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発行日 :平成13年 7月
発行NO:No7
発行 :溝上法律特許事務所
弁護士・弁理士 溝上哲也
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【2】論説〜勝つ「証拠」負ける「証拠」、強い「証拠」弱い「証拠」〜
総論編
(1)実施契約とは何か。
裁判における事実認定は、当事者(原告・被告)が裁判所に申出た証拠によって、なされます。
これは、当事者が提出した証拠によってのみ裁判所は事実認定をし、当事者が申出ない証拠によって裁判所は、事実認定をしてはならないことを意味します。
そして、日本においては、相手方の手持ちの資料について、裁判所に提出させる手段は、かなり限定的になっていることが現実です。つまり、たとえ真実を記載した証拠であっても自分に不利な証拠は裁判所に提出しないでおくことができます。
すると、法律的紛争が発生した際に、自分が望む裁判を得るには、
(1) その法律的紛争において、証拠を適当な方法によって、裁判所に提出する必要がある。
(2)自分に有利な証拠は、相手方からの提出を期待できず、自ら提出しなければならない。
ことになります。
本稿の本当のねらいは、法律関係を構築していく際に、どのような書面を作成していけばよいか、その注意すべき点はなにか、更に紛争が発生した場合に強い証拠とは何かを、実際に当事者の立場から証拠を裁判所に提出する弁護士の目からみた場合のアドバイスと気づいた点を書くことにあります。
とはいえ、市民のための民事訴訟と、最近、よくいわれることですが、民事訴訟の本というのは、抽象的な議論が多すぎて、具体論に欠けているのではないかという思いもありますので、民事訴訟とは何かが具体的にイメージでき、弁護士はこう考えているとか、法律事務所はこういう仕事をしているとか、裁判所はこういう考えだと具体的にイメージできれば、本稿としては大成功と思っています。
(2)民事訴訟と刑事訴訟について
まず、民事訴訟と刑事訴訟の区別を厳格にしなければなりません。
俗にいう、「民事」と「刑事」は、全く別の法的手続です。
「○○罪で、訴えて下さい。」
等もよくいわれますが、犯人に刑罰を科すために裁判所に訴えを提起する(起訴といいます。)ことができるのは、国家機関である検察官だけ、犯人に刑罰を科すことができるのも国家機関である裁判所だけです。
「○○罪にあたるから、勝てるはずだ」
これは、少し法律的知識があるかの人からよく聞く発言ですが、これも厳格にいうと、間違っています。
民事訴訟と刑事訴訟は、全く別の法的手続であり、刑事実体法(刑法等の処罰規定が存する法律)上、犯罪にあたるとしても、捜査が必ずしもなされるわけではありませんし(捜査によって、刑事手続が始まります。)、刑事実体法上、犯罪にあたるとしても、民事訴訟では、敗訴もありうることです。
とはいえ、刑事手続において犯罪とされることは、民事訴訟においても損害賠償等の根拠となる重要な証拠となりますので、その意味では、関係があるといえます。
(3)被告と被告人について
新聞等の誤った用語の用い方により、民事訴訟において「被告」とされること自体が不快とする言葉をよく聞きます。
これも先に書いた民事訴訟と刑事訴訟の厳格な区別がついていない結果によるものと思われますが、民事訴訟では、訴えた者を「原告」、訴えられた者を「被告」といい、刑事訴訟で検察官に起訴された「被告人」とは、法律的には全く意味が異なります。
「被告人」も、法律的には、無罪の推定が働くので、無色透明なイメージであるはずですが、「被告」は、それ以上に、悪いことをした者とか、けしからん奴とかというイメージとは無縁の、ある意味、便宜的な用語であることは、理解が必要と思います。
(4)証拠能力と証明力について
「自分で書いたメモですが、証拠になりますか。」、
「署名だけで、判子はないけど、証拠になりますか。」
よくいわれる質問ですが、法律家の目からすれば、この質問は、2つの意味が混じっています。
どのようなものが証拠となり得るのかという質問と証拠になり得るとして裁判に有利になるものかという質問です。
法律的な用語からすれば、前者を証拠能力の問題、後者を証明力の問題といいます。
証拠能力に関しては、民事訴訟においては、証拠能力は原則として無制限といわれています。
すなわち、書面であれば、ありとあらゆる書面が証拠となり得ます。相手と取り交わした契約書、合意書、示談書等はもちろん、自分で書いたメモ、日記、判子がない書面、ホームページの印刷などなど全て証拠となり得るといえます。
証拠能力の例外は、手形のように、提出できる証拠が法律によって、限定されている場合もあります(民訴法352条)が、この点について具体的には各論編でおいおい記述したいと思います。
証明力の問題は、各論編で述べた方が分かりやすいでしょう。
法律問題によって、どのような証拠があれば最も役に立つか異なるからです。
一般的には、紛争の相手方との合意した書面であれば、もちろん、証明力は高くなる(すなわち、勝つ可能性が高くなる。)。誰にもしられず自分だけで、裁判が起こってから書いたものは、証明力が低くなるということは当然にいえることです。
(5)書面の重要性について
意外と思われるかもしませんが、民事訴訟では、書面による証拠(書証といいます。)が最も重要視されるのが、通常です。
その意味では、取引の際、交渉の際、会議の際、合議の際、電話した際等々後々の法律関係の紛争を避けるためにも、裁判に勝つためにも、書面として保存しておくことが必要不可欠です。
カセットテープやビデオテープも証拠となりますが(証拠能力はある。)、これも音声を書面として起こして書面として裁判所に提出する方法が一般的に取られます。
また、フロッピーディスク等に保存された例えばホームページなどは、印刷の上、書面として保存する必要があるでしょう。
今は、あまりみないですが、感熱紙のFAX文書は、要注意です。時間の経過とともに字が薄れ、消えてしまうことがあります。そのため、原本と共に鮮明なコピーも保存しておく必要があります。
(6)書面の通数について
裁判所に証拠を提出する場合、裁判所に最低で1通(事件や裁判所によって異なります。)、相手方に1通、控えとしてこちら側に1通、合計最低でも3通が必要となります。
原本を証拠として取り調べる場合でも、写しを提出します。
写真を証拠として提出する場合は、撮影日、撮影者を明記した書面に貼り付けるなどして、各3枚用意する必要があります。そのため、ネガを保存しておくことが必要となりましょう。
なお、特許事件等知的財産訴訟や、医療事件に関する訴訟は、通数が多めに必要なことがあり、事前に裁判所(依頼している弁護士がいれば、まず弁護士に確認しましょう。)に確かめておく必要があります。
(7)書面の大きさについて
現在、裁判所では、A4横書きが定型として決まっています。したがって、裁判所に提出する書面や書証は、A4横書きで提出できるようにしておくことが必要です。
例えば、大量な書面を証拠として提出する場合には、法律事務所でコピーの上、提出されるという作業が必要となりますので、それだけ提出が遅れるとはいえます。
(8)日付けの重要性について
書面は、内容が最も重要なことはいうまでもありません。そして、作成者が誰かという意味で、署名捺印が重要なこともいうまでもありません。ただ、これらの事項は書面があれば、通常記載があることです。一般的にも重要な記載事実と認識されているからでしょう。
ここで、一般の人と法律家の認識が最も異なると思われるのは、作成日の記載です。
法律上の紛争で、どのような事実がいつ起こったかという事実はとても重要なことですが、作成日が明らかでない書面が巷にはあふれているのは、とても問題です。
「平成13年1月1日」というように、年月日をはっきり記載しましょう。
自筆証書遺言で、「平成○年○月吉日」という記載が遺言として無効という判例がありますが、通常の書証においても、この観点は重要です。無効にならなければよいとかという考えは証拠を予防的に作成するという観点からは避けるべきでしょう。
本稿は、未完成です。HPの特性を活かして随時更新の都度、新しい情報を追加し、古く使えなくなった情報は削除し、不適当な表現のものはその都度修正し、改定を重ねたいと思います。ご意見・ご感想があれば
E-mail:iwahara@mizogami.gr.jp
までお願いします。
(H13.7作成 H16.4.1修正 :弁護士 岩原義則)
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