは、その手続期間を一定の期間に限り延長することができるものとする。
  【第108条第4項等(実用新案法、意匠法、商標法及び国際出願法にも同様の措置を講ずる。)】

<優先権主張に係る規定の整備>
→優先権主張を伴う特許出願について、その優先期間内に当該特許出願をすることができなかったことに正当な理由があるときは、一定の期間内に限り当該優先権の主張をすることができるものとする。

  【第41条第1項等(実用新案法にも同様の措置を講ずる。)】
優先権の主張をする旨の書面について、出願と同時でなくとも一定期間内であれば提出できるものとし、その補正についても、一定期間内に限りできるものとすること。

  【第17条、第17条の4、第41条第4項等(実用新案法にも同様の措置を講ずる。)】
<特許出願審査の請求期間の徒過に係る救済規定の整備>
特許出願審査の請求について、その請求期間の徒過に正当な理由があるときは、一定の期間内に限り当該請求をすることができるものとする。
当該特許出願について特許権の設定の登録があったときは、当該請求期間の徒過について記載した特許公報の発行後から当該請求について記載した特許公報の発行前までの間に、当該特許出願に係る発明の実施を行った第三者は、当該特許権について通常実施権を有するものとすること。【第48条の3】

(1)−A特許異議の申立て制度の創設
何人も、特許掲載公報の発行の日から六月以内に限り、特許庁長官に対し、特許異議の申立てをすることができるものとする。【第113条】
→特許異議の申立てについての審理は書面審理によるとするとともに、審判長は、特許の取消決定をしようとするときは、特許権者及び参加人に対し意見書を提出する機会を与えなければならないものとする。
特許権者から特許請求の範囲等の訂正の請求があったときは、審判長は、特許異議申立人に対し意見書を提出する機会を与えなければならないものとする。
  【第118条及び第120条の5】
特許無効審判に係る請求人適格について、利害関係人のみがこれを有するものとすること。【第123条第2項】

(2)意匠法の改正
我が国に保護を求める国際出願については、協定に基づき国際登録及び国際公表がなされたものを、その国際登録の日にされた意匠登録出願とみなす。【第60条の6第1項】
複数意匠を含む国際出願については、意匠ごとにされた意匠登録出願とみなす。【第60条の6第2項】
→国際公表されることが前提であるため、「秘密意匠制度」(第14条)は適用しない。【第60条の9】
→意匠の設定登録前にその意匠が国際公表されることによる模倣被害を防ぐべく、特許法に倣い「補償金請求権制度」を整備する。【第60条の12】等

(3)−@保護対象の拡充
→商標の定義を見直し、色彩のみからなる商標を保護の対象とする。【第2条第1項】
音の標章を発する行為を使用の定義に追加する等、標章の使用の定義の見直しを行う。
  【第2条第3項及び第4項】
→商標の詳細な説明を願書記載事項に追加する等、商標登録出願に関する手続について、所要の規定の整備を行う。【第5条等】
→「新しい商標」については、出願に際し、その商標に関する詳細な説明の記載や所定の物件(音の商標であればその音を記録したCD等を想定)の提出に関する義務を課す。【第5条第4項】
→詳細な説明や所定の物件は、その商標の内容を特定するものでなければならないものとし、その要件を満たさない出願については拒絶対象とする。【第5条第5項及び第15条】
登録商標の範囲を定めるに当たっては、詳細な説明や所定の物件の内容を考慮するものとする。【第27条】等
→標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書に基づいて行われる国際商標登録出願に関する手続について、国際登録簿上に記載されている事項のうち所要の事項を商標の詳細な説明とみなす旨の規定の整備を行う。【第68条の9】

(3)−A地域団体商標の登録主体の拡充
地域団体商標の商標登録を受けることができる者に、商工会商工会議所及び特定非営利活動法人並びにこれらに相当する外国の法人を追加する。【第7条の2】


以 上

(H26.7作成 : 特許商標部 竹内 幹晴)


→【1】論説:会社・店舗・商品のネーミングにかかわる法律問題について           
〜起業に際してのネーミングの法的リスクの実際〜
→【2】論説:抗がん剤の特許権存続期間延長登録出願の拒絶査定不服審判を請求不成立とした審決が取り消された事例
→【3】論説:紛争前の相談の重要性について
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