発行日 :平成29年 8月
発行NO:No39
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【2】論説~近年の商標の判例について(その1)~
  平成25年1月1日以降、原則として月に1回、裁判所のホームページを閲覧し、審決取消訴訟を中心に、商標の直近の判例をフォローアップし、その中から関心を引いた判決を1件選び、要旨を短くまとめておく取り組みを続けてきました。
  業務が立て込んで忙しいときは、判例を読むこと自体ができない月もありましたが、幸いにしてこの取り組みが2ヶ月以上連続して中断したことはなく、約4年半分の成果物が蓄積されました。
  そこで、今回より、その成果物を「近年の商標の判例について」と題してシリーズでご紹介させていただきます。
  初回の今回は、平成25年1月~9月の判例の中から下記5件を選びました。商標の実務をされている方の一助になることがありましたら幸いです。

  1)H25.1.24 知財高裁 平成24(行ケ)10285 商標審決取消請求事件
  第30類「あずきを加味してなる菓子」を指定商品として出願された商標「あずきバー」について、拒絶査定不服審判の請求を不成立とした審決を取り消した事例。
  商標「あずきバー」は、原告により「あずきを加味してなる棒状の氷菓子」に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認められるとして、商標法3条2項該当性が認容された。

  2)H25.2.6 知財高裁 平成24(行ケ)10273 商標審決取消請求事件
  「数検」及び「数学検定」の文字を上下二段に横書きしてなり、第41類「数学に関する資格認定試験の実施」等を指定役務とする商標について、社会的混乱を生じさせたこと等を根拠に、商標登録後に商標法4条1項7号に該当するものとなったとして無効審判の請求を認容した審決が、審決の判断には誤りがあるとして取り消された事例。
  3)H25.3.21 知財高裁 平成24(ネ)10382 商標審決取消請求事件  「NEO RHYTHM」または「NEORHYTHM」の文字よりなる商標は、「rhythm」の文字よりなる登録商標と社会通念上同一と認められる商標には当たらないと判断され、不使用取消審判の請求を不成立とした特許庁の審決が取り消された事例。

  4)H25.5.30 知財高裁 平成25(行ケ)10028 商標審決取消請求事件
  第30類「菓子及びパン」を指定商品とする商標「御用邸」について、皇室と何らの関係もない者が自己の業務のために独占使用することは、皇室の尊厳を損ね、国民一般の不快感や反発を招くものであるから、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当すると判断して、その登録を無効とした特許庁の審決を維持した事例。
  5)H25.9.25 知財高裁  平成25(行ケ)10031 商標審決取消請求事件
  本件商標「グラム」について、使用の事実が認められないとして指定商品中の「被服」についての登録を取り消した審決が、原告(繊維メーカー)傘下の中国法人(通常使用権者)が要証期間内に社会通念上同一の商標「Gram」を表示した下げ札を付したダウンジャケットを日本国内の法人Aに譲渡し、同法人がさらに国内の法人Bに販売した事実が認められるとして、審決が取り消された事例。

  本件商品には、本件下げ札のほかに、法人Bの登録商標を表示した襟ネームも付されていたことから、被告は、本件下げ札は本件商品に使用された原告の特殊軽量素材の生地を示すための表示というべきで、本件商標が「被服」について使用されたものとはいえないと主張した。これに対し、本判決は、本件商品はいわゆるODM型生産(Original Design Manufactured:受託先が商品企画から生産、その後の流通まで行い、委託先に商品(完成品)を提供する業態)により原告の特殊軽量素材の生地を使用して中国で生産された商品であり、原告の素材を使用した「Gram」ブランドの衣類であるなどというように、本件商品の出所及び品質等を示すものとして用いられているものとも理解し得るものであることを理由に「被服」についての使用と認められると判断した。
以 上
(H29. 7作成: 弁理士 山本 進)


→【1】論説:不使用取消審判の活用について
~既に他社が登録している商標を自社の商標として登録することができる方法~
→【3】論説:歌詞の転載・引用と著作権侵害について~
→【4】記事のコーナー:無料調査ツールあれこれ~
→【5】記事のコーナー:アンケート「自分を動物に例えると」~
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