発行日 :平成25年 1月
発行NO:No30
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【6】記事のコーナー:台湾への特許出願について

  近年、「グローバル化」という言葉が頻繁に使われるようになり、知的財産権分野においても外国での権利取得、保護への関心が益々高まっているようです。 外国への出願件数も増加し、出願国も多岐に渡って来ています。
  今回は身近なところで、台湾への特許出願について私的な整理のためを兼ねて、事務的な側面から簡単な流れを記載しようと思います。
1. 基本的事項 @ 台湾は、パリ条約に加盟していないので、条約上の優先権を主張しての出願はできません。また、PCT条約にも加盟していないので、PCT出願を行うことはできません。
しかしながら、WTO加盟国であるため、同加盟国である日本国民は、WTO協定のTRIPs協定の適用で優先権を主張して台湾出願を行うことができます。
  また、PCT国際出願を基礎として、その出願を優先権主張して台湾へ出願することが認められています。 A  台湾への特許出願については、台湾国内に住所を有していない出願人は、現地代理人(弁理士又は弁護士)を選任しなければなりません。
  委任状については、包括委任状も可能です。 B  出願言語は、中国語です。
  通常、外国語明細書*1(日本語明細書)にて出願をして出願日を確保し、出願日から6か月以内に中国語明細書を提出するという方法を行います。
 
  2.特許出願の流れ

@ 出願時の必要書類
  ・願書、明細書、請求の範囲、要約及び図面
  ・委任状 認証は不要。出願日から4か月以内に提出。さらに2か月の延長可能。
  ・優先権証明書 優先日より16か月。*2
  前述の通り、台湾はパリ条約の同盟国でないため、条約上の優先権は主張できませんが、WTO加盟国ということでWTO加盟国の国民は優先権を主張して台湾出願をすることができます。

  なお、必要書類として昨年度までは「譲渡証書」の提出が求められていましたが、法改正により2013年1月1日以降の出願からは提出が不要となりました(経過措置として2013年1月1日以降、提出期限となる出願、すなわち2012年9月1日から2012年12月31日の出願についても提出不要となっていた)。
A 出願公開制度
  有り。出願日から18か月後。
B 実体審査請求制度
  有り。出願日から3年以内に行わなければなりません。
C 中間手続(拒絶理由)〜拒絶査定
  台湾においては、拒絶理由からの手続が他国と異なるようです。
  上記フローにあるように実体審査後、特許要件を満たしていないと判断した場合に審査官の意見が通知されます(日本における拒絶理由通知書に相当)。
  指定期間内に意見書等にて対応した応答が、依然として特許要件を満たしていないと判断された場合、「初審拒絶査定」が通知されます。
  「初審拒絶査定」が通知され、不服がある場合は指定期間内に「再審査」を請求します。再審査請求後も特許要件を満たしていないと判断された場合、「再審査拒絶」がなされます。
  この再審査拒絶に不服をする場合は、指定期間内に「訴願」を請求することになります。
  なお、法改正により本年度からはファイナル審査意見通知が導入されるとのことです。
D 公告査定
  審査の結果、特許要件を満たしていると判断された場合は、公告査定が発行され、特許証発行料金及び最初の年金を納付します。
  特許権の存続期間は、出願日から20年となっており、設定登録日から発生します。


  *1 台湾に提出する外国語明細書については、昨年度までは言語について明記がなかったようですが、今回の法改正で日本語、英語を含む9カ国語である旨が明記されたとのことです(http://www.tiplo.com.tw/pdf/1j-PatentLaw2013.pdf)
  *2 優先権証明書の提出期限については、昨年度までは「出願日から4カ月」となっていましたが、法改正により「優先日から16カ月」に変更されたとのことです。
  以上、台湾特許出願の簡単な流れを記載致しました。
  外国出願については、特許庁HPのデータやネット上にも情報が増えて来ていますが、実務を行うに当たっては戸惑うことが多いです。
  台湾、中国、韓国などでは、日本人スタッフのいる事務所も多いので、連絡、書類のやりとりも比較的スムーズに行えるようです。
  国際情勢の色々な側面から、各国法改正が行われることも少なくないので都度確認して手続を進めていくことが必要かと思います。

  なお、2013年の台湾専利法改正については、下記にポイントが記載されています。
  台湾特許法改正 http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201206/jpaapatent201206_065-075.pdf
  Tiplo改正法要点
  http://www.tiplo.com.tw/Seminar/201208/20120828-patentlaw.pdf

  記事については、下記の情報を参考にしました。
  ミニガイド http://iprsupport-jpo.go.jp/miniguide/pdf2/Taiwan.html
  パリ条約 http://www.chizai-word.com/cat34/post_130.html
  WTOとは http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/gaiyo.html
  WTO協定及びその付属書 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/2-a.html
  TRIPS協定 http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/trips/ta/mokuji.htm
  第1部 一般規定及び基本原則 第3条 内国民待遇 http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/trips/ta/chap2.htm#law3
  優先権を伴う出願について http://www.inpit.go.jp/content/100046560.pdf

  また、台湾他外国出願についてのご参考として下記にも情報がございます。
  手数料 http://iprsupport-jpo.go.jp/syutsugan/pdf/Major.pdf
  台湾の知的財産権制度と侵害対策 http://iprsupport-jpo.go.jp/joho/pdf/taiwan-ipsystem2011.html
  外国産業財産権侵害対策等支援事業 http://iprsupport-jpo.go.jp/joho/text.html
  各国産業財産権法概要一覧表 http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/kokusai/kokusai2/sangyouzasisankenhou_itiran.htm
  相談事例QA集 http://iprsupport-jpo.go.jp/cgi-bin/search.cgi
  Tiplo実務マニュアル http://www.tiplo.com.tw/pdf/TaiwanPatentManual-20101126revised-JP.pdf
以 上

(H25.1作成: 事務・経理 中野 博美)


→【1】論説:新しいタイプの商標制度導入をめぐる商標法改正の動きについて
→【2】論説:〜「知財事件」と「一般事件」とは、こんなところが違う〜
→【3】論説:出願後に提出された実験結果の参酌について
→【4】論説:営業秘密の保護と競業禁止特約について
→【5】記事のコーナー:エネルギーと日本の技術について思うこと
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