発行日 :令和元年 8月
発行NO:No43
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【2】論説~近年の商標の判例について(その5)~
  平成25年1月1日以降、原則として月に1回、裁判所のホームページを閲覧し、審決取消訴訟を中心に、商標の直近の判例をフォローアップし、その中から関心を引いた判決を1件選び、要旨を短くまとめておく取り組みを続けてきました。
  業務が立て込んで忙しいときは、判例を読むこと自体ができない月もありましたが、幸いにしてこの取り組みが2ヶ月以上連続して中断したことはなく、約6年半分の成果物が蓄積されました。
  そこで、事務所報第39号より、上記成果物を「近年の商標の判例について」と題してシリーズでご紹介させて頂いております。
  5回目となる今回は、平成28年2月~平成28年9月の判例の中から下記5件を選びました。商標の実務をされている方の一助になることがありましたら幸いです。  

  1)H28.2.17 知財高裁 平成27(行ケ)10134 商標審決取消請求事件
  医療用の「体脂肪測定器,体組成計」と家庭用の「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」は類似するとして、無効審判請求を不成立とした審決が取り消された事例。  医療用の「体脂肪測定器」等と家庭用の「体重計」等は、審査基準上は非類似とされているが、本判決では、取引の実情を検討し、測定対象が同じであること、需要者が重なっているといえること、性能等が近づきつつあることなどから、本件査定時においては、双方に類似商標が使用された場合には商品の出所について誤認混同を生じるおそれがある類似の商品というべきであると判断された。

  2)H28.3.31 知財高裁 平成27(行ケ)10217 商標審決取消請求事件
  「小鯛ささ漬」の標準文字よりなり、第29類「レンコダイのささ漬」を指定商品として出願された団体商標につき、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないとして登録を拒絶した審決が維持された事例。
  原告は、本来は創語であることや、若狭小浜の名産品で原告構成員によって製造販売が実質的に独占されていることを主張したが、本判決では、「小鯛ささ漬」は格別創作性が高い創語とはいえず、一般的には「小さな鯛を三枚におろし、酢・塩でしめ、笹の葉と一緒に漬けたもの」という原材料、生産方法を記述したものとして認識されるもので、審決に誤りがあるとは認められないと判断された。
  3)H28.4.12 知財高裁 平成27(行ケ)10219  商標審決取消請求事件
  原告の登録商標「フランク三浦」につき、「フランク ミュラー」、「FRANCK MULLER」等の文字よりなる引用商標との関係で商標法4条1項10号、同11号、同15号、同19号に該当するとしてその登録を無効とした審決を取り消した事例。
  本件商標と引用商標は、称呼において類似するが、外観において明確に区別し得るものであり、また、本件商標は日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対し、引用商標からは外国の高級ブランドである被告商品の観念が生じるから、両者が同一又は類似の商品に使用されたとしても、誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえないと判断された。

  4)H28.8.10 知財高裁 平成28(行ケ)10065 商標審決取消請求事件
  「山岸一雄大勝軒」の文字を標準文字で表してなる出願商標は、商標法4条1項8号に該当すると判断された審決が維持された事例。  商標法4条1項8号の趣旨は、人の氏名に対する人格的利益の保護、すなわち自らの承諾なしにその氏名を商標に使われることがないという利益を保護することにあり、同号は「芸名」等については、著名なものを含む商標のみを不登録事由とする一方で、「氏名」については、著名又は周知なものであることを要するとはしておらず、かつ、人格的利益の侵害のおそれがあることそれ自体を要件として規定するものでもないことから、同号にいう「他人の氏名」が、著名又は周知なものに限られるとは解し難いと判断された。
  5)H28.9.21 知財高裁 平成28(行ケ)10077  商標審決取消請求事件
  図形と「“サクラサケ”/ひらけごま」の文字よりなる本件商標と、「ひらけごま!/OPEN SESAME」の文字よりなる3件の引用商標は何れも類似すると判断された無効審決が維持された事例。
   本件商標を構成する文字の全体から生じる「サクラサケヒラケゴマ」という称呼は取引において冗長であり、本件商標は、文字部分の中で特に目立つように配された「ひらけごま」が看者に強く支配的な印象を与えているということができるから、「ひらけごま」の部分が独立して自他商品の識別標識として機能していることは明らかと判断された。
以 上
(2019. 8作成: 弁理士 山本 進)


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