A 尋問で前提となる事実
尋問は、時間も限られ、前提となる事実は、予め陳述書に記載しておき、尋問を効率的にする必要があります。
B 尋問では言い足りないこと
裁判は、法律に従って行われ、裁判官も基本的には、法律の判断にとって必要な事実か否かに興味があります。したがって、特に事件の思い入れのある供述者には、言いたいことを思うとおり言えない事態も生じます。
これも予め陳述書に記載しておき、尋問で言い足りないことがないようにする必要があります。
C 尋問の打ち合わせ
「主尋問」については、供述する者と、質問をする弁護士との入念な打ち合わせが必要となります。陳述書提出の後に、尋問の打ち合わせを尋問期日前にするのが一般ですが、陳述書は、尋問の打ち合わせを効率的にするためにも必要となります。
尋問は、公開の法廷で、宣誓した上で、裁判所の前に立ち、質問に的確に答えることが必要となります。恐らく一般の人にとってみれば、一生に一度のことで、緊張することと思われます。尋問の一般的な心得としては、次のものが挙げられます。
@ 時間厳守(早めに出頭し、心の余裕を)
尋問期日は、時間厳守です。裁判所で弁護士と待ち合わせというのが多いと思われますが、尋問前に、書面に住所・氏名等を記載する作業が必要となります。
時間に余裕をもって早めに裁判所に出頭しましょう。
A 服装等の注意
裁判所は、供述者の態度、口振り等も証拠とできます。どこまで影響するかは分かりませんが、神聖な法廷での証言ということを自覚した服装等をしましょう。
B 落ち着いて「質問」を良く聞きましょう。
尋問は、「質問」に対する「答え」という形で進行します。
質問が分かりにくい、質問が聞こえないまま「答え」をしても、また、「質問」に対する「答え」となっていない場合には、相手方代理人や裁判官から注意されます(更に緊張しますね。)。
質問が分かりにくい、質問が聞こえないときは、遠慮なく、質問者に対して言うことが必要です。
例
「質問が分かりにくいのですが?」
「もう一度質問をお願いしてよいですか?」
主尋問の場合は、打ち合わせの上、予め何が「質問」されるか分かるので余り心配はないですが、反対尋問は、何が聞かれるか分かりませんので、特に注意が必要です。
質問を良く聞いて、「質問」に対する「答え」をしましょう。
C 明確な「答え」
「答え」は裁判官に対して、大きくはっきりと言って下さい。
質問に対する「答え」を端的に言えば足ります(これが、難しいのですが。)。
「答え」が足りないなと感じても、自分で付け加える必要はありません(むしろ、これをすると裁判官から注意されることもあります。)。
「答え」が足りない場合は、更に「質問」がされますので、遠慮なく、「答え」のみを言って下さい。
D 陳述書の見直し
陳述書に記載されている事実を基に、反対尋問をされたり、裁判官からの質問があります。尋問前には、もう一度陳述書を見直し、尋問の予習をしましょう。
尋問の際には、基本的に何も見ることはできません。陳述書と全く違うことを供述したり、矛盾したことを言えば、反対尋問の際に、そこを突かれます。よく内容を把握しておきましょう。
万一、陳述書を見直していた際に、誤り等があれば、弁護士に即座に伝えましょう。
3-3 反対尋問の心得
反対尋問では、「質問」する反対尋問者側からすれば、供述する人は、敵対する人となり、証言を崩すために色々策を講じます。そこで、ここでは、特に反対尋問の心得を、取り上げます。
@ 「質問」を良く聞きましょう。
上記と同じで、尋問者の「質問」を良く聞いて理解した上で、「答え」をしましょう。聞こえなかったり、質問の意味が分からなかった場合は、遠慮なく、言うべきです。
A 入念な打ち合わせをしましょう。
尋問の打ち合わせは、主尋問の「質問」と「答え」を予め良く理解しておくことが重要なのは、もちろんですが、反対尋問対策として、予め予想される尋問について、よく弁護士と打ち合わせすることも重要です。
もし、こう聞かれたら、こう答えるということをシュミレーションしておくだけでも、大分違います。
B 「答え」が封じられても気にしないようにしましょう。
反対尋問者に、よく見られることですが、供述者が、質問と関係のない事項を答えたり、長々と話したりしたとき、
「聞かれていることだけに答えて下さい」とか、
「もう少し短く」とか、
「ハイとイイエだけで結構です」とか、
など言われて、言いたいことが言えない、質問としては、イエスだが、説明する必要があるなど、ストレスが溜まることもあると思われます。
説明をして、反対尋問者の持ち時間を短くするというテクニックもあると思われますが(止められなければ、いいですから。)、基本的に「答え」が詳細にできないことを気にしないようにしましょう。必要ならば、再主尋問の際に自分の依頼した代理人から聞くことができます。
C 弾劾証拠に要注意
尋問中、供述の矛盾や誤りを突くために、反対尋問者は、証拠を期日において提出する場合があります。基本的な反対尋問のテクニックとして、
言いたいことを散々言わせて、弾劾証拠を突きつける
というものがあります。
相手方の証拠は、期日前までに出てきた証拠が全てではないかもしれないことを十分に認識しておきましょう(敢えて隠しておく場合も、あります。)。
D 「分からない場合」「知らない場合」「記憶にない場合」
尋問は、体験した事実のみをしゃべることが基本です。分からない場合、知らない場合、記憶にない場合は、そう、はっきりと述べれば結構です。
ただ、他の証拠、具体的な状況などから、当然に分かること、知っていること、記憶しているはずなことを分からないとか、知らないとか、記憶にないなど言えば、証言に信用性がないと言われることがあるのは、勿論です。
E 失礼な質問、腹が立つ質問などに対して
証人等を侮辱する質問などについては、異議を述べることができますが(代理人が述べます。)、基本的に失礼な質問、腹が立つ質問などについては、熱くならず冷静でいることが重要です。