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発行日 :平成16年 7月
発行NO:No13
発行 :溝上法律特許事務所
弁護士・弁理士 溝上哲也
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【2】論説〜知的財産訴訟の管轄について〜
1 管轄とは
管轄とは、「民事裁判権があることを前提とした上での裁判所間の事件分掌のための定めである。特定の裁判所からいえば、その裁判所がどの範囲の事件を取り扱うことができるか(管轄権)という問題である。」(注釈民事訴訟法(1)・143頁、有斐閣・平成3年)。
原告側からすれば、訴訟をする際、どこの裁判所に訴えればよいかという問題です。
知的財産訴訟に関しては、審理される裁判所が、あらかじめ決められている場合があります。
依頼者の立場からすれば、経験が備わった裁判官による審理が期待できるというメリットがある反面、弁護士や技術説明者の出張の必要、それに伴う交通費、往復時間など負担の問題が生じるデメリットがあるといえます。
2 特許権等に関する訴え(民訴法6条)
2-1 特許権等に関する訴え、地方裁判所における専属管轄
特許権、実用新案権、回路配置利用権又はプログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴え(以下「特許権等に関する訴え」という。)については、
平成16年4月1日以降においては、
東日本(東京、名古屋、仙台、札幌高等裁判所の各管轄区域内)
東京地方裁判所、
西日本(大阪、広島、福岡、高松高等裁判所の各管轄区域内)
大阪地方裁判所、
の管轄に専属することになりました。
「専属」というのは、仮に、異なる裁判所に訴えを提起しても、その裁判所では審理されないということを言います(ただし、「審理すべき専門技術的事項を欠くことその他の事情により、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で」移送という場合はあります。)。
例を挙げていえば、原告・被告とも、双方代理人弁護士とも、那覇(福岡高等裁判所管轄区域)にあろうとも、大阪地方裁判所で、同様に、旭川(札幌高等裁判所管轄区域)にあろうとも、東京地方裁判所で、裁判が行われるということになります。
2-2 特許権等に関する訴え、東京高等裁判所における専属管轄
平成16年4月1日以降に大阪地方裁判所・東京地方裁判所に訴えが提起された特許権等に関する訴えについて、控訴裁判所が東京高等裁判所となります。
従来は、大阪地方裁判所に提起された知的財産訴訟の控訴審は、大阪高等裁判所で審理されましたが、控訴審裁判所が、東京高等裁判所に統括されるということになります。
つまり、
1審:東京地方裁判所か大阪地方裁判所
控訴審:東京高等裁判所
ということになります。
2-3 特許権等に関する訴えを本案とする保全命令事件の管轄の特例
(民事保全法12条2項)
特許権等に関する訴えを本案とする保全命令事件は、「本案の管轄裁判所」である東京地方裁判所又は大阪地方裁判所となります。
つまり、
本案の管轄裁判所が、大阪地方裁判所であれば、
大阪地方裁判所
本案の管轄裁判所が、東京地方裁判所であれば、
東京地方裁判所
が保全命令事件における管轄となります。
2-4 イメージ図
3 意匠権等に関する訴え
3-1 意匠権等に関する訴え、地方裁判所における競合管轄
(民訴法6条の2)
意匠権、商標権、著作者の権利(プログラムの著作物についての著作者の権利を除く。)、出版権、著作隣接権、若しくは、育成者権に関する訴え又は不正競争(不正競争防止法2条1項に規定する不正競争をいう。)による営業上の利益の侵害に係る訴え(意匠権等に関する訴え)については、従来認められる管轄裁判所(例えば、被告の住所地など)に加えて、平成16年4月1日以降、
東日本(東京、名古屋、仙台、札幌高等裁判所の各管轄区域内)の場合、
東京地方裁判所、
西日本(大阪、広島、福岡、高松高等裁判所の各管轄区域内)の場合、
大阪地方裁判所、
にも訴えを提起することができます。
つまり、原告としては、先の例でいえば、那覇の場合、那覇地方裁判所(厳密にいうと、支部管轄も注意を払う必要はありますが。)にも大阪地方裁判所にも、旭川の場合、旭川地方裁判所にも、東京地方裁判所にも、訴えを提起できるということになります。
依頼者の立場からすれば、上記に掲げたメリットを重視するか、デメリットを回避するかの選択の問題になります。これも訴提起の際に、弁護士と相談すべき重要な事項となります。
3-2 意匠権等に関する訴え、高等裁判所における管轄
この場合、
東日本
東京地方裁判所に訴え提起した場合は、
東京高等裁判所
従来管轄が認められる地方裁判所に訴え提起した場合は、
各々の管轄高等裁判所
西日本
大阪地方裁判所に訴え提起した場合は、
大阪高等裁判所
従来管轄が認められる地方裁判所に訴え提起した場合は、
各々の管轄高等裁判所
に訴訟が係属することになります。
当初の地方裁判所に提起する時点から、控訴審になった場合も考慮して、管轄を決定することが必要といえます。
3-3 イメージ図
以上
(H16.7作成 :弁護士 岩原 義則)
→【1】論説:弁護士会報酬規定の廃止
→【3】論説:特許製品の並行輸入について
→【4】記事のコーナー :意匠について
→【5】記事のコーナー :裁判所知財部についてのお知らせ
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