発行日 :平成22年 8月
発行NO:No25
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【5】記事のコーナー:〜「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」の審査基準の改訂について

  知的財産高等裁判所特別部において平成20年5月30日に言い渡された平成18年(行ケ)第10563号事件の判決において、補正が許される範囲について一般的な定義が示され、その後の知的財産高等裁判所の判決でも一貫してその定義が引用され判示がなされています。そのため、現行の審査基準に基づく審査実務を変更せずに、大合議判決との整合をとるという観点から、「明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)」の審査基準が以下のように改訂され、平成22年6月1日以降の審査に適用されています。

「第V部第T節 新規事項」についての審査基準の改訂内容

1.一般的定義の新設

  「3.基本的な考え方」に、『「当初明細書等に記載した事項」とは、当業者によって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項である。したがって、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「当初明細書等に記載した事項」の範囲内においてするものということができる。』という一般的定義が設けられた。

2.「新たな技術的事項を導入しないもの」の類型についての整理

  『補正された事項が、「明示的記載+自明」な事項である場合は、特段の事情がない限り、新たな技術的事項を導入しないものである。』とした大合議判決を受け、補正された事項が、「明示的記載+自明」な事項である場合は、「新たな技術的事項を導入しないもの」として補正を認めることとされた。
  また、現行審査基準の「各論」において「補正が認められる」とされているものは、「新たな技術的事項を導入しないもの」として補正を認めることとされた。さらに、現行審査基準において「補正が認められない」とされているものは、「新たな技術的事項を導入しないものとはいえない」として補正を認めないこととされた。

3.「除くクレーム」とする補正についての整理

  「4.2 各論」における「(4)除くクレーム」の説明において、「例外的に」という言葉を削除し、上記2.と同様、「補正が認められる」とされているものも、「新たな技術的事項を導入するものではないので、補正は許される。」とされた。

4.審査基準のいずれの類型にも該当しないものの取扱い

  現行審査基準に示されていない類型の補正について、上記1.の一般的定義にしたがって判断する際の審査基準の適用に関する方策が、改訂審査基準に記載された。



以上

(H22.8作成 : 特許商標部 宮崎  勲)


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