発行日 :平成29年 1月
発行NO:No38
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【2】論説〜知財高裁における技術系事件の審決取消率の推移について〜
1.はじめに
  平成17年4月1日に知的財産高等裁判所が設立されてから11年8ヶ月が経過しました。本稿は、この間における技術系事件の審決取消率の推移について調査した結果を報告するものです。

2.調査方法
  知財高裁のホームページの「裁判例検索」の画面で提供されている条件指定検索の機能を利用しました。事件種別は「審決取消訴訟」、権利種別は「特許権」と「実用新案権」にチェックを入れ、審決取消訴訟の技術系事件のみを対象としました。  裁判年月日は「平成○○年1月1日」〜「平成○○年12月31日」のように1年単位で区切り、事件種類に@「審決(無効)取消」、A「審決(有効)取消」、B「審決(拒絶)取消」の何れかを選択して検索することにより、判決に至らず和解で終了した事件を除き、当該年における上記@〜Bの事件数を区別して把握することができます。  次に、判決結果に「審決取消」又は「審決一部取消」を選択して検索し、ヒットした件数を足し算すると、上記@〜Bの事件ごとに一部取消を含めた審決取消判決の数を把握できますので、これを事件数で割り審決取消率を求めてグラフ化します。  なお、平成28年については、11月30日時点で検索可能なデータを集計したものであり、12月分のデータは含まれておらず、途中経過の数字となっています。

3.結  果
(1)無効審決取消訴訟
(2)有効審決取消訴訟
(3)拒絶審決取消訴訟

4.考  察
  知財高裁が設立された当初の平成17〜19年の3年間は、特許庁の無効審決に対する取消率は7.6〜18.8%と低い一方、有効審決の取消率は33.3〜59.4%と高く、特許権者側に厳しい傾向がありました。また、査定系の事件でも、取消率は7.4〜12.5%と低いものでした。   この状況が一変したのが平成20〜22年の3年間です。特に進歩性が争点の事件において、引用発明を出発点として本件発明に到達することが容易であったかを、より丁寧に検討する判決が増え、その影響を受けて無効審決に対する取消率は28.8〜33.3%と上昇する一方、有効審決の取消率は19.5〜28.6%に低下しました。査定系の事件では、平成21年の取消率は32.8%となりましたが、その後は概ね20〜25%の間で推移しています。   平成23〜28年の6年間は、取消率の大きな変動や揺り戻しはありませんが、直近の3年間は当事者系、査定系共に、事件数が減少している傾向があります。


(H28.12作成: 弁理士 山本 進)


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