(1)電子証明書とは
「電子証明書」とは、「電子署名」の検証する際に用いられるもので、書面手続でいえば、本人確認のための「印鑑証明書」の役割を果たします。電子証明書は、信頼される第三者機関が発行する電子的な証明書で、ICカード等の記憶媒体に保存されています。
電子証明書が添付された文書は、実印が押印され印鑑証明書が付されたものと推定され、すなわち、本人作成の真正なものとして扱われます。
電子署名とは、書面での申請や入札における押印やサインに相当する行為を電子的に行う技術です。
電子署名は、署名や印鑑を電子化するという単純なものではなく、電子的なデータ全体の暗号化によって電子データを厳重に守り、間違いなく本人から送信されたものであるということを確認できるため、成りすまし(第三者があなたや他の誰かの人のふりをして申請すること)やデータの改ざん(第三者が内容を書き換えること)を防ぐことができます。
電子署名を利用する際は、最初に、電子署名の利用者を証明する認定事業者への申込が必要です。次に申し込みにあたっては、本人確認書類の提示が求められます。認定事業者では真偽確認後、電子署名に用いる符号の所有者を証明する「電子証明書」を発行します。
一定の要件を満たした電子署名の施された電子文書等は「電子署名及び認証業務に関する法律」により「本人の意思に基づいて作成されたもの」(真正に成立したもの)であると推定されます。
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(2)電子証明書の機能
@盗み見防止
送り手は秘密鍵(認証局から証明書と一緒に発行)で文書を暗号化(電子署名)し、受け手は添付された公開鍵(認証局から秘密鍵とペアで発行されるパスワード)、又は事前に入手した公開鍵で復号化して盗み見防止。
Aなりすまし防止
公的に認められた認証局が発行した証明書の添付でなりすまし防止。
B改ざん防止
例えば、文書とともにそのダイジェストも暗号化して送り、受手側で復号化した文書からダイジェストを作り、受信ダイジェストと照合して改ざん防止。
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(3)インターネット出願に利用可能な電子証明書
インターネット出願に利用可能な電子証明書として、平成17年8月1日付、特許庁長官告示により、以下の電子証明書(認証局)が指定されています。
@個人電子証明書・・・弁理士や個人が手続きする場合
1)日本商工会議所「タイプ1−E」
2)日本認証サービス「AccreditedSignパブリック2」
3)樺電シーティーアイ「個人用CD型」
4)セコムトラスト「パスポートforG-IDタイプB」
A法人電子証明書・・・特許業務法人その他、法人が手続きをする場合
法務省電子認証登記所「商業登記用電子証明書」
特に個人証明書を発行している認証局は各社その入手方法等に特徴があるので、使用者にあったものを検討することが望ましいと思われます。詳細については、各社HP等をご参照下さい。
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(4)電子証明書使用にあたっての留意点
@期 限
上記何れの認証局の発行する電子証明書にも有効期限があり、その期限も2年30日、3年30日と異なります。
無論、有効期限が切れると証明がなされず、書類を送付することも出来ません。よって、後記するパスワード等の管理と共に有効期限についても管理を行い、満了の前に再度、何れかの電子証明書を取得することが必要となります。また、その際、電子証明書入手までに必要な手続期間がありますので、それを考慮の上、事前に取得することが必要となります。
インターネット出願ソフトでは、有効期限の30日前に表示によって注意を喚起するようになっていますが、それのみに頼らず、利用者サイドでも管理することが望ましいと思われます。
Aパスワード等の管理
電子証明書の使用にあたっては、認証局から発行される認証書にアクセスするためのパスワード等、いくつかのパスワードが必要となっています。特に認証書ストア(証明書・秘密鍵のファイル群)にアクセスするためのパスワード(Pin)は、インターネット出願ソフト起動時毎に入力することになる上、特許庁に送信されないので、忘れると本人認証ができなくなります。
利用者の方で、管理を行うことが重要となります。
また、証明書ストアは、パソコン上に保存するよりもセキュリティの面から、外部記憶装置に保存することが望ましいと思われます。
特許庁にアクセス中に何度かソフトが認証ストアにデータを確認しに行くため、フロッピィディスクでは、速度の面から対応が望めないため、MOやUSBメモリを使用することが望ましいと思われます。
B送信ファイルの作成・送信
1)インターネット出願ソフトでは、先に「本人認証」を行うことによって起動するため、送信ファイルにはその作成時に認証された識別番号保持者の手続として、書類が作成されます。よって、送信ファイル読み込み時に本人認証された人の電子証明書が組み込まれます。ですから、本人認証画面の識別番号リストで「GUEST」起動した場合、送信ファイルは作成されますが、電子証明書が組み込まれないので、送信はできません。書式チェックなどに利用するとよいと思われます。
2)上記の理由から、Aさんの認証で起動している場合、Bさんの手続書類を作成するには、本人認証画面でBさんの認証で起動しなおさなければなりません。また、電子証明書もBさんのものが必要となります。
3)これも上記1)の理由から、パソコン出願ソフトでは、「送信ボタン」→「識別番号選択」→「暗証番号入力」で送信が実行されますが、インターネット出願ソフトでは、「送信ボタン」→「OK」で実行されます。
5.むすび
以上、簡略ですが、インターネット出願の概略について記載致しました。何分にもつたない文章ですので、言葉で表現すると説明不足で実際の手続の流れや処理のイメージ等が掴めないところが多いと思います。
実際には事務所や企業で使用している特許の管理ソフトとの関連で当面はパソコン出願ソフト3で手続をされているところも多いと思われますが、2006年夏頃には、PCT出願がPCT-SAFEを使用したインターネット出願として開始される予定で、いずれにせよ、流れはインターネット出願ソフトの方向となっています。今後1年ぐらいでパソコン出願ソフトの併用は無くなる可能性も高いと思われます。
電子証明書という技術の使用や管理等、利用者にとっても色々な情報の必要性、課題が増えてきておりますが、弊所においても依頼者の方々との調整を図りながら取り組んで行きたいと思っております。
また、電子証明書という技術のセキュリティもあくまでも「推定効」ですので日本弁理士会の特許制度運用協議委員会では、特許庁に対し、その有効性について質疑等を加えて行き、より安全なインターネット出願ソフトとなるよう取り組んでいかれるとのことです。
電子技術のめざましい進歩の中、制度や法律が後追いをしているような状況ではありますが、迅速で安全な手続を行えるよう努力したいと思っております。
☆事務所近況☆
今回の事務所報は難い話が多かったと思いますので、ここらでちょっと休憩を・・・。
事務・経理グループの伊藤さんが10月28日 3280グラムの男の子を出産されました!!
分娩まで10時間ほどかかったそうで大変だったようですが、足の長い男の子で将来はジャニーズ(?)との噂も。母子ともに順調ということで、何よりです。
また、その間、3年ほどぶりに「大西久美子」さんが職場に復帰してくれました!
大西さん、久しぶりに事務所に復帰されたご感想は?
「約3年ぶりの復帰で戸惑うことも多く、事務所の方々には大変ご迷惑をおかけしたことと思います。短い間でしたが、お世話になりました。外の空気はとても新鮮で楽しかったです。皆さん、お体に気をつけてますます頑張って下さい。」
とても3年ぶりとは思えない仕事ぶりで、伊藤さんのお休み中、本当に心強く、頼りになり、助けて頂きました。2人のお子さんがいらっしゃるのに、本当にありがとうございました!
そんなこんなで、溝上事務所の2005年は暮れていきましたが、皆さんは如何でしたか?2006年もよい年でありますよう心からお祈り申し上げます。
本年も何卒よろしくお願い致します。
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