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発行日 :平成14年 1月
発行NO:No8
発行 :溝上法律特許事務所
弁護士・弁理士 溝上哲也
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【2】論説〜弁護士業務と電子メール〜
(1)電子メールと法律相談
電子メールは、
事務所報5
でも書きましたが、法律相談の際に前提として有用であることは記載しました。
そこでも記載しましたが、電子メールによる法律相談自体は、不適切な場合が多いと思われます。
法律相談は、弁護士と相談者とのコミュニケーションがなりたってこそ、最も効果的となるからです。
法律相談においては、相談者の言いたいこと(言っていること)と弁護士が法的紛争の解決手段のために聞きたいことは、異なることが十分にあり得るといえます。
法律相談で、よく弁護士が「そんなことは、関係ない。」と言われて不快になったと例えば掲示板等で書かれていることを目にしますが、弁護士が解決の手助けができるのは、法的紛争です。法的にみて、明らかに関係のない事情を言われている場合に、思わず言ってしまうことは、よくあることと思われます(言い方は考えないといけませんが)。もちろん、時間は無限ではありませんから、本当に法律相談を有効に利用するためには、相談者にとってもメリットがあることです。
その意味で、法律的に関係のある事情と関係のない事情とは、相談者が、明確に区別できるものではありません。そのために、法律相談があり、弁護士がいるといえるからです。
電子メールは、質問に対する質問ができません。
電子メールによる法律相談は、この質問に対する質問ができないこと、そして、資料を見ながらの質問ができないことからして、やはり、直接の法律相談手段として、相談者にお金を払わせてまで行うメリットがあるかどうか、今のところ多分に疑問です。
(2)電子メールの有用性
とはいえ、電子メールは、弁護士業に、FAX以来の革新的道具となり得ることは、明らかといえます。ここでは、具体的な例を挙げながら、電子メールの有用性と注意点を記載します。
2-1 前提としての電子メールについて
法律相談の前提としての電子メール、打ち合わせの前提としての電子メール等前提としての電子メールは、とても役立ちます。弁護士は、相談者(依頼者)が来所する前に、大体の法的紛争の枠組みを知ることができますし、必要ならば、来所する前に持参すべき資料を伝えることができるからです。
例えば、手形が問題となっている場合に、手形が全くない状態で相談に来所しても意味がないのです。
2-2 証拠としての電子メールについて
事務所報bVでも書きましたが、民事訴訟では、ありとあらゆる物が証拠となり得ます。よく、質問されますが、電子メールも重要な証拠となります(証拠能力の問題)。
もちろん、その証拠が法的紛争の解決に役立つかというのは、また、別問題ですが(証明力の問題)、電子メールは、
a,
日付と時間と、電子メールの送受信者が明確に記載され、しかも、
b,
時間系列に並べるのも容易で、保存性にも富む
c,
証拠として提出する際に裁判所の定型書式であるA4に印刷するのも容易
です。さらに、言えば、
d,
準備書面(裁判所に提出する主張書面のことを「準備書面」といいます。)等裁判所へ提出する書面に引用する際もコピー・ペーストすることが可能
といえるので、他の証拠と比べて証拠として提出する際の容易性は、比べものにならないものがあります。
2-2-1 a.について
事務所報bV
でも書きましたが、証拠として一般的には意識されないことが多いものとして、文書の「作成日付」があります。
訴訟、特に知的財産紛争に多いのですが、日付が重要にもかかわらず、文書自体には、記載されていない場合には、さらにその文書の作成日付を立証するために、例えば、カタログの製造元に問い合わせてもらったり、陳述書をもらったり、弁護士自らが電話で問い合わせて電話聴取報告書を作成したりという手間がかかります。
電子メールは、上記のように、一般的に重要と意識されていない「日付」が自動的に入り、上記のような手間を要しないメリットがあります。
2-2-2 b.について
交渉経緯については、時間系列に並べることは、重要です。
また、交渉経緯については、電話だけで済ませてしまい全く証拠として残っていなかったり、見積書、請求書自体もなく取引だけが進んでしまっている例もよく見かけます。
その意味では、生の交渉経緯が表れる電子メールは、とても重要な証拠となります。
交渉経過についての証拠としても今後、電子メールは、多くなると思われますが、従来の電話だけで全く証拠に残らない場合等があることから考えれば、契約経緯等事実経過を立証する証拠として益々重要なものとなるでしょう。
2-2-3 c.について
上記c.については、言うまでもないでしょう。
証拠は、どんなものでも証拠となり得ますが、裁判所に提出する際には、その証拠をA4(大きいものは、A3用紙を折って)に枚数分コピーして裁判所と相手方(部数については、通常は、裁判所1通、相手方1通、控えとして1通ですが、大阪の知的財産部のように、裁判所用に4通を要求するところもあります。)に提出しますが、電子メールを証拠と使用する場合には、A4で枚数分コピーするのが極めて容易です。
2-2-4 d.について
証拠には、原告ならば「甲第○号証」、被告ならば「乙第×号証」というように、証拠毎に番号を付し、準備書面においては、その番号と記載を引用しながら書きます。
もし、電子メールが残っているならば、転送してもらって、その内容をコピー・ペーストして引用することが可能です。
2-2-5 証拠提出の一事例について
電子メールの有効活用の一事例として、次のような証拠提出の事例がありましたので、紹介しておきます。
裁判所からは、証人尋問の前に、証人からの陳述をまとめた「陳述書」が要求されることがあります。
弁護士によって、スタンスが異なると思いますが、「陳述書」も、証人尋問の前提として必要なところが十分に記載されていないといけませんから、弁護士が事情聴取して内容をまとめ、その内容を「陳述者」に確認してもらい、訂正があれば、訂正をし、内容が間違っていないと判断された場合には、「陳述者」から署名捺印をしてもらいます。
従前においては、
a,
「陳述者」に事情を聞くために来所してもらう
b,
話をまとめて、「陳述書(案)」を「陳述者」に訂正等確認を求める
c,
訂正があれば、更に、改訂版の「陳述書(案)」を書き、更に、訂正等確認を求める。
d,
内容が間違っていないと判断された、つまり、「陳述書(案)」にOKがでたら、「陳述書」を裁判所に提出する通数分印刷する。
e,
「陳述者」に署名捺印して郵送して送り返してもらう、または、署名捺印するために来所をお願いする。
という一連の手続が採られるのが普通です。
証人尋問、特に、こちらが申請した証人については、一度も会わずにと言うわけには普通はできませんので、全てメールのみでやりとりするわけにはいきませんが、少なくとも訂正のやりとりには、メールのやりとりが最も簡便でしょう。 この事例では、ファイル自体を電子メールで送付し、数通等を指示し、あちらのプリンタで印刷してもらい、署名捺印した書面を送ってもらうという極めて電子メールを有効に活用したものでした。
2-3 準備書面と電子メールについて
準備書面とは、事実を法的立場から見た見解を述べる書面です。
したがって、準備書面には、
1 事実主張
2 法律上の主張
があります。
上記主張の内、法律上の主張は、法律の専門家である弁護士がすべきことですが、事実主張については、依頼者の協力が不可欠です。
いうまでもなく、事実関係について最も知っているのは、当事者であって、その事実を基にして法律上の主張がなされます。
したがって、準備書面は、弁護士に任せきりにするだけでは、決してよいものは出来上がりません。
電子メールを使えば、依頼者→弁護士、弁護士→依頼者というコミュニケーションが極めて容易です。しかも、電子メールの言葉を引用したり添削したりして、依頼者から提供された事実を、法的主張に有用となるように再構成するのも極めて容易です。
(3)電子メールにおける注意点について
依頼者と弁護士とのコミュニケーション手段としての電子メールとしての注意点は、通常の電子メールを送受信する場合と同様です。
例えば、テキスト形式で電子メールを送ったり、なるたけ添付ファイルで送らない等は、電子メールを使用する際の一般的にいわれる注意点と同様でしょう。
ワープロソフトの観点から考えれば、裁判所は、一太郎(バージョンは常に新しいものではない。)が標準ですが、一般的な企業においては、ワードが多いと思われます。
したがって、バージョンによっては、ファイル自体が開けられないという事態も生じます。したがって、テキスト形式でのやりとりが、最も有効となりましょう(書式、形式等については、弁護士に任せる。)。
なお、私のパソコンには、一太郎、ワード、オアシスの各ワープロソフトがインストールされていますが、それでも、開けられないファイルというのは、たまには存在するようです。
(4)法律事務所と電子メールについて
法律事務所が電子メールが使えるかという観点から考えれば、まだまだ遅れているというのが正しい現状認識でしょう。
電子メール自体ない事務所(パソコン自体ない事務所もあります。)も沢山ありますし、電子メールはあっても、事務所に共通の1アドレスがあるのみのところもあります。
当事務所では、ADSLを導入し、スタッフ毎にアドレスが付されており、電子メールのチェックも頻繁に行っております。また、電子メールに対する返答については、なるたけ迅速に行っております。
これからの法律事務所では、インターネット関連の設備投資も重要な問題となり、依頼者が法律事務所を選択する際の一要因となりましょう。
(H14.1作成: 弁護士 岩原義則)
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