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発行日 :平成20年 1月
発行NO:No20
発行 :溝上法律特許事務所
弁護士・弁理士 溝上哲也
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【1】論説〜模倣品に対する侵害警告について〜
1 模倣品に対する侵害警告
技術革新と差別化が日々求められている昨今では、各企業が他社より機能が良く品質の優れた商品を作るための激しい技術競争をしており、開発された新技術やその過程で得られた情報などは、企業秘密として管理されて、商品の製造に利用されたり、さらに新しい技術開発に利用されたりしています。また、商品の販売に際しては、デザインを斬新なものとし、アフターサービスなどの付加価値を充実させたり、憶えやすいネーミングを付けたりして、自社の製品を他社のものと区別しています。 そのような中で、他社の技術や商標・デザインなどを真似たり、盗用したりする行為が放置されれば、各企業は安心して技術競争や販売競争をすることが出来ず、取引の安全や消費者の利益が害されることとなります。また、作詩・作曲や映像その他のコンテンツを創作したときに、これらを他人に簡単に真似されたり盗用されたりすれば、苦労して生み出した著作物を発表する人が少なくなるので、文化の発展にとっても大きなマイナスとなります。
これらの真似や盗用による模倣品は、日本国内のみならず、中国・韓国などの東アジア地域でも生産され、全世界に輸出され、国際的にも取締の必要性が指摘されています。これらの模倣品の製造・販売を禁止して、適正な技術競争や取引の安全を図り、文化の発展に寄与するために整備されてきたのが知的財産権制度で、企業活動においては、特許権、実用新案権、意匠権、商標権を取得して独占権を行使したり、著作権、不正競争防止法上の権利を行使して、模倣品に対して侵害警告が行われています。
模倣品に対する侵害警告とは、模倣した者に対して差止請求権の行使が認められている場合に、その行使方法として差止その他の請求の意思を表示することを意味しますが、法的手続への移行や損害賠償を予告するので、一般に「警告」と呼ばれています。
2 侵害警告の内容と方法について
1) 内 容
侵害警告を行う場合には、先ず権利者がどのような権利に基づいて警告するかを表示します。特許権、実用新案権、意匠権、商標権の特許庁で登録がなされる産業財産権については、登録番号と発明の名称などを表示し、特許公報などを添付する場合もあります。また、登録が権利成立の要件とされていない著作権、不正競争防止法上の権利の場合は、どのような著作物か、商品形態または周知表示かなどを特定する事項を表示します。
次に、侵害者がどのような商品を製造販売しているか、あるいはどのような表示をしているかなどを指摘し、侵害警告の根拠となる権利と対比して、それが侵害となることを明らかにします。
そして、侵害警告に際し、相手方に何を求めるかを記述します。具体的には、差止請求権の行使として求める行為、例えば、製造または販売の中止、金型や在庫品の廃棄などの行為を相手方に求めます。侵害行為に対して損害賠償請求をする旨も合わせて通知するのが通常です。それと同時に、相手方に輸入元、販売先、個数・単価などの事実の開示を求めることも良く行われます。
2) 方 法
侵害警告は、後日の証拠とするため、内容証明郵便を送付するのが通常です。内容証明郵便は、特許公報などの資料を同封できないので、資料を合わせて送付する場合は、内容証明郵便とは別に書留郵便を送ります。これらの郵便が侵害者に届いたことを証明するために配達証明書の送付も同時に求めておきます。
電話などにより口頭で行う場合もありますが、その場合は、録音しておくなどして、後日の証拠を残しておくべきです。また、オークション出品者の場合など侵害者の住所がわからない場合や海外在住者の場合は、電子メールによったり、FAXによって警告する方法をとるしかありません。
侵害者を訪問して警告をすることも可能です。この場合は、後日の証拠とするため、文書を用意して、複数の者で訪問する方が良いと言えます。予告をすることなく侵害者の店舗、事務所に行くことにより、侵害者に対策を考える余裕を与えずに同時に事実確認をすることが可能となるので、ケースによっては、有効な方法となります。
3 侵害警告に際しての注意点について
侵害警告に際しては、以下の注意が必要です。 実用新案権に基づく警告の場合、実用新案技術評価書を提示して警告することが、差止請求権行使の要件となっています(実用新案法29条の2)。したがって、この場合は、事前に実用新案技術評価書を取得し、その写しを添付して警告を行う必要があります。また、実用新案権の場合は、特許・意匠・商標の産業財産権と異なり、故意過失の推定規定がなく、損害賠償の範囲が警告後の行為に限られる場合があるので、速やかな警告が必要です。 特許出願公開に基づく補償金を求める場合にも、法律上、特許出願に係る発明の内容を記載した書面によることが請求の要件とされていますので(特許法第65条)、口頭で警告することはできず、かつ、同時に特許公開公報を送付しておくことが必要です。 そして、競争者の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布行為は不正競争行為とされており(不正競争防止法2条1項14号)、裁判例においても、サンゴ化石粉体事件(東京地方裁判所平成15年10月16日判決)では、競業者の米国内取引先に権利侵害に関する告知をした特許権者に対し、非侵害が明らかであるとして、虚偽事実の告知・流布の差止めと損害賠償が命じられていますので、侵害と考えられるケースが実際に侵害警告できる場合か否か、誰を相手にどのように警告したら良いのかについて、警告前に弁護士または弁理士に相談しておくことが必要です。
以 上
(H20.1作成: 弁護士・弁理士 溝上 哲也)
→【1】記事のコーナー :俳句のすすめ
→【3】論説:インクカートリッジの「リサイクル」と特許権制度
→【4】論説:プロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈について
→【5】論説:法律的に考えてみると〜(通勤編)〜
→【6】記事のコーナー :子供の頃の夢
→【7】記事のコーナー :事務所の近況
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