発行日 :平成18年 1月
発行NO:No16
発行    :溝上法律特許事務所
            弁護士・弁理士 溝上哲也
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   【5】記事のコーナー〜インターネット出願について〜
平成17年10月3日より、インターネット出願が開始されました。 当面の間、従来のパソコン出願ソフト(Ver.3.03)と併存されるとのことです。 日本弁理士会の特許制度運用協議委員会によって行われた説明会の資料等をもとに簡単にインターネット出願についてご説明致します。

1.インターネット出願とは

  従来のパソコン出願が、ISDN回線を使用し、ダイヤルアップにて特許庁に接続しているのに対し、インターネット出願は、言葉通りインターネットを用いてダイヤルアップや常時接続(ADSL等)にて特許庁に接続することになります。  基本的に、ソフト的には現行のパソコン出願ソフト3との互換性を図る観点から書類の作成方法、送信手順等が現行とほとんど変わりがないため、現在パソコン出願を行っていて、パソコンをインターネットに接続する環境が確保されていれば、移行には特に問題ありません。



  しかし、インターネット環境は極めてオープンなものであるため、セキュリティを確保することが大きな問題となります。そのため、インターネット出願を行うにあたっては、電子証明書の入手が必須となります。
  以下に、手続の変更点をご説明し、最後に電子証明書の入手方法等をご説明致します。

2.特許庁手続の変更点

  インターネット出願の開始に伴い、従来のパソコン出願手続においても若干の変更がありました。主な変更点は下記の通りです。
(1)受付時間
  (出願、意見書、補正書等の手続/インターネット出願およびパソコン出願共通)
  従 来:開庁日の午前9時〜午後10時
  変更後:24時間365日受付(土曜深夜〜日曜早朝にメンテナンスのため受付停止有)
(2)入手方法
  パソコン出願ソフト及びインターネット出願ソフト共、ダウンロードのみ
(3)PCT出願
  パソコン出願ソフト(Ver.3.03):手続可能
  インターネット出願ソフト    :手続不可

3.インターネット出願の環境

(1)パソコンとネットワークの環境
インターネット出願を行うにあたり、特許庁では下記の環境を推奨しています。
   @パソコンの推奨スペック
    CPU PentiumV800MHzクラス以上
    メモリ OSが推奨するメモリにプラスして256MB以上
   A必須OS
    Microsoft Windows 2000 Professional SP4以降
    Microsoft Windows XP Home Edition/Professional SP1以降
    ※98、98 2nd edition、Me,NTは不可
   Bインターネット接続の推奨環境
    光(FTTH)、ADSL等のブロードバンド(常時接続)
    企業内ネットワーク経由の接続(プロキシ経由も可)
    但し、SSLプロトコルが透過可能であること
    ダイアルアップも可能だが、ソフトの入手方法がダウンロードのみとなったため、どちらかというと推奨しない。       また、ダイアルアップの場合、ソフトが自動でダイアルアップを行わないことに注意。

(2)パソコン出願ソフト3との関係
  @両ソフトは同一パソコンにインストール可能。但し、同時起動は不可。     
  Aインターネット出願ソフトからパソコン出願ソフトのデータ参照は可能。      
  パソコン出願ソフトからインターネット出願ソフトのデータ参照は不可。     
  B出願の注意点:インターネット出願ソフトとパソコン出願ソフト3から同一内容を出願しても二重出願チェックされず受理される。     
  C発送の注意点:インターネット出願ソフトとパソコン出願ソフト3では先に受信した方に格納される。     
  D閲覧の注意点:インターネット出願ソフトとパソコン出願ソフト3の何れでも任意に受信可能。

4.電子証明書について

  (1)電子証明書とは
  「電子証明書」とは、「電子署名」の検証する際に用いられるもので、書面手続でいえば、本人確認のための「印鑑証明書」の役割を果たします。電子証明書は、信頼される第三者機関が発行する電子的な証明書で、ICカード等の記憶媒体に保存されています。
  電子証明書が添付された文書は、実印が押印され印鑑証明書が付されたものと推定され、すなわち、本人作成の真正なものとして扱われます。
  電子署名とは、書面での申請や入札における押印やサインに相当する行為を電子的に行う技術です。
  電子署名は、署名や印鑑を電子化するという単純なものではなく、電子的なデータ全体の暗号化によって電子データを厳重に守り、間違いなく本人から送信されたものであるということを確認できるため、成りすまし(第三者があなたや他の誰かの人のふりをして申請すること)やデータの改ざん(第三者が内容を書き換えること)を防ぐことができます。
  電子署名を利用する際は、最初に、電子署名の利用者を証明する認定事業者への申込が必要です。次に申し込みにあたっては、本人確認書類の提示が求められます。認定事業者では真偽確認後、電子署名に用いる符号の所有者を証明する「電子証明書」を発行します。
  一定の要件を満たした電子署名の施された電子文書等は「電子署名及び認証業務に関する法律」により「本人の意思に基づいて作成されたもの」(真正に成立したもの)であると推定されます。

  (2)電子証明書の機能
@盗み見防止
送り手は秘密鍵(認証局から証明書と一緒に発行)で文書を暗号化(電子署名)し、受け手は添付された公開鍵(認証局から秘密鍵とペアで発行されるパスワード)、又は事前に入手した公開鍵で復号化して盗み見防止。
Aなりすまし防止
公的に認められた認証局が発行した証明書の添付でなりすまし防止。
B改ざん防止
例えば、文書とともにそのダイジェストも暗号化して送り、受手側で復号化した文書からダイジェストを作り、受信ダイジェストと照合して改ざん防止。

  (3)インターネット出願に利用可能な電子証明書
インターネット出願に利用可能な電子証明書として、平成17年8月1日付、特許庁長官告示により、以下の電子証明書(認証局)が指定されています。
@個人電子証明書・・・弁理士や個人が手続きする場合
     1)日本商工会議所「タイプ1−E」
     2)日本認証サービス「AccreditedSignパブリック2」
     3)樺電シーティーアイ「個人用CD型」
     4)セコムトラスト「パスポートforG-IDタイプB」
A法人電子証明書・・・特許業務法人その他、法人が手続きをする場合
     法務省電子認証登記所「商業登記用電子証明書」

特に個人証明書を発行している認証局は各社その入手方法等に特徴があるので、使用者にあったものを検討することが望ましいと思われます。詳細については、各社HP等をご参照下さい。

  (4)電子証明書使用にあたっての留意点
@期 限
  上記何れの認証局の発行する電子証明書にも有効期限があり、その期限も2年30日、3年30日と異なります。
  無論、有効期限が切れると証明がなされず、書類を送付することも出来ません。よって、後記するパスワード等の管理と共に有効期限についても管理を行い、満了の前に再度、何れかの電子証明書を取得することが必要となります。また、その際、電子証明書入手までに必要な手続期間がありますので、それを考慮の上、事前に取得することが必要となります。
  インターネット出願ソフトでは、有効期限の30日前に表示によって注意を喚起するようになっていますが、それのみに頼らず、利用者サイドでも管理することが望ましいと思われます。

Aパスワード等の管理
  電子証明書の使用にあたっては、認証局から発行される認証書にアクセスするためのパスワード等、いくつかのパスワードが必要となっています。特に認証書ストア(証明書・秘密鍵のファイル群)にアクセスするためのパスワード(Pin)は、インターネット出願ソフト起動時毎に入力することになる上、特許庁に送信されないので、忘れると本人認証ができなくなります。
  利用者の方で、管理を行うことが重要となります。
  また、証明書ストアは、パソコン上に保存するよりもセキュリティの面から、外部記憶装置に保存することが望ましいと思われます。
  特許庁にアクセス中に何度かソフトが認証ストアにデータを確認しに行くため、フロッピィディスクでは、速度の面から対応が望めないため、MOやUSBメモリを使用することが望ましいと思われます。

B送信ファイルの作成・送信
  1)インターネット出願ソフトでは、先に「本人認証」を行うことによって起動するため、送信ファイルにはその作成時に認証された識別番号保持者の手続として、書類が作成されます。よって、送信ファイル読み込み時に本人認証された人の電子証明書が組み込まれます。ですから、本人認証画面の識別番号リストで「GUEST」起動した場合、送信ファイルは作成されますが、電子証明書が組み込まれないので、送信はできません。書式チェックなどに利用するとよいと思われます。
  2)上記の理由から、Aさんの認証で起動している場合、Bさんの手続書類を作成するには、本人認証画面でBさんの認証で起動しなおさなければなりません。また、電子証明書もBさんのものが必要となります。
  3)これも上記1)の理由から、パソコン出願ソフトでは、「送信ボタン」→「識別番号選択」→「暗証番号入力」で送信が実行されますが、インターネット出願ソフトでは、「送信ボタン」→「OK」で実行されます。

5.むすび

  以上、簡略ですが、インターネット出願の概略について記載致しました。何分にもつたない文章ですので、言葉で表現すると説明不足で実際の手続の流れや処理のイメージ等が掴めないところが多いと思います。
  実際には事務所や企業で使用している特許の管理ソフトとの関連で当面はパソコン出願ソフト3で手続をされているところも多いと思われますが、2006年夏頃には、PCT出願がPCT-SAFEを使用したインターネット出願として開始される予定で、いずれにせよ、流れはインターネット出願ソフトの方向となっています。今後1年ぐらいでパソコン出願ソフトの併用は無くなる可能性も高いと思われます。
  電子証明書という技術の使用や管理等、利用者にとっても色々な情報の必要性、課題が増えてきておりますが、弊所においても依頼者の方々との調整を図りながら取り組んで行きたいと思っております。
  また、電子証明書という技術のセキュリティもあくまでも「推定効」ですので日本弁理士会の特許制度運用協議委員会では、特許庁に対し、その有効性について質疑等を加えて行き、より安全なインターネット出願ソフトとなるよう取り組んでいかれるとのことです。
  電子技術のめざましい進歩の中、制度や法律が後追いをしているような状況ではありますが、迅速で安全な手続を行えるよう努力したいと思っております。

☆事務所近況☆
今回の事務所報は難い話が多かったと思いますので、ここらでちょっと休憩を・・・。
 事務・経理グループの伊藤さんが10月28日 3280グラムの男の子を出産されました!!
 分娩まで10時間ほどかかったそうで大変だったようですが、足の長い男の子で将来はジャニーズ(?)との噂も。母子ともに順調ということで、何よりです。
 また、その間、3年ほどぶりに「大西久美子」さんが職場に復帰してくれました!
 大西さん、久しぶりに事務所に復帰されたご感想は?
 「約3年ぶりの復帰で戸惑うことも多く、事務所の方々には大変ご迷惑をおかけしたことと思います。短い間でしたが、お世話になりました。外の空気はとても新鮮で楽しかったです。皆さん、お体に気をつけてますます頑張って下さい。」
 とても3年ぶりとは思えない仕事ぶりで、伊藤さんのお休み中、本当に心強く、頼りになり、助けて頂きました。2人のお子さんがいらっしゃるのに、本当にありがとうございました!
 そんなこんなで、溝上事務所の2005年は暮れていきましたが、皆さんは如何でしたか?2006年もよい年でありますよう心からお祈り申し上げます。
本年も何卒よろしくお願い致します。   


(H18.1作成: 事務経理部 中野 博美)


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→【3】論説:小売業の商標のサービスマークとしての保護について
→【4】記事のコーナー :職務発明規定の見直しについて(平成16年 特許法等の一部改正)
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