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発行日 :平成16年 1月
発行NO:No12
発行 :溝上法律特許事務所
弁護士・弁理士 溝上哲也
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【1】論説〜ホームページ作成時の留意点〜
(1)企業におけるホームページの利用
インターネットにおいて企業のホームページが立ち上げられるようになってから、既に10年余りの月日が流れ、今日では多くの企業が広告、求人をはじめとする各種の情報提供のツールとして利用しています。今や、商業的なホームページは、技術を駆使したり、デザインなどの創意工夫によって多くの人々の関心を集めることが求められており、優秀なホームページによって小規模な企業や個人が大きなビジネスの成功を納める例も珍しくありません。インターネットは、世界中の不特定多数の人に向かって、リアルタイムでいろいろな種類の情報が発信される点に特色がありますが、その一方で、技術の飛躍的な進歩により、他人の知的な創作物の利用も極めて容易になってきており、不用意な情報発信によって、他人の知的な創作物を無断で利用することになってしまったり、ときには刑事上も犯罪とされるような事例も多く発生するようになってきました。 また、多くの人に関心を持ってもらうためには、そのコンテンツにおいて、他人の知的な創作物を利用して多彩な情報発信をすることが不可避ですが、他人の知的な創作物は、主に著作権法によって保護されていますので、ホームページを作成するにあたっては、何が著作物に該当し、どのような著作物をどのような方法で利用することができるかについて、注意して行なうことが必要です。
(2)著作物の意義と種類
著作権は、著作権法上、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術美術又は音楽の範囲に属する著作者の利用について認められる権利のことをいうとされています(著作権法2条1項1号)。そして、著作権法は、著作物として、
(1)小説、脚本、論文、講演などの言語の著作物
(2)音楽の著作物
(3)舞踊又は無言劇の著作物
(4)絵画、版画、彫刻などの美術の著作物
(5)建築の著作物
(6)地図、図面、図表、模型などの図形の著作物
(7)映画の著作物
(8)写真の著作物
(9)プログラムの著作物
を例示しています(著作権法10条1項)。また、著作権法上の権利としては、財産権としての著作権以外に、譲渡性がなく著作者のみに帰属する著作者人格権(著作権法18条、19条、20条)と実演家、レコード制作者、放送事業者が権利主体となる著作隣接権があります(著作権法89条)。
著作権法上、何が著作物に該当するのかのポイントは、まず上記の例示された著作物に該当するかどうかを見た上で、それが「思想又は感情を創作的に表現したもの」であるかどうかということになります。「表現」である以上、言語、文字、音、色などにより外部に表現されていることが必要で、創作者の内心にとどまっているアイデアは、著作物ではありません。また、思想または感情の表現である必要があるので、事実をそのまま伝達した記事なども著作物でないことになります。そして、創作性のあることが必要なので、個性のない人真似や誰でも同じ表現になるものは著作物ではありません。
したがって、ホームページの作成のためにコンテンツとして何らかの素材を利用する場合には、それが上述した著作物に該当するかどうか確認し、著作物に該当する場合には、それが誰に帰属するどのような権利かの観点から、その利用に著作権法上の問題がないかどうか検討する必要があります。
(3)著作物のホームページへの掲載と著作権侵害
次に、著作物をホームページに掲載することは、著作権のうちのどの権利を侵害することになるのでしょうか。
他人の著作物を無断でホームページに掲載する過程で、画像データをサーバーコンピュータにアップロードしますが、この行為は、画像データの複製にあたりますので、まず、著作物の「複製権」の侵害となります(著作権法21条)。そして、サーバーコンピュータをインターネットで閲覧可能な状態に置くことは、「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行なう」公衆送信を利用者がアクセスすることで、いつでも利用者に送信可能な状態に置いているので、いわゆる「公衆送信権」の侵害となります(著作権法2条、23条)。また、ホームページを作成するに際して、他人の著作物を変形したり、修正したりしたときには、「翻案権」および著作者人格権である「同一性保持権」の侵害となります(著作権法20条、27条)。さらに、著作者名を表記せずに掲載すれば、著作者人格権である「氏名表示権」を侵害することになり、その著作物が未公表であった場合には、「公表権」の侵害となります(著作権法18条、19条)。
したがって、著作物をホームページに掲載することは、著作権の内容となる「複製権」や「公衆送信権」をはじめとして、「翻案権」や著作者人格権の内容である「公表権」「同一性保持権」、「氏名表示権」を侵害する可能性があるので、ホームページに利用する著作物について、その権利者が事前に上記の各権利それぞれを許諾しているのか、その許諾の範囲はどの権利までかを個別に確認して行なう必要があります。また、ホームページへの掲載に際して、新たに著作権者から許諾を得る場合には、後日の紛争を避けるために、掲載の態様に応じた各権利それぞれについて、許諾を得ておくように留意する必要があります。
なお、例示されている上記の著作物のうち、建築の著作物は、ホームページ上で複製することはできませんし、自社で撮影した建築物の写真をホームページに掲載することも、建築の著作物の侵害とはならないので、ホームページ作成に際して、これを侵害することはありません。
(4)他人の著作物を許諾なく使用できる場合
著作権法は、著作権の保護と社会公共の利益のバランスを図るために、著作権の行使が制限される場合を法定していますが、そのうち企業がホームページを立ち上げる際に、適用されるものは、次のとおりです。これらに該当する場合は、他人の著作物を許諾なく使用することができますので、その使用方法に注意して、ホームページに利用することができます。
[1]公表された著作物の引用
公表された著作物は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して、利用することができます(著作権法32条1項)。引用の具体的方法としては、引用部分を明確に区別し、自分の著述部分を主とした上で、出典、出所、著作者名を明記する必要がありますが、商売上のホームページでは目的の正当性がないとされる可能性があるので注意が必要です。また、国・公共団体の広報資料、調査統計資料、報告書などは、禁止の表示がない限り、転載することができます(著作権法32条2項)。
[2]時事問題に関する論説の転載
新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説は、それが学術的な性質を有するものでなく、その利用を禁止する旨の表示がない場合は、ホームページに転載することができます(著作権法39条)。
[3]保護期間終了後の著作物の利用
著作権は、著作権者が死亡してもその相続人に相続されますが、著作者死亡後原則として50年間が経過すると、著作権は消滅し、以後はその著作物を自由に利用することができます(著作権法51条2項)。法人が著作権者の場合は、著作者の死亡ということはありませんので、その保護期間は、著作物の公表後50年間で権利が消滅するとされています(著作権法53条1項)。なお、著作者人格権は、著作者の死亡により消滅すると解釈されますが、著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなった後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならないとされていますので(著作権法60条)、同一性保持権は、著作権消滅後も保護すべきであり、権利消滅後も他人の著作物の改変は控えるように注意する必要があります。
以上
(H16.1作成 :弁護士 溝上 哲也)
→【2】記事のコーナー:特許の異議申立制度と無効審判制度の統合について
→【3】記事のコーナー:平成16年4月施行の特許関係料金の改定について
→【4】事務所の近況 :事務所第3次おめでたラッシュ!
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