発行日 :平成25年 8月
発行NO:No31
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【3】論説〜湾岸協力会議に基づく特許出願について〜
1.概要
  湾岸協力会議(GCC:Gulf Cooperation Council)は、サウジアラビア、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール及びアラブ首長国連邦(UAE)の6カ国が加盟している地域協力機構であり、1981年に設立された。GCCは、ペルシャ湾西岸の上記産油6か国における経済、金融、関税等の様々な分野での協力推進、安全保障の強化、共通した法制度の採用などを目的として結成されたものである。
  知的財産制度については、1992年のGCC首脳会議において、湾岸協力会議特許規則(GCC Patent Regulation)及び湾岸協力会議特許庁憲章(Statute of the GCC Patent Office)が可決された。GCC特許庁はサウジアラビアの首都リヤドに設置され、1998年から特許出願の受付を開始した。
  GCCに基づく特許出願の特徴は、GCC特許庁に提出した1つの出願により特許が成立した場合、その特許権の効力が加盟6か国すべてに及ぶという点である。出願、審査、特許付与までを同じ官庁で行う統一特許付与制度ということができる。なお、現在、GCC特許庁に対しては、特許出願のみが可能であり、実用新案、意匠、商標については、各国で個別に保護を求める必要がある。

2.GCC出願の留意事項

(1)出願人
  発明者又はその承継人がGCC出願の出願人となり得る。承継人(例えば職務発明を承継した法人)が出願人となる場合は、後記する譲渡証をGCC特許庁に提出する必要がある。

(2)出願の形式
  現在、GCCはPCTに加盟していないため、PCT出願の広域指定としてGCCを選択することはできない。なお、GCC加盟国のうち、バーレーン、オマーン、カタール及びアラブ首長国連邦(UAE)はPCTの締約国であるため、これら4か国については、GCC出願によらず個別にPCT出願の国内移行を行うことは可能である。

(3)優先権の主張
  GCC出願において、パリ条約の優先権を主張することは可能である。

(4)出願書類
  出願書類は、@願書、A明細書、Bクレーム、C要約、D図面(必要な場合)である。また、願書を補完する書類として、出願日から3か月以内に、E委任状、F譲渡証(出願人が承継人の場合)、G登記簿謄本(出願人が法人の場合)、H優先権証明書(優先権主張する場合)を、GCC特許庁に提出する必要がある。

(5)言語
   出願の言語はアラビア語である。上記出願書類のうち、A明細書、Bクレーム、C要約、D図面については、通常、日本語から英語、英語からアラビア語という2段階の翻訳が必要になることが多いため、それらの翻訳期間を十分に確保する必要がある。

(6)その他の留意事項
  上記願書を補完する書類のうち、G登記簿謄本とH優先権証明書は、英訳を提出する必要がある。また、E委任状、F譲渡証、G登記簿謄本は、何れかのGCC加盟国の領事による領事認証を受ける必要がある。

3.参考になるURL
  一般社団法人発明推進協会、世界の産業財産権制度および産業財産権侵害対策概要ミニガイド、湾岸協力会議:http://iprsupport-jpo.go.jp/miniguide/pdf2/GCC.html

(H25.07作成: 弁理士 山本 進)


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