発行日 :平成12年 1月
発行NO:No3
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【2】論説〜知的財産権制度について〜
(1)知的財産権とは何か

現代では各企業が他社より機能が良く品質の優れた商品を作るための激しい技術競争をしており、商品の販売に際しては、アフターサービスなどの付加価値を充実させたり、憶えやすいネーミングを付けたりして、自社の製品を他社のものと区別しています。そのような中で、他社の技術や商標などを真似たり、盗用したりする行為が放置されれば、各企業は安心して技術競争や販売競争をすることが出来ず、取引の安全や消費者の利益が害されることとなります。
また、作詩をしたり、作曲をしたときに他人に簡単に真似されたり盗用されたりすれば、苦労して生み出した詩や曲を発表する人が少なくなるので、文化の発展にとって大きなマイナスとなります。これらの真似や盗用を禁止して、適正な技術競争や取引の安全を図り、文化の発展に寄与するために整備されてきたのが知的財産権制度です。
知的財産権とは、さまざまな分野で生まれた人間の知的生産の成果である無形の財産を守ろうという権利の総称であり、大きく分けて@「工業所有権」A「著作権」B「その他の権利」をひとまとめにした言い方です。知的財産権は、土地や建物などの有体物を対象としたものではないので、無体財産権と呼ぶことがあります。

(2)知的財産権の種類

知的財産権の種類と権利期間、登録制度の有無については、下記表のとおりです。

登録の要否
登録機関
権利期間
















特許権
(発 明)
特許庁
出願から
20年。
実用新案権
(考 案)
特許庁
出願から
6年。
意匠権
(デザイン)
特許庁
出願から
15年。
商標権
(トレードマーク)
特許庁
登録から
10年。
但し、更新
登録可能。










回路配置利用権
(半導体集積回路の回路配置に関する
法律)
通商産業省
(指定登録機関)
登録から
10年。
育成者権
(種苗法)
農林水産省
登録から
20年。
但し、樹木は
25年。
商号権
(商 法)

(会社の場合)
法務局
法人存続中。
不正競争防止法上の権利
(企業秘密、
著名表示、
商品の形態など)
──── 期限なし。
但し、商品形態の模倣については、最初に販売された日から3年。
氏名・肖像を利用する権利
(民 法)
──── 生存中。
著作権
著作者の権利
小説、脚本、論文
音楽、舞踊、絵画
彫刻、建築、地図
映画、写真、プログラム
など
文化庁
原則として、
著作者の死亡から50年。
著作隣接権
歌手、俳優、演奏家
レコード会社、放送局
など
文化庁
実演・レコード化・放送などの行われた年の翌年から50年。


知的財産権のうち、工業上及び商業上の知的創造活動の成果を登録による排他的な権利の形式で保護する「特許」「実用新案」「意匠」「商標」を総称して、工業所有権と呼んでいます。
他方、工業的生産物とは異なり、文芸、学術、美術、音楽などの文化的活動に属する知的創作物を保護する法律として著作権法があり、著作権法では、自ら創作した著作物を独占的に支配して財産的利益を受ける権利である著作者の権利と、既存の著作物を利用してこれを一般公衆に伝達する役目を担う実演家、レコード製作者、放送事業者などの経済的利益の保護を図る著作隣接権が規定されています。
また、知的財産権に属するその他の権利中には、事業活動を行なうときに使われる営業上の標識である商法上の権利としての「商号」や民法の不法行為の問題となる個人の「氏名や肖像を利用する権利」、技術ノウハウや顧客情報などの営業秘密の不正取得や商品形態の模倣、周知又は著名な表示へのフリーライドを規則する不正競争防止法があります。さらに、近年におけるバイオテクノロジーやエレクトロニクスなどの技術革新に対応して種苗法による植物の新品種の保護を図る「育成者権」や半導体集積回路の回路配置に関する法律による「回路配置利用権」の登録など新たに保護されるようになった知的財産権も生まれています。

なお、最近、民間業者による「知的所有権登録」なる商法をよく見聞するようになりましたが、「知的所有権」は、知的財産権の別の呼び方で、特許や著作権などの法律に規定された権利の総称として使われる用語にすぎず、「知的所有権」という個別の権利はありません。したがって、「知的所有権」自体の登録ということもありません。弁護士会や弁理士会も関係省庁と協議して対策に取り組んでいますので、皆さんもご注意下さい。知的財産権に属する個別の権利についての登録申請や侵害問題などは、資格を有する弁護士や弁理士にご相談下さるようにお願いします。


(H12.1作成 弁護士 溝上 哲也)


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