発行日 :平成30年 8月
発行NO:No41
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【1】中国における商標出願の急増について〜
1 中国における商標出願の推移について
   中国における商標出願件数は、下記のとおりであり、増加率は2014年に20%超え、2016年まで毎年20%〜30%の年間増加率を保ち、緩やかに増加する傾向にあったが、2017年に急激に拡大し、前年比で55.7%増加の574万8,000件となっている。2017年の日本の商標出願件数が19万件余りであることからすると、30倍を超える膨大な商標出願がなされたことになる。もちろん、中国は、世界最大の商標出願件数であるが、このように商標出願件数が増加した原因としては、@官庁手数料の値下げを中心とする出願コストの低減、A国内市場の消費構造の変革による商品及び役務の種類並びにブランドの増加、B輸出入貿易の増加による海外ブランドの中国進出の促進、C司法環境の改善に伴う商標権侵害コストの増加がそれぞれ挙げられている。そして、これらの原因に加えて、中国における海外ブランドにフリーライドする方法が巧妙になり、模倣者が先んじて商標登録を行って、ブランドホルダーからの権利行使を受けにくいようにすることも多用されているようである。
【出願件数の推移と増加率】
年   2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
出願件数   707,948 698,119 830,477 1,072,187 1,416,785 1,648,316 1,881,546 2,285,358 2,876,048 3,691,365 5,748,000
増加率   -1.38% 18.95% 29.10% 32.13% 16.34% 14.14% 21.46% 25.85% 28.35% 55.71%
   ところで、中国国内でどの地域の商標出願が多いかについては、広東省、浙江省、北京での増加が特に著しく、下記の5地域の出願件数が全国の出願件数の半分以上となっているとのことである。全体的には、下記5地域に福建省、山東省、河北省を加えた沿海部の経済的先進地域の商標登録出願件数が、西部地域に代表される経済的発展途上地域のそれより高くなっている傾向にある。
地域   広東省 浙江省 北京 江蘇省 上海
件数   831,352 413,043 369,382 269,385 267,097

   出願分類でどの区分が多いかについては、下記の5区分が上位5位の出願区分であり、広告・人材斡旋などの分類と被服類についての出願が増加しているとのことである。
地域   広東省 浙江省 北京 江蘇省 上海
区分   第35類 第25類 第30類 第9類 第43類

2 商標出願の急増による影響について
   上述した商標出願の増加により、中国における商標出願の審査期間が従来より遅くなるという影響が生じている。中国当局では、出願件数の急増に対して、審査官の増加などの対策を講じているとのことであるが、弊所の取扱事件での審査期間が従来の案件では6か月程度であったものが、最近の案件では、8か月程度となっている。  加えて、商標出願の増加に伴い、審査官も急増することになるため、経験の少ない審査官の割合が増え、審査の質の低下が懸念されている。

3 中国における商標出願急増の影響について
   上述した商標出願の増加により、中国における商標出願の審査期間が従来より遅くなるという影響が生じている。中国当局では、出願件数の急増に対して、審査官の増加などの対策を講じているとのことであるが、弊所の取扱事件での審査期間について見れば、従来の案件では登録査定まで6か月程度であったものが、最近の案件では、8か月程度となっている。
   加えて、商標出願の増加に伴い、審査官も急増させる必要があったことから、経験の少ない審査官の割合が増えると共に、必ずしも優秀でない採用者が含まれることとなって、全体として審査の質の低下が懸念されている。中国での出願を多く手がけている弁理士からは、過誤登録が多くなったとか、拒絶されるはずのない出願が拒絶されたことがあるという実感も漏れ聴こえてきており、商標評審委員会(審判)に不服申し立てることが必要な案件が増えるているとのことである。また、商標出願の増加によって、侵害訴訟や審決取消訴訟の件数も今後増加していくことが予想される。

4 弊所の対応について
   中国においても類似範囲にある商標の登録はされないので、出願件数の急増により、新しい商標を取得することがより困難になることが予想されるので、中国市場への進出を予定されている企業や中国での模倣品製造の防止を検討されている企業においては、早期に必要な商標を取得しておくことが必要である。  弊所においても、中国の現地代理人事務所と緊密な連携をとって、これらのニーズに適切に対応できるよう、心がけていく所存である。

以 上

(H30.8作成: 弁護士 溝上 哲也)
→【2】論説:近年の商標の判例について(その3)〜
→【3】論説:自己破産について〜
→【4】記事のコーナー:アンケート:最後の一日〜
→【5】記事のコーナー:スコットランドについて〜
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