発行日 :平成26年 1月
発行NO:No32
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【1】論説:任意後見契約について
 我が国の総人口は、平成24年10月1日現在、1億2,752万人でしたが、そのうち65歳以上の高齢者人口は、前年から104万人増えて、過去最高の3,079万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も24.1%となっています。このように我が国は、社会の高齢化が急速に進行中であり、今世紀半ばには、実に3人に1人が65歳以上という,超高齢化社会が到来すると予測されています。他方、一人暮らし高齢者が高齢者人口に占める割合は、昭和55年には男性4.3%、女性11.2%でしたが、平成22年には男性11.1%、女性20.3%と増加しています。

 ところで、誰でも歳を取ると,次第に物事を判断する能力が衰え、ひどくなると、認知症(老人性痴呆)と言われるような状態となることがあります。また、突然、病気になって入院をし、高次脳機能障害となって、「判断」する機能自体が失われることもあり得ます。このような状態になった高齢者は、日常生活に困難を来すだけでなく、法律的にも意思能力を欠くとされ、自分で自分の財産の管理をすることも、法律行為を行うこともできなくなります。例えば、医師との間で診療契約を締結することも、病院と入院契約を締結することもできず、介護保険を利用した介護サービス提供契約の締結もできません。特に、一人暮らしで家族にこれらの契約を締結してもらえない高齢者の場合は、代わりにこれらの契約をしてもらう人もおらず、裁判所に成年後見人の選任の申立てをして、本人のために契約をする権限のある成年後見人が選任されない限り、必要な契約を締結できないままの状態になってしまい、たとえ、いくらお金を持っていても、自分のお金であっても自分で使えない、自分で自分に関することが処理できないということになってしまいます。

 そこで、このような事態に至ることを防ぐため、本人に十分な判断能力があるうちに、将来、自分の判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約を公証人の作成する公正証書で結んでおくという制度が平成12年4月1日に介護保険制度とともにスタートした成年後見制度の一つとして設けられました。このような契約を「任意後見契約」といい、任意後見契約で選任された代理人のことを「任意後見人」といいます。任意後見契約を締結することで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思にしたがった迅速かつ適切な保護・支援をすることが可能になります。また、任意後見契約の内容は、東京法務局において登記されますので、任意後見人の地位は公的に証明されます。

 このように、任意後見契約は、高齢化社会における「老いの不安」を解消するために適切な制度といえます。特に一人暮らしで、子供のいない高齢者の方は、今すぐにでも任意後見契約を締結した方がいいといえます。また、一人暮らしでなくても子供のおられない夫婦の方は、相方を任意後見人とすることもできますので、やはり元気なうちからそれぞれ任意後見契約を締結し合うことも選択肢になります。経済的な面での「老いの不安」の解消は、年金や生命保険、医療保険で大丈夫ですが、これらだけでは、法律的な老後対策としては不十分です。 65歳以上の高齢者となられた際には、死後の財産等の帰属などを取り決める「遺言」の作成と共に、「任意後見契約」を作成されることをお勧めします。

(H26.01作成: 弁護士・弁理士 溝上 哲也)


→【2】論説:膨張弁にかかる発明の進歩性判断で、引用発明には、弁本体を樹脂製としつつパワーエレメント部と弁本体をねじで螺着することについて阻害事由があると判断された事例
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