A いわゆる「グレーゾーン」の問題である。従来、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(出資法)所定の年利29.2%未満(改正前は、約40%。これを超えると刑事罰の制裁があるので、この範囲内で貸付を行う業者が大部分である。)で、利息制限法(年利15〜20%。元本によって異なる。)を超える金利で取引がされているものが極めて多い。この利息制限法を超え、出資法未満の「金利の幅」を一般に「グレーゾーン」と呼ぶ。
B Aの「グレーゾーン」金利を受領することができるには、貸金業法43条所定の「みなし弁済規定」に基づく要件を満たすことが必要とされるが、この「みなし弁済規定」については、多くの要件があるうえに、厳格に解釈することが要請されているため、殆どの貸金業者は、この要件を充たさないまま、「グレーゾーン」の金利を徴収している。
C Bの貸金業法の要件を充たさない「グレーゾーン」の金利について、借り主は、貸金業者の請求するまま借金の返済を続けている現状がある。例えば、契約の金利が「年利26%」の場合、法定金利が15%とすると、11%分の金利は、法律上支払う義務がなく、一回あたりの返済について、11%分多く払いすぎているということになり、元本が100万円で、1年では115万円のはずが、1年で126万円払っていることになるから、単純に計算すると、この場合、11万円が「過払金返還」の対象となるということになる。
しかし、「過払金返還」を実現するには、借り主本人が、業者に言っても、応じてくれない場合も多く、また、「過払金返還」を請求するには、取引当初からの出金、入金の取引履歴を入手して計算する必要があり、これ自体拒まれることも多い(ちなみに、貸金業者によるこのような取引履歴の開示拒否は、判例により、損害賠償が発生する場合があるとされている)。そのため、弁護士に依頼することにより「過払金返還」の請求を行うことが必要となっているのである。
・どのような場合に過払金の回収を要するか
従来、古くからの取引であっても、破産手続上は、過払金を考慮されることなく、業者が破産における債権調査票に記載した債権額(グレーゾーン金利により計算された残額)がそのまま破産における債権額となっていた。この運用基準を改め、引き直し計算後残高が、
T 30万円未満の場合→原則として回収は不要。
U 30万円以上の場合→このままでは、同時廃止はできない。
申立代理人による回収が必要。
となった。Tの場合、回収せずに免責を得たとすれば、その後、債務者が独自財産として回収できるということになろう。
@ 制限超過利息を任意に支払ったときは、その利息は残存している元本に充当する(最判昭和39年11月18日民集18巻9号1868頁)
A 過払いになった金銭(過払金)を不当利得(民法703条)として返還請求できる(最判昭和43年11月13日民集22巻12号2526頁)。
B 貸金業者は、保有している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負う(最高裁判所第3小法廷平成17年7月19日判決民集第59巻6号1783頁)
C 期限の利益喪失特約がある場合には、原則として支払の任意性がない(最判平成18年1月13日判時1926号17頁)。
D 商行為である貸付けに対する弁済金のうち利息制限法の制限超過利息を元本に充当することにより生ずる過払金を返還する場合に,悪意の受益者が付すべき民法704条前段の利息の利率は,民法所定の年5分である
(札幌高裁平成18年(ネ)第303号 平成19年4月26日判決・兵庫弁護士会ホームページ)
F 貸金業者が利息制限法の制限超過利息を受領したがその受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合、特段の事情が認められない限り民法704条の「悪意の受益者」であることが推定される
(最高裁判所第三小法廷平成18(受)1666、平成19年07月17日判決等・最高裁ホームページ)