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権利者の確認
特許権の行使ができるのは、特許権者と専用実施権者に限られていますので、警告者がこれらの者であるかどうか確認します。警告書に記載してある特許番号に基づいて、特許原簿の謄本を取り寄せ、これらの者が表示されているかを調査します。なお、特許原簿には通常実施権者が表示されていることもあり、これらの者が警告する例も見聞しますが、通常実施権者が侵害警告を行うことは出来ません。
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権利の有効性の確認
特許権は、設定の登録により発生し、その存続期間は、特許出願の日から20年とされているので、念のため、相手方の権利の存続期間が満了していないかどうか確認します。また、存続期間内であっても、特許権を維持するためには、毎年、特許料を支払う必要がありますので、特許料の不払によって権利が消滅していないかも確認します。これらの調査は、いずれも特許原簿の記載に基づいて行います。
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権利内容の確認
警告書には、侵害されたという特許権の番号は表示されていても、権利内容の詳細までは記述されていませんので、警告書に記載してある特許番号や公告番号に基づいて特許公報を入手します。特許公報は、特許庁ホームページの特許電子図書館で閲覧・ダウンロードできるほか、発明協会などでも購入できます。特許公報には、「特許請求の範囲」「発明の詳細な説明」「図面」「要約書」などの項目がありますが、このうち、「特許請求の範囲」欄の記載が相手方の特許権の内容となります。
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自社製品との対比
特許発明の技術的範囲は、願書に添附した明細書の特許請求の範囲の記載に基いて定めなければならないとされていますので(特許法第70条1項)、上記の調査・確認の後に自社製品の構成と特許公報の「特許請求の範囲」欄の記載を対比して、相手方が主張するように本当に侵害と言えるかどうか検討することになります。その場合、明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面については、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈する際に考慮してもよいとされていますが、要約書の記載は、考慮してはならないとされています(特許法第70条2項3項)。また、上記の対比判断に際しては、特許公報には記載されていない出願経過書類での記述や出願当時の技術水準が前提となるので、これらの書類の取寄や出願前の公知例とか公知文献の調査をしておくことが望ましいと言えます。場合によっては、警告を発した権利者やその代理人に侵害となる理由を尋ねることもありますが、いずれにしても権利範囲の確定やその対比検討は、専門的な判断を要する微妙なことなので、弁護士や弁理士に相談することをお勧めします。
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