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発行日 :平成31年 1月
発行NO:No42
発行 :溝上法律特許事務所
弁護士・弁理士 溝上哲也
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【2】論説~近年の商標の判例について(その4)~
平成25年1月1日以降、原則として月に1回、裁判所のホームページを閲覧し、審決取消訴訟を中心に、商標の直近の判例をフォローアップし、その中から関心を引いた判決を1件選び、要旨を短くまとめておく取り組みを続けてきました。 業務が立て込んで忙しいときは、判例を読むこと自体ができない月もありましたが、幸いにしてこの取り組みが2ヶ月以上連続して中断したことはなく、約6年分の成果物が蓄積されました。 そこで、事務所報第39号より、上記成果物を「近年の商標の判例について」と題してシリーズでご紹介させて頂いております。 4回目となる今回は、平成27年6月~平成28年1月の判例の中から下記5件を選びました。商標の実務をされている方の一助になることがありましたら幸いです。
1)H27.8.6 知財高裁 平成26(行ケ)10268 商標 審決取消請求事件
「オルガノサイエンス」の標準文字からなる登録商標について無効審判請求を不成立とした審決につき、商標法4条1項11号該当性の判断には誤りがあるとして審決を取り消した事例。 審決は、本件商標は全体として一体不可分の造語として認識され、引用商標と対比すると、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても非類似であると判断したが、本判決は、引用商標は、本件登録商標の出願時には、原告の事業ないし商品・役務を示すものとして相当程度周知となっていたと認定した上で、引用商標の周知性により「オルガノ」部分は出所識別標識として支配的な印象を与え、他方、「サイエンス」は一般に知られている「科学」を意味し、指定商品との関係で出所識別標識としての称呼、観念が生じにくいと認められることから、本件商標の要部「オルガノ」と引用商標とは、外観において類似し、称呼及び観念を共通にするから、両商標は類似すると判断した。
2)H27.9.17 知財高裁 平成27(行ケ)10085 商標審決取消請求事件
「雪中熟成」の文字よりなり、第29類「加工水産物」等を指定商品とする商標につき、商標法3条1項3号に該当するとして登録を拒絶した審決が維持された事例。
原告は、水産物は、鮮度が最も重要視される類の商品であり、腐りやすい特性を持つことから、その熟成については、通常は、管理された冷蔵庫・冷蔵施設等で行われている旨主張したが、本願商標は「雪の中で熟成された商品」といった商品の品質又は生産の方法を表示したものと一般に認識されるものであるから、特定人による独占使用を認めるのは公益上適当でなく、自他商品の識別力を欠くと判断された。
3)H27.10.21 知財高裁 平成27(行ケ)10107 商標審決取消請求事件
「ノンマルチビタミン」の文字よりなり、第5類「サプリメント」を指定商品として出願された商標は、単に商品の品質を表示したものと認識されるにとどまり、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないとして登録を拒絶した審決が維持された事例。
原告は、「ノンマルチ」の語は、接頭語「ノン」に更に接頭語「マルチ」を組み合わせた特異な語であるから、本願商標「ノンマルチビタミン」も特定の意味合いを有しない造語として認識される旨主張したが、本判決は、本件審決日当時、本願商標の指定商品である「サプリメント」の分野において「マルチビタミン」の語がおおよそ10種類ないし13種類といったような複数のビタミンを配合(含有)したサプリメントを示す用語として用いられていたことを認定した上で、本願商標は、「複数のビタミンを含まないサプリメント」という商品の内容(品質)を表示するものとして、取引者・需要者に認識されるものであって、自他商品識別力を欠くと判断した。
4)H27.12.24 知財高裁 平成27(行ケ)10084 商標審決取消請求事件
被告が「瞬間湯沸器」について使用している「エマックス」等の文字よりなる引用商標には周知性が認められないとして、商標法4条1項10号該当性を認めて商標登録を無効とした審決を取り消した事例。
被告が提出した証拠によっては、引用商標に関する宣伝広告が活発に行われたとはいえない上、新聞・雑誌等により報道された機会も少なく、全国的規模の市場に対する販売実績は極めて少ないものと推測され、このような宣伝広告及び販売実績を考慮すると、家庭用の瞬間湯沸器の市場規模を子細に確定するまでもなく、いずれの引用商標も周知性を有していたとは認め難いと判断された。
5)H28.1.20 知財高裁 平成27(行ケ)10159 商標審決取消請求事件
本願商標は、構成中に「ROYAL FLAG」の文字を含んでいても、全体として一体的に観察し、又は著名な「Reebok」の文字部分を抽出して引用商標との類否を判断するのが相当であり、引用商標「ROYAL FLAG」とは類似しないとして、審決を取り消した事例。
本願商標において、「ROYAL FLAG」の文字部分は、取引者・需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえないと判断された。
以 上
(H31. 1作成: 弁理士 山本 進)
→【1】論説:債権法分野における民法改正と実務上のポイント~
→【3】論説:任意後見契約について~
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→【5】記事のコーナー:イベントと日本人の宗教観~
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